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モバイル業界にながくいた新米教授のよもやま話

コグニティブ無線クラウド

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  岩手県立大学ではデータベースシステム学講座ということで、データベースを中心においてコミュニケーションやメディア、その他諸々の領域を研究対象にしています。
  またその一方で、YRP(横須賀リサーチパーク)にあるNiCTにおいて、次世代のモバイルネットワークの研究開発にもタッチしています。これまでの移動通信システムでは、無線方式は一つで、伝送速度の高速化を中心にモデルチェンジを繰り返してきました。このように一つの無線システムで全てのユーザの要望に応えようとするネットワークをホモジーニアスなネットワークと言います。第二世代の初期までは、ユーザの利用形態は音声通話、つまり電話に限られていましたから、ホモジーニアスなネットワークしか考えられませんでした。
  しかし、その後、iモードを始めとしてケータイにブラウザが標準搭載されたり、多くのノートPCに無線LANが搭載されるに至り、ユーザ要望は多様化してきました。このような多様な要望に対してホモジーニアスなネットワークで経済的に対応するのは非常に無理があります。屋内から新幹線での高速移動環境まで同一の通信品質を確保するためには膨大な設備と費用がかかります。

  ホモジーニアスネットワークへのアンチテーゼとして提案されたのが、ヘテロジーニアスネットワークです。これは、複数の無線システムで多様なユーザ要望に応えようと言うものです。無線区間だけに焦点を当てて、コグニティブ無線と言うこともあります。ヘテロジーニアスネットワークでは、家で無線LANを利用して通信料を払うことなくハイフィデリティな品質の映画を見ていて、そのまま屋外に出てもWiMAXと言ったメトロポリタンエリアネットワークMANを利用して通信料を払うが高品質の映像を見続け、そのエリア外に出た時点でケータイのネットワークに接続して映像品質は劣化しても映画を見続けると言った芸当が可能になります。
  我々はヘテロジーニアスネットワークと言っても、通信事業者に依存することなく、周囲の状況に応じてユーザの希望する優先順位に従って無線システムを選択可能なネットワークを目指して研究開発しています。このネットワークをコグニティブ無線クラウドと呼んでいます。

  このネットワークは、家に無線LANがあればそれを利用し、屋外ではホットスポットかMAN、あるいはドコモ、au、ソフトバンクといった携帯電話事業者のネットワークを各自の利用ポリシーに基づいて選択して利用可能にしようというものです。モバイルナンバーポータビリィティ以上に通信事業者の制約に縛られることなく、自由に通信が可能になります。その一方で、銀行の選択と同じで、良く考えて自分の希望する無線システムや通信事業者を選ぶ必要があります。料金の安さを追求しすぎると、希望する通信品質が確保できなかったり、通信途中で回線が切れるかもしれません。

  いずれにしても、このようなネットワークが技術的に実現可能になったとしても、それが具体的に導入されるかは政府を中心に議論を深めていく必要があるでしょう。しかし、Web2.0以上にMobile2.0と呼ぶに値する新しいアイデアだと思いませんか。

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