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商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

妙な食べ物 その6 岩ミツバチ

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妙な食べ物 その6 岩ミツバチ

 ハチミツにもいくつかの種類がある。その一つが岩ミツバチ(ロックビー)という、ヒマラヤ山岳ミツバチだ。
 ネパールにいる間に、何度か食したことがある。非常に濃厚な黒い色をしたハチミツだ。大きな瓶に入った黒はちみつには、蜂そのものなど、様々な巣の残骸などが入っていて、使いふるした油のように、ごてごてで、すごい色をしていた。

 ネパールに滞在している間に、車でネパールと中国の国境を見に出かけたことがある。ヒマラヤを越えてネパールと中国の間の道路で車で渡れるのはたった1か所で、その道を通って、チベットのラサに向かうことができる。

 途中にはタトパニ(熱い水)という名前の温泉もある。もちろん景色はすばらしい。道路の片側が谷底でとうとうと流れている。谷の向こう側は断崖絶壁だ。

 車で走っている時、一緒に行った所員が、谷の向こうを指さして、
「ああ、岩ミツバチだ(ロックビー)」と叫んだ。谷の向こう側の断崖絶壁に幅が70㎝ほど、縦が50センチほどの大きな舌のようなミツバチの巣が見えた。車を停めて、単眼の望遠鏡を組み立てて覗きこんだら、大きな巣にミツバチが密集しているのが見えた。普通のミツバチの何倍もの大きさに見えた。

「あのミツバチの巣は、近くの村の所有です。毎年、巣が大きくなると、断崖の上からロープですごく高価なんです、岩ハチミツは」と所員が説明してくれた。「まず、すごい強壮の薬です。一日に大さじ1杯を飲むだけで十分。2杯、3杯飲んだら体を毀すと言われます」
「そんなに強烈なのか。この近くの村で買えるだろうか」
「いや、あの岩ミツバチの巣は、インド人がすでに買ってしまっています。去年の巣を収穫した時に、今年の分の前払いをしているのです。すごく安い金でインド人はずっとそのような商売をしてきています。岩ハチミツは薬として、インド人は中国に売っています」

 伝統的に、ネパールはインド商人や中国商人に搾取されてきている。前払いを一端受け取ると、もう毎年同じように受け取ることになり、せっかくの素晴らしい天然資源である超高級健康食品の輸出ができなくなっている。

 ヒマラヤ山脈中の岩ミツバチの巣は、ほとんどインド商人が買い取っているが、これらもネパールで輸出組合などの組織を作れば、はるかに高い収入を得られ、世界中に輸出できるが、そのような知恵と協力、政府のパワーが不足している。

 この岩ミツバチは、黒ハチミツとしてインド産で売られている。

インドの黒ハチミツ.jpg

 この岩ミツバチの採取は、NHKでも放送されたことがある。その採取方法は、ひどいもので、ロープにつながれた村人が崖から降りて行って、蜂に刺されまくりながらも、ぶら下がっている巣をぶった切って、釣り上げてしまうという豪快なものだ。



図2.jpg

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