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盛り上がるブレストばかりが良いブレストじゃない。沈黙も含めて大事にしたい。(アイデア・デザイン・創造学を研究しているといろんなTipsに触れます。600文字で紹介します。)

【問い】大量に生まれるアイデア、うまく整理できずにあちこち散らばってしまい、肝心なときに思い出せない。どう管理すればいいでしょう。

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アイデア発想支援の仕事をしています。アイデアプラント 代表 石井力重です。

今日はある方から、アイデア発想についてご質問をいただきました。

力不足かもしれませんが、私なりに切り口を考えてみます。


【質問】

質問させてください。

毎日大量に生まれるアイデア、うまく整理できずにあちこち散らばってしまい、肝心なときに思い出せないことが多々あるのですが、石井さんは生まれたアイデアをどう管理されてらっしゃいますか?

分類にしても、タグやカテゴリ、時系列での管理、どれもしっくりこない気がするのです。


【回答】

まず、大量に毎日出る、ということで、素晴らしいです。世の中がそういう人ばかりだと、もっと、愉快な文化性が社会に醸成されるのですが。

たくさんアイデアを出す人は、1つのメモ帳にだけ書く、ということがおうおうにして、しにくいものです。思いついた時に手にしているものに、ふとペンを走らせます。ほとばしる着想の流れを書きとめ切ったら、もう次の行為にうつったりしてしてそれらを転記したりしないものです。

(もちろん、まめなタイプのアイデアマンはいなくもないですし、樋口先生のようなアイデアマラソン派の方にしてみれば「だから、一冊のノートを使うんだよ、石井くん!」と言われそうですが。)

また、仮に、全部を一か所にストックできたとして、それを、活用したい時に縦横無尽に引き出して参照していく、というのも難しさがありますね。アイデアは体系的な分類フォームが適用できない。初期的な着想というのはそういうものでありがちです。タグ付をする、カテゴリわけをするといってもどこにも属さなかったり、いくつもの所に属してしまうものだったり。

(メタタグ、というか、オントロジー的なアプローチもはっきりとはわかりませんが、可能性がなくはなさそうですが、その方向はここではいったん止めておきます。)

この問いはなかなか興味深いもので、過去の発想法の文献にあたり深く潜るよりも、現代のスマート文具の領域の知見がどうも、可能性を開きそうです。

それについては、少し情報を集めます。たぶん、今あるものでは充分にニーズを満たせていないでしょう。これから生まれてくる文具にもしそれを叶えるものがあるなら、この問い自体が興味深い着想のかけらを持っている。そんな気がします。

私石井はどうしているか、というもともとも問いについて答えねばなりませんね。

私はこうしています。

「布の袋に全投入。かきまわして、3枚ひく」方式、を取っています。

アイデアを書く専用のカードメモは一応あります。コレクトの名刺カード(セクション、という方眼罫線の物)。これにアイデアをメモして、終わったら、単なる時系列で、アイデア用の名刺フォルダ・ファイルにさしていきます。ただ、テーブルコースターの裏とか、なにかのきれはしに書いてしまったアイデアにこそ、おもしろいトンガリがあったりします。それをカードに転記をするのは、なにか香りが逃げるのでしません。

そういう非定型の紙は、全部、布の袋にぶち込んでしまいます。

そして、アイデアが必要なとき、カードストックのファイルを見直す他に、布の袋に手を入れて、がさがさ、かきまわします。そして三枚ほど引きます。目当ての紙を探すのははなからあきらめていて、偶然出会った昔の自分のひらめきに刺激を受けて、それで良しとしています。

検索できないならそもそも分類しない。偶然の出現、というのは、デジタル側でやろうとすると結構面倒な処理が要るのですがアナログがでやるのは造作もない。というか、そうなってしまう。なので、私はこういう方式をとっています。

この「布の袋に投入。三枚ひく」方式というのは、ブレストを作ったAオズボーンのふるい文献に出てくる「クリエイティブな窓飾り職人」のくだりをそのまま真似しています。その職人は何十件もの窓をクリエイティブにアイデアフルに飾り付けるのですが、そのアイデアの源泉は、彼が興味を持った記事やメモがぶちこまれている袋だそうで、アイデアが欲しい時はそこに手を突っ込むそうで、それが気に入って私もそうしています。

(補足:

とはいえ、来週の打ち合わせのために出しているアイデア群、ということであれば、完全にランダムなカオスに突っ込むのは気が引けますので、そういうものは、クリアフォルダに突っ込んでおきます。カードのサイズがちがおうが、箸袋に書いたものだろうが、その案件用のアイデアは、クリアフォルダにいれておいて、当日になったらそれを見せながらアイデアを紹介します。

この方式では、2つの案件に跨るアイデアの場合、処理に困るじゃないか、って?。確かにそうです。そういう時には、適当に分けてしまいます。さっきはしないと言いましたが、メモを書きうつして、二案件に入れることもします。場当たり的ですね。笑。しかし、アイデアを紡ぎだす初期段階というのは、本質的にとても、混沌とした営みで、そういう、創造のごちゃごちゃ(私はこれを、クリエイティブ・カオス、と呼んでいます)と、いい加減さ含みで付き合っていくことが、もっとも効果的な道ではないかと、思うのです。)

以上です。

問いに対いて、明確な答えなんかない、というタイプの問いほど、面白い思考を引き出されます。回答もこんな調子ですが、それでもよろしければまた試みてみますので、気が向いたらぜひまたおたずねください。

アイデアプラント 
代表 石井力重


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