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過大視されるリスクイメージ:Slovicモデル 〜疾患の理解で誤解を生まぬようにしたい〜

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 「この事件(事故)って本当にかわいそうだけど、変な影響がでないといいよね〜」と妻がポツリと言った。地震以降、これまでになく?ニュースに関心を寄せている妻は、職業柄か医療等詳しく(少なくとも素人の私よりは遥かに詳しい)、日々児童と接していることが多いことも多い。この事件とは栃木県鹿沼市で起きたクレーン車による複数の児童の死亡事件(事故)である。

 以前のブログでも触れたが、リスクの種類に応じて過大視されやすいリスクが存在するようだ。少し、調べてみた。

 Slovic(1988)は、社会心理学の側面からリスクのイメージについて、因子分析から認知構成要素を得ている。一つは、「恐ろしさ(Dread risk)で制御困難、結末が致命的、リスク軽減が困難などを指し、もう一つは、「未知性(Unknown risk)」で観察が不可能、影響が遅延的、危険性が不明などだとされる。この2つの軸で示されるリスクの内、共に高いリスクであり、かつ事象の規模が大きいことが、過大視されやすいリスクの特質と予測している。
 そして、リスク過大視は、「当該リスクに対する極度の行政期待」と「極度の予兆性認知」として表れるとのこと。前者は、”とにかく行政で規制してもらわにゃ困る!”との行政権限の発動を期待するものであり、後者は「これは氷山の一角で○○も同様ではないか!」と全く関係のない事象についてへの過度な危機意識を煽りあてる行動のようだ。

 アメリカ人のリスクイメージとされるSlovicモデルをもとにごく一部を抽出してマッピングしたのがこちら。

 Slovic_model001

 私だけかもしれないが、「てんかん」という病気について知識も疎い。意識を失ってしまうほどの不可思議な脳の障害ではないかと勝手に想像してしまうことは、自身のなかで今回の事件と照らし合わせて「恐ろしさ」と「未知性」を掻き立てて、リスクへの過大視を引き起こすことは非常に危険なことではなかろうか?

 日本てんかん学会をみると被害者へのご冥福へのお祈りに加え、「てんかん」の多くは十分な治療により制御できると共に、運転免許については大型及び二種については原則適性ではないとの見解を示している。
また、日本脳神経外科学会の広報委員会が公表している疾患情報ページを参照しても、「てんかん」は脳神経の異常な興奮による発作で、生涯通じて「てんかん」発作を1回経験する人は約10%もあり、頻度を鑑みても約100万人の患者が存在する有病率の高い疾患とのことだ。また、大半の患者さんは抗てんかん薬が有効であるとされる。

 疾患など十分な理解をすること未知性を取り除き、リスクの過大視を引き起こさないも必要だろう。少なくとも、この事件によって、十分な治療を受け、通常の生活を送っている「てんかん」患者さんが、仕事や生活の上で不都合が起こるようなことがあっては決してならないと思う。

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