『見られること』と『見えること』 -可視性(Visibility)の意味-
最初のトピックとして、可視性(Visibility)を取り上げる。 SCM(Supply Chain Management)といえば、Velocity(速力、高速、方向性を持った速度)と同時に、Visibility(可視性)という言葉がよくでてくる。 「ビジネス・プロセスの可視化」や「経営情報の可視化」がSCMの成功、つまりビジネスの成功につながるという具合である。
では、この「可視性(Visibility)」っていったい何なんだろう?
私は、今までの経験から、可視性(Visibility)は、以下の二つの側面があると思う。
1) 『見られること』により、自分を美しくしよう/物、場所をきれいにしようとする側面
2) 『見えること』により、姿勢(mind-set)を前向きに変える側面
まず、一つ目の側面についていくつかの例を挙げてみよう。
もう20年以上も前の私の大学時代の話。 東京の大学から田舎(? 卒業して一度も行ってないので、今はどうなのかわからないが)にある我が母校の大学院に入って来られた方がおられた。 彼女は洒落た服を颯爽と着こなしておられ、皆の憧れの的であった。 私たちは大学でも、寮でもどこでも同じ服装、ほとんどを大学の構内(?)で暮らしていた。 周りにいるのは先生、学生だけ。 東京の大学と違い、電車通学なんてない(ほとんどが寮か、隣が大学の構内って言っていいほどの近くに住んでいた)。 いろいろな人から「見られる」ということがほとんどなかった。 と、どうだろう。 数ヶ月もすると、彼女も我々と大して違いがない、ジャージ姿で大学を闊歩していた。 良いか悪いかではなく、大きなショックを受けたことを今でも覚えている。 男だって同じこと。 私は大学卒業と同時に、地方の工場配属、当時は制服で工場に車で通っていた。 お洒落もくそもない。 髪だってほとんど整えなかった。 ところが本社転勤で一転。 通勤時に、誰かに「見られていること」を感じ、工場勤務時とは違って、少しは身だしなみをと、考えたものだ。 そのお洒落の結果は別として、本社転勤後、工場に出張したとき、「髪、はねてませんね。」と言われたことを思い出す。 そんなにいい加減な格好をしてたのかな?
もう一つ、在庫の話。もう5年以上も前の話だが、私の所属している部署では、海外の販社の在庫を知ろうとすれば、電話かメールかで聞かないとわからなかった。 海外の販社にもシステムを入れ、全販社の在庫が日本でもリアルタイムに、見られるようにしたら、各販社が自分たちの在庫を皆が見ているということを意識し始め、あっという間に在庫が減っていったという経験がある。 人は「見られること」によって、きれいにしよう、美しくなろうとするものなんだ。 動機(怒られたくない、カッコよくなりたい等々)はいろいろだけど。 確かに当時、在庫削減のためにいろいろな手は打ったので、「見られること」の効果だけではないであろうが、今でも、この効果は大きかったと思っている。
次に二つ目の側面について。 実は在庫の話は、まだ続きがある。最初は「見られる」効果によって在庫を減らそうという行動にでていた営業さんたちが、次に各販社のStock Point(在庫拠点)の在庫を見始め、自分の所の在庫にはないけれど、他の箇所で余っていそうな在庫を自分の顧客のために使えないか、相互で打診を始め、相互で融通を図り出した。 今まで各拠点でクローズしていた動きが、「見えること」で、前向きな動きに変わったわけである。 人とは面白いものだ。 「見える」ようになり、かつ実際メリットがあると見えると、急に行動・姿勢が変わるものだ。 となると、今度は、「こんなことができないのか?」と営業さんから、システム・サイドに問合せ・依頼が入るようになった。 人は変われば、変わるものだ。 この在庫の話だけでなく、人は自分のポジションが、明確になり、どういう方向に進めばいいかわかれば、どんどん力を発揮するもんだということ。 ただ、自分のポジションを知る術を持たなかったり、持ちたくなかったり、どちらに進めばいいかわからないから、うまくいかないんだよね。だからこそ、可視性(Visibility)が必要になるということでしょう。
在庫の照会の仕組みにおいてもう少し述べると、システムは最先端でなくても、技術的に凝ってなくてもいいけれど、このアイテムの在庫は、単に幾つあるということがわかるだけではなく、On-hand(手持ち在庫)をReserved(確保済み)とAvailable(フリー在庫)とに分けるとか、On-order(発注しているが、未入庫の数量)とか、Demand(顧客の必要数)が一元的にわからないといけない。 そして、ロット管理も…
このような話を、知り合いのオーストラリア人に話したところ、この場合、「見られること」はObservation、「見えること」はPerception だと言われた。
つまり、以下のように英語では言えばいいのかな?
Visibility has two aspects:
Observation makes facts clear and obvious.
Perception derives new information from observed facts.
"Visibility" and "Velocity" by System Integration can bring us "Value".
John, do you know what I mean?