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自分で決めたことしか、本当は実行できない ~『星野リゾートの教科書』を読んで

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客先の研修の場で最近はよく「これは研修じゃなくてワークショップです」と言うようにしています。研修を否定して言うのではなく、参加者が教えられて進めるのではなく自分自身で気づいて進めるものだという意図を出すためです。

しかし思えば、そういう意図とは逆に「一方的に教えてやる」的な瞬間が無いとは言い切れません。

受け取り方の問題かもしれませんが、教育にしろコンサルティングにしろ、現場から離れて見るからこそ現場にしてみれば大胆と思えるような言葉を使えるからです。その言葉が参加者にとって素敵な刺激になることもあれば、不幸にも双方の心が離れていく瞬間であったりもするのです。。。


部外者が決めると責任者不在になる

ですがとりわけ物事を「決める」のは当事者の専管事項ではないでしょうか。なかなか決められない状況にあっても当事者が決めるまで辛抱強く待つのが大事です。

部外者がしびれを切らして決めようとしてしまえば、当事者は掴みかけていたグリップを放してしまうものです。これが責任者不在の構図が作られる瞬間ではないでしょうか。

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私自身は、研修で何度もこの過ちを犯してきましたが(制限時間を意識するあまりでしたが、それも未熟さのためでした)、通常の職場における上司と部下の関係においても、同じことが起きていると想像します。

コンサルタントと違って上司は外部者ではありませんが、だからといって部下の仕事を全部知っているわけではありません。口約束で「俺が責任を取る」といっても本当に責任を取ることはできませんから、結果的に責任者不在の構図ができあがります。

責任者不在のままでは実行が伴うはずがありません。当事者は「やれと言われたから」という言い訳を心のどこかに持ち続けると思います。第一に、その決定事項は自分が発言したものじゃないからです。それほどまでに、発言と責任は一体の関係にあるものではないでしょうか。。。



自分で決めたことしか、本当には実行できない

ところで、星野リゾートでは、旅館やホテルの運営を始めるときに、その施設のコンセプトをその施設で働くスタッフが中心になって決めるそうです。

コンセプトはその施設を運営する一番大事な基礎となる考え方です。星野リゾートでは、コンセプトを策定する委員会メンバーを立候補で集め、調査データを分析しながら、施設の持つ特色や強みを検討し、何度も何度も議論を重ねてコンセプトをまとめていくそうです。

「スタッフが自分たちで考えてコンセプトを決めるからこそ、納得感があるし、共感できるようになる。それはスタッフが自分たちの力で施設を良くしようというモチベーションにつながる」(星野社長)

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おそらくこういう議論に管理者として加われば、なかなか結論が思うように決まらずやきもきすることがあるかもしれません(私がそうでしたので)。出てきた結論にもがっかりするかもしれません。

でも本当に実行できることは、当事者が決めたことだけなんですね。ですから管理者として参加するというのは間違いで、支援者として、サポーターとして参加させていただくというのが本来の姿なのだと思います。

星野リゾートの話は端的で分かりやすかったと思いますが、そもそも旅館やホテルの業界は、一つ一つの施設を取り巻く環境が大きく違う点で、現場の裁量に委ねる部分が大きい業界なのかもしれません。

ですが、どんな業界でも大きな会社になれば、事業や部署によって環境がまだら模様になることも事実です。市場との向き合い方が、かつてのセグメント・マーケティングからワン・トゥ・ワンマーケティングに変わってきたように、「決める」という行為もそれに歩調を合わせて、現場単位、一人単位でできるのが望ましい姿なのではないでしょうか。



以上は次の書籍を参考に書かせていただきました。

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星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則
中沢康彦(著)
日経BP出版センター刊行

ここでは書評というよりは、本書に基づいて私個人の意見を発展させていただきました。とくに参考にさせていただいたのは、以下の章です。

第Ⅳ章 教科書通りのリーダーシップ

なかでも
(第2節)
「熱狂的ファンをつかむコンセプトを作る ~競争力向上のカギは「自分たちで決める」~
は、星野リゾートの案件で最難関と言われた「タラサ志摩ホテル&リゾート」の運営にあたって、上述のように、コンセプト策定委員がコンセプトを決めた経緯が詳しく書かれています。


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