【取扱注意】データはデリケート サラリーマン大学院生のススメ6
研究計画書にて、客観性を示すためのデータ(特に、1次データを意識したもの)や、担当責任者へのヒアリングやインタビューによる研究の肉付けを想定することもあるだろう。かつて、自分も失敗したことがあるので、注意事項として残しておきたい。
企業において、ノウハウはその模倣困難性によらず、また、形式知/暗黙知によらず、競争優位性の源泉である(と自負している)といってもいい。計画段階とはいえ、ヒアリングやインタビューについても、その実現可能性については念頭においておきたい。修士論文となれば、大学によって、その程度は異なるがほぼ公になることが前提となると言っても良い。自社であろうとビジネスパートナーであろうと、ノウハウの一部が公開されることを許容できる企業は決して多くない。修士論文の執筆段階でヒアリングの正式な依頼を行うと、しかるべき部門(広報や知財管理、総務等)で NG となることも少なくない。
また、生産や販売など数値データについては、その明瞭性からも事業パフォーマンスを直接示すことにもなる。協力者から提供を受けるなり、自身の判断で引用することが、その後の実務のキャリア形成にて、よろしくない事態(生々しいので、割愛するが)を引き起こす懸念もある。財務データは、上場企業(もしくは上場計画の企業)でない限り、進んで開示している組織は少なく、開示義務を負わない未上場であることが望ましい業種/業態/企業/組織もある。(これは、決して避難されるものではなく、ごく自然な判断である。)
データで肉付けは、研究ストーリーに厚みをもたせることとなるが、テーマが経営系になると、その取り扱いそのものがデリケートになるので、注意が必要となる。
研究計画書では、主として研究テーマと研究立案能力が評価対象となると私は考える。修士論文レベルであれば、研究を裏支えするデータの希少性/機密性そのものが、計画書の評価を決めるものではないだろう。計画に一定水準の実現可能性/実務・社会的貢献/(ちょっとの学術的貢献)を示し、行間から”意欲”が感じられる内容であれば、大丈夫だと思う。(と、言う割には、結構、お作法もあるので、厄介なのだが。)
自分自身が経営者でない限り、実務にて収集したデータを中心に計画書を組み立てる場合には、入試試験での研究計画書の面接/プレゼンテーションの時のためにも、(また、気が早いが、実際に修士論文の執筆時を想定しても、)バックアッププランは用意しておいたほうがいい。
(このブログは、ごく普通の社会人がある大学院に挑んだ記録である。全く無名の弱体サラリーマンが、雑念の中からほんの少しの勇気を振絞り、今もなお大学院生でいられる奇跡を通じて、その原動力となった信頼と愛を余す所なく綴ったものである。)