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盛り上がるブレストばかりが良いブレストじゃない。沈黙も含めて大事にしたい。(アイデア・デザイン・創造学を研究しているといろんなTipsに触れます。600文字で紹介します。)

IDEOのブレスト その3 「One Conversation at a Time」

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ブレストの基本的ルールにはない、IDEOの独自ルールの一つ
「One Conversation at a Time」
(一度に一つの会話)

これについて、今夜は、書きます。


一度に一つの会話。

これが意味していることは

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ブレストの流れに加わっていないメンバー同士が
別の会話をはじめてしまうことは、避けよう。
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というものです。

人数の大きな会議。発言が達者なメンバーがどんどんブレストしていると
次第に発言しない人が端にいたりして、その人同士で別の話を
はじめることも、おこりえるが、それは良くない。
同時並行で、2つの会話が進むことは、やめよう。
いっときにする会話の数は1つにするのだ。と。

これ、思い出してみると、どこかで見たこと、ありませんか?

10人とか、割と大きな会議。
プロジェクト創出のための会議、ということで、
参画意識があいまいなまま集められたメンバーで、
ブレストをしている。
そのうち、発言の機会がなかなか回ってこない課長と部長が
ごにょごにょと、話し始める。
はじめはテーマに関係することをしゃべっていたようでもあるけれど、
「そういえば、この前の件ですが・・・」なんて、
別のことへ展開していたり・・・。
当人たちは、声を潜めてしゃべっているけれど、
アイデアをつむぎ出すような壊れやすい思考活動を
しているときには、それが結構、気に障る。

そんなことって、今まで経験ありますよね。

あるいは、意欲的なメンバーばかりで、ホットなブレストを
はじめたけれど、どんどん出したいメンバーがテーブルの中で
2つに割れて話を始める。そういうケースもあります。

IDEOの5つ目のブレストのルールは、そういう状況は作らないように、
ということを提示しています。



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ここで終わると、単に「ブレインストーミングのスタイル調査」だけで
終わりなのですが、読んでくださった方にしてみれば
「それは、わかった。
 じゃあ、そこから、どういうコツを引き出せばいいんだ?」
となりますよね。

そこについても、周辺知識から、筆者なりの知見と実践に基づいて
お話します。


・・・

まず、「One Conversation at a Time」が守りにくい状況を作らない。
これが、大前提です。

人間が集まりすぎれば、ブレストは自然と、しにくくなります。
オズボーンはある文献の中ではブレストの人数を「5人~10人」と表現しています。
筆者のブレストの観察実験からいえば、日本人のコミュニケーション特性を加味すると
ブレストの最適人数は、もうすこし小さくて、「3人~6人」です。
8人とか10人が集められて、さあブレストですよ、といわれても、
ちょっときつい。
想像してみてください。テーブルに、自分のほかに9人がずらっといて、
自分の発言を聞いている。
自分のアイデアを的確に1分でさっと説明したとしても、次に発言できるのは
平均して9分後。
これで、ホットなアイデアだしができるか、といえば、実際のところ苦しいでしょう。

ブレストの人数に関して、4人の場でできる社会規範と、10人の場でのそれとは、
大分違う、ということを、ブレストに関するある文献では、いっています。
4人だと、目的達成に向けてサボることは、許されまじ。(みながワークに参画する)という
社会規範が生まれ
10人だと、議論に新しい要素を投入する無かれ。(新しい事、言うな)という
社会規範が生まれます。


「会議のサイズを、適切に設計する」

これが、ブレストの場を設定するリーダにとって重要です。


"とりあえず、これる人、きてよ。"と呼んでみたら意外と集まってしまって
15人とかになっちゃった。定時後の狭い会議室に、ギュウギュウに15人が入ったら
テーマの説明と自己紹介を軽くしたら、もう、飲みにいく時間だ~。
あー、じゃあ、続きは飲み会の席で・・・、なんてことになります。

では、こういうときは、どうするか。
きてくれたのに、6人以外は追い返すのか?
といえば、それはあまりにもったいないです。
(そもそも、人数を設定できない場面も、企業ではたくさんありますしね。)

この場合は、「少人数発案⇒後に、統合」方式が、良いでしょう。

たとえば、集まった人数が15人であれば、
「5人×3テーブル」ぐらいに分かれて、それぞれにブレストをします。

はじめのテーマ設定のところだけは、提案者がいないといけないので
共通してやって、後は、グループに分かれます。

そして15分とかの設定した時間がたったら、それぞれのグループで
出たアイデアを合わせて、ブレストの結果にします。

ダブるものがあるので、各チームが30ぐらいずつ出したとしても、
統合すると、合計60個にはならず、大体、40個とか45個ぐらいに、なるでしょう。

そんな対処方法があります。

しかし、ブレストのファシリテータ(進行役)がそんなにいない場合は
これはちょっとつらいです。
招集者がいるグループはいいとして、
ブレストのみ経験者ばかりで5人グループになったところは
戸惑って終わります。

そこで、そういうときには、
先に述べた【ブレストの発展形】を使うといいでしょう。

  • 【ブレイン・ライティングを使う】
ブレインライティングならば、5人×3テーブル、
あるいは、7人テーブル、8人テーブル。で
実施するといいでしょう。
静かに、しかし、短時間で驚くほど大量のアイデアが生成されます。

 (筆者の例です。
  東北福祉大学の講堂で、200人での大規模なレインライティングをしたことがあります。
  このときは、34グループにわけて、6人ずつになってもらい実施しました。
  これだけ人数が多いと、紙の配布などに時間がかかりましたが
  それでも、6人で実施するとの200人で実施するのには、本質的に、
  そんなに大きな違いがなく、実施できます。)

 
  • 【スピードストーミングを使う】
人数が多いならば、スピードストーミングもお勧めです。
メンバーがまだ、あまり面識の無い段階でも、かなりアイデアディスカッションが
進みます。最後にアイデアを紙かホワイトボードへ抽出するにはすこし工夫が必要です。
これについては、別途紙面を割きたいと思います。

 「早く知りたい」という方は、筆者の最近のアイデアワークの報告のページをご覧ください。
 後半で、アイデア・スケッチを書き出してもらっていますが、
 たとえばこれが一つの(そして有力な)方法です。
 このアイデア・スケッチは、加藤昌治さん(考具、の著者さん)が
 ワークショップで行っている方法を、使わせてもらったものです。



以上です。

長くなってしまいました。


最後に少しまとめます。

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ブレスト・コツ

ブレストのサイズを適切に設計しよう。
最適人数は「3人~6人」

それを超える場合は、小集団発案・のち統合方式、を用いて
ブレストのサイズが常に一定範囲内になるようにする。

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 補足:今日の記事は、
 IDEOの方の説明(英語)が、(私の語学力の問題で)よく理解できなかったので
 同行したメンバーの一人(道中、彼が通訳してくれた)に、
 現場で翻訳してもらいました。
 オリジナルの発言が、人の口を解して伝わっていることと、筆者の解釈が
 入ってしまっていることで、いつもより、バイアスのかかっている可能性があります。
 あらかじめご留意ください。


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