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ジャストシステムを手中に収めたキーエンスの狙いを勝手に妄想してみる

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キーエンスヘリコプター模型メーカーと思われている方も、このブログにたどり着く方の中にはいるかもしれない。
確かに精度の高い室内向けヘリコプターは魅力的な商品ではあるが、同社の主力製品というわけではない。
FA(ファクトリーオートメーション)を支えるセンシングデバイスのトップメーカーである。
そのキーエンスが先週ジャストシステムを傘下におさめるというニュースがあり、
ここでは遅れ馳せながらその狙いを勝手に妄想してみたい。

ちなみに同社との間には就職活動をしていた際に、内定をいただいておきながら辞退した経緯がある。
経営システム工学科出身ということで、生産スケジューリングや品質管理などを学んでいた私にとって
キーエンスやファナックは近しい存在であったが、一般的な学生にとってはビジネス領域的に縁遠い企業の1社だろう。
当時の人事採用ご担当の方には、私の希望を反映した職務内容で条件面でもよいお話をいただき、
新大阪本社および懇親会にご招待いただいたりお世話になっておきながら申し訳ないことをしてしまった。

今でもそうなのかはわからないが、「30歳で家が建ち、40歳で墓が建つ」と噂されるほど、
高プレッシャー→高成長→高待遇な職場環境という印象を持っていた。
高い商品力はもちろんのこと、強靱なメンタルと体力を併せ持つ皆様が好業績を支えているのだろう。
売上高2,000億円、営業・経常約1,000億円の優良企業である。

そのキーエンスが経営に苦しむジャストシステムに45億円の投資を行い手中に収めた。
彼らにとって安い買い物だったのかもしれないが、オトナの事情以外にも戦略面で何らかの正当化が必要と思われる。

製品の相互補完性について、キーエンスが手がける文書管理ソフトウェアという接点で、
谷川氏がコメントしている通り、これだけでは弱いと言わざるを得ない。

ビジネス面を考えれば、キーエンスの精鋭営業部隊による製造業の生産、開発部門へのリーチを活用し、
ジャストシステムの製造業向けソリューションをオントップで提案・販売するのが買収の成果を出す
方策として手っ取り早いと思われる。特にConcept Baseは製造業での採用実績も多く、ブランドも
ある程度浸透しているため、商材としては扱いやすいのではないだろうか。

営業チャネルを考えると、一太郎の初期から関係を深めてきたジャストシステムの官公庁向けリーチも強固だが、
こちらにキーエンスの商材が提供できるかどうかは謎である。営業チャネルとしてのインダストリーリーチ
相互補完成立となれば美しいのだろうが。

さて、クラウドを手がける私がこのブログでキーエンスとジャストシステムの件に触れたのは
学生時代を懐かしむためだけではない。2社の資本提携が「デバイスクラウド」の早期実現に向けた
触媒となるのではないかとゴーストが囁いているからである。

工場内ではすでに多くのセンシングデバイスや測定器からサーボ系に至るデバイスが連携して
自動化を支えている。工場の中という限られた世界ではあるが、基本的には人間が介在することなく、
情報の収集、加工、出力を滞りなく行うことが可能である。

一方、セマンティックというキーワードを数年来掲げているネットの世界はどうだろうか?
未だにソフトウェア同士、デバイス同士が完全に自動化させて動かせる状況には進化しておらず、
情報処理端末としての人間に大きく依存するモデルとなっている。

現状を打開するシナリオの一つとして、例えばキーエンスが持つ工場向けの高精度製品が、
民需?に転用され、家庭内やオフィス内のさまざまなデバイスにセンサーやサーボが
搭載されるようになると、Ray Ozzieの目指すPCとWebとデバイスをつなぐ
ソフトウェア+サービスの世界観の実現が繰り上げられるかもしれない。

それらセンサーやサーボを搭載したコンシューマ向けデバイスは、家電メーカーが商品化し、
キーエンスが部品を提供するのが自然だろうが、ソフトウェア流通という限られた商材
でありながらもリテールのチャネルを持つジャストシステムをうまく使えば、
ヘリコプター以外のキーエンス製最終製品が世に送り出せるかもしれない。
ビジネスとしての成功可能性は低いかもしれないが、ブルーオーシャンであることは確かだ。

キーエンスは非常にしたたかな企業である。
浮川夫妻をはじめとするジャストシステムの方々にもリアルコム時代大変お世話になった。
両社の今後の展開に期待したい。
そして、できることならその活動をMeshなどの弊社テクノロジで支援させていただきたいものである。

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