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アメリカのIT業界を渡り歩いたビジネスコンサルタントがユニークな切り口で新時代のIT市場を分析

クラウドAPIについての分析:最近の心境もすこし打ち明けます。

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最近、CloudAPIというキーワードをよく聞く人が多いのでは、と思います。

CloudAPIとは、いわゆるVMハイパーバイザーのレイヤーの上に乗っかるソフトウェアコンポーネントが提供するものです、簡単に言ってしまえば。コードベースとしては然程巨大ではないですが、ハイパーバイザーの統合に加え、ストレージ、ネットワークのインタフェースの統合も一緒に行う事が期待されます。

また、このソフトウエアコンポーネントは、複数VM上に乗っかるケースが多く、場合によっては異なるハイパーバイザーを同時サポートするケースもあります(Cloud.com等)。さらに、仮想マシンやISOイメージ等を生成/コピー/削除したりする機能を自動化したり、GUIを通して非常に簡単に管理できる様な管理者コンソールや、ユーザ画面等もあります。課金システムとかID管理システムとも連携し、さしずめ、VM環境のAggregatorツール、という風に解釈する様にしてます。

このCloudAPIを提供するソフトウェアベンダーは数社存在します。日本で恐らく一番有名なのは、Eucalyptusだと思います。Open Softwareとして提供され、無償版はダウンロードして評価を簡単に出きます。気に入ったら、Enterprise Editionという有償版を買うステップに移ります。そうすると保守サポートや、定期的なアップデート等、製品ととして必要な支援をベンダーから受けることが出来ます。

他にはCloud.com、Nimbula、そして過去のブログでも結構取り上げた、Open Stack等があります。 他にも数社ありますが、新しい会社が多く、これから市場が伸びていくものと思われる領域です。 

この辺の技術が伸びている訳は、やはりAmazon Web Serviceが背景にあります。いまやサーバ数では市場の半分近くを占めている、と見込まれているAWSは、CloudAPIの事実上の標準仕様(deFacto Standard)を作りあげ、そのAPI上に非常に大きな 3rd Party ISVのエコシステムを築いています。

上記の製品群、当然の様にAWS準拠を必須機能としてサポートしてます。あっ、Open Stackだけは例外です。これはどちらかと言うと、Rackspace Hosting等、Amazonに対抗するベンダーが集まって作った標準化団体なので、準拠させるモチベーションがあまり無いと思われます。


最近、日本でも独自のクラウドAPIを開発する動きがある、と感じます。日本ではVMWareベースのクラウドソリューションが多い中、vCloudの登場をそれなりに待ちつつも、独自仕様を開発する動議付けが強まったから、と分析してます。動議付けの理由は次の通り。
1) vCloudは恐らく、かなり高額な商品になる、と想定されている。VMWareだけでもかなりのコストなのにvCloudが加わったら、クラウド事業が赤字経営になってしまう。
2) 日本のベンダーとしては、クラウドインフラのエコシステムの中で、どこかコントロールが出来るソフトウェアを保有したい、という気持ちが非常に強い。

CloudAPIのレイヤーは、上記の状況の中で、独自開発(=コントロール)するのに非常に都合の良いレイヤーである、とされています。このレイヤーをベースに、クラウドポータルのカスタマイズ、様々なクラウドアプリケーションの開発、レガシー環境からのアプリ、データの移行、ミドルウェアの連携(課金、ID管理)等、SI事業の可能性が満載だからです。


問題なのは、このレイヤーはAmazon Web Serviceと真っ向から対抗するレイヤーだと言う事です。つまり、このクラウドAPIのレイヤーは、クラウドコンピューティングが生まれたのと同時に、de Facto標準化されて、既に巨大なエコシステムが出来上がっているのです。

この市場に参入する前に、クラウドAPIを開発している日本のベンダー、ビジネスモデルとしてAWSと対抗するのか、協調するのか、大きな選択を強いられているはずなんです、本当は。 この分岐点をよく吟味し、どちらが得策なのかを判断する必要がありますが、どうもそれを考えずに独自仕様を開発しているケースが多くなっているのでは、と感じます。いわゆる「囲い込み事業」「SLA差別化事業」が先攻している、という事でしょうか。

AWSがまだ日本に本格上陸していないので、日本にいると今ひとつ現実感を感じない、と思いますが、北米市場において、Amazon Web Serviceの存在はほぼ絶対的なものになってきている、というのが業界内の共通理解です。未だに主たる顧客層はSMBやWeb2.0系のベンダーであるという事は否めないが、提供する機能セットの充実度、新機能を発表するスピード、斬新な価格戦略、値下げ攻勢、等、他のクラウド事業者を大きく引き離す、まさにInnovationの固まりです。

さらに、AWSのクラウドAPI上で開発されている3rd Partyアプリケーションの数は、かなりの数に上っており、ここだけで一つの巨大なエコシステムが構築されています。クラウド上のアプリというものは、非常につなげやすいので、同じクラウドプラットホームに乗ってさえすれば、アプリケーション連携がものすごく簡単にできるのです。

独自仕様のクラウドAPIの必要性については、デメリットの方が多いのでは、というのが小生の正直な意見です。ましてや、この先、クラウドインテグレーションの層が厚くなってきたら、クラウドAPIというのは下のハイパーバイザとの間に挟まれる技術になるので、独自仕様を採用したためにクラウドインテグレータにも繋がらない、という問題が発生します。クラウドインテグレータに認識されないクラウド、というのは悲しいものです。

でもこうやってどんどん北米のソフトウェア技術をAs-Isで採用する、という事にも不安を感じます。日本の技術力を発揮できる領域がどんどんとなくなっていく、という不安です。

どうしたもんでしょうかね?
ご意見をお待ちしてます。

鈴木いっぺい

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