Twitterにはじまり、企業むけにはYammer、Chatterと、クラウドベースのマイクロブログというか呟き系のツールが広がりつつあります。これらクラウドのツールがもたらす可能性の一つに、たくさんの人が参加するネット会議があるのでは、という予感を実はもっています。ネット会議より、より創造的に、より多数の人の参加という形で、マスコラボレーションの可能性が広がる、とでもいいましょうか。
もちろん今までもネット会議はありました。それでできたこともたくさんあったと思います。ただネット会議は、よく知った同士では相互に意見がかわされ、それなりに民主的に意見をまとめていくことはできたかと思いますが、互いに知らない相手をたくさん含むような場合は、やはり意見の強い、意見がはっきりしている強い参加者にひっぱられていったのではとも思います。ある意味、たくさんのリードオンリーの参加者の意見は、なかなか反映されにくかったでしょう。
その点で、意見をまとめるでもなく、ちょっとコメントする、短く発言する、というマイクロブログの発言に敷居が低い特性は有利と言えるでしょう。実際に比較的発言が苦手の日本人でもTwitterの発言は一人当たりアメリカ人の2倍というアクティブな様子は、静かな会議をにぎやかなものにするかもしれません。SNSがうまく機能しなかった、という企業内ソーシャルにもちょっと光がみえるように思えます。
もちろん敷居の低さだけでは、ネット会議は成立しません。より敷居が低く、発言が多様であると、これはもうファシリテーター泣かせの会議になるでしょう。今までの日本人の会議は対面でやってもなかなか意見がでず、正式な会議では、外部のコンサルタントを雇って事前に個別ヒアリングで集めた意見をまとめてもらいそれを確認していくのが会議などというのもよく見られました。
一方、Twitter関連では、Togetterという日本発のTwitterの意見をまとめるためのサービスが人気を呼んでいます。これは一連のTwitterの呟きをスレッドとして編集してまとめるツールです。いままで断片でしかなかった参加者の発言を他の人の意見と関連づける。これはプロのファシリテーターでしたら、発言者の意見をできるだけ分類し、整理していくのと似ています。Togetterはさらにその整理を編集する人が、あるスレッド、文脈の中で位置づけて可視化する点が、普通の分類と整理と違うところでしょう。私の発言もTogetterされると、編集者の視点が入ってきて、興味ぶかく見ています。
敷居の低い発言環境、そこに文脈を与えて編集やまとめを補助するツール、これだけでも今までの会議に少なかった、たくさんの多様な意見を取り込んで整理することが可能になるのではと思っています。もちろんその後には、通常の会議でやるようなきっちりとしたアイデアや課題の分類と整理、さらに何が本質的かという議論、それらのコンセンサス作り、さらにそれに対する施策の策定というところは残っています。
そういった部分にもWeb2.0の流れで盛んになってきた、投票などの仕組みは使っていけるでしょう。あと課題の整理をしていく過程を、ブログやマインドマップなどの道具をベースにして、より透明性と参加者の共有と理解を促進するのに使えると思います。このあたりは、今のところ、そういった道具をうまくつなげて、流れでみせて参加者の理解をすすめる、コンセンサスを作っていくようなやり方ができる開発環境と、それらの特性をよく理解しているファシリテーターが必要になってくるかもしれません。
日本では新しいアイデアをボトムアップでいろいろ出しあう場づくりが昔から製造業を中心にあるように思えます。ホンダのワイガヤは有名なところです。一種のブレインストーミングのやり方だと思いますが、それをたくさんの参加者を募ってできるツールとしてTwitterを代表とするマイクロブログは有力な出発点でしょう。そしてそこから文脈をまとめる、分類と整理をしてみせる、投票してみて重要度を探る、一連の過程を分析と整理して参加者のコンセンサスにつなげる、といった一連のツールを整備し、それを使いこなせるファシリテーターを養成することで、マスでのコラボレーションの体系として成熟していくように思えてきました。
クラウドでのコラボレーションや呟きについて、前回は呟きのコミニケーションやコラボレーションという観点で、大部屋感覚をご紹介しました。しかしながらこの感覚は、ある意味表面的で、その感覚の先にある、どんな情報が共有されるかを表現できていなかったと思います。
振り返れば90年代。グループウェアでは情報共有を促進するために、どのように情報を格納するかが、一生懸命取り組まれていました。どのように情報を分類するか、どのように格納するか、情報を探しやすいビューといったような一覧はどのようにすべきかなどです。最後の手段が全文での検索をどううまくできるかです。しかしながら皆さんも苦労しているように、あのGoogleでさえ、自分の思った情報はその価値とともに、行きつくのは一苦労、または不可能です。
考えてみれば一人ひとりが、それぞれ異なった情報のニーズを持っていながら、全員に対して同じコンテンツの並べ方ではニーズを満たすことはできないでしょう。一方、全文検索に関しては、どんな検索キーワードが、自分の探している情報の文章、コンテキスト(文脈)で出てくるか、といったことを事前に知っていればうまく探せるでしょう。ただ、情報について知識が乏しい場合には、どんな検索キーワードが適切かで行き詰ってしまい、なかなかたどりつくことができないのはよくあることです。知らない情報をある程度を知っていなければ情報に行きつけない。ある意味、矛盾ともいえます。
さてここ数カ月、社内で呟きツールを使っていて気づいたことがあります。自分の興味ある分野の専門家、自分と似た仕事をしているか、または係わりある人、そして自分が知りたいことのドキュメント自身やアプリケーションのデータ、こういったものを呟きが通知されるようにフォローしています(SalesforceのChatterでは人以外の文書やデータがフォローできます)。すると、自分が知っていたことの情報のアップデートや自分が関係しそうな情報が、自動的にエージェントによって呟きとしてタイムラインで通知されます。さらに、予想はまったくしていなかったものの、さすがその分野の専門家らしい情報が呟きやファイルで通知されてきて、予想していなかった価値ある情報を知ることで大いに刺激されました。
さらに自分が信頼している人がフォローしている人をさらにフォローすると、思いもよらぬ、自分の興味やニーズに近い、ときに遠いけど刺激的な情報まで入ってくるようになりました。おそらくこういった情報は、その人に徒弟にでもなって、つきっきりでいると自然と入ってくるような情報でしょう。
感覚的には、グループウェア時代は、自分でいろいろな情報を探しにいきました。コンテンツが中心の世界で、人はある程度の情報の知識を常にある程度要求され、それを使って検索してさらに必要な情報に行きつく。そうでないと目的の情報にはたどり着けないという、ある意味で優秀な人むけのシステムだったかもしれません。2000年ごろに盛んに言われていた、ナレッジマネージメントの限界ともいえる、コンテンツだけでなく、そのコンテンツを知る人を知るべし、というKnow- Whoの議論につながります。
専門家をフォローする、ドキュメントやアプリのデータをフォローする、これはある意味、Know- Whoのかわりになるように、事前にそれらにコネクションをフォローという形で準備しているようなものです。コネクションを自分の知りたい情報の観点で張ることで、パーソナライズされた情報の流れが自分にむかって流れ込んできます。Twitterのタイムラインの考え方です。
また一人ひとりは自分の自己紹介、興味、行動などを積極的にオープンにすることで、さらにいろいろな人からフォローされるようになります。SNS的なFacebookの世界で、ソーシャルグラフという、人と人や物とのつながりの価値が理解されてきたことに通じます。最後に、どうしても欲しい情報が手に入らなければ、これらのコネクションと個人の情報から適切な質問相手をさがすことになります。
90年代の情報共有がコンテンツ中心に考えられ、それなりの成果は得たものの、ある意味、混沌とした情報洪水に埋没してしまった事実。いったん検索がそれを救ってくれるように思えたのですが、あくまで一部の知っている情報にとどまっています。一人ひとりがまだ見ぬ価値ある情報に行きつくためには、Know-Whoとして提起されたことを、ソーシャルなクラウドのサービスが提供するコネクション中心の世界で解いていく。人脈や徒弟といった昔有効とされたアナログ的なものの模倣が、ITによってスケール大きく実現し始めているように思えます。まさに情報共有は明らかに新しいステージに入ってきたのではないでしょうか。
個人として、そして企業の社員として、ここ数カ月クラウドの上での呟き、Twitter的なものに浸ってきました。90年代のグループウェアによる情報共有でもコミニケーション、コラボレーションの変化と会社へのインパクトに感動してきた一人なのですが、今回の呟きツールの出現は、あの時と同じか、それ以上のインパクトを正直感じています。そんなグループウェア時代と比較した呟きによるコミニケーション、コラボレーションについてちょっと考えてみました。
インターネット上での呟きであるTwitter、そして最近、会社内でも呟きができるクラウドでのマイクロブログのサービスが提供され始めています。これらに共通する、今までのグループウェアのメールや会議室などと違うポイントは、いろいろなことが言われていますが、私なりに以下の3つにまとめてみました。
一つ目は、なんといっても情報発信の敷居の低さでしょう。Twitterの140文字の制限、またはアプリケーションの特性から、短いメッセージが誘導されて、柔らかい、固まる前のアイデアか、その断片が発信されるようになっています。グループウェアではメールや会議室という形式が、なんとわなしに、ある程度、論旨の明確なメッセージに仕向けていました。
敷居の低さは、大量のアイデア、大量の対話へとつながっていくのは自然なことでしょう。二つ目として、そこで量によって思ってもいない対話が生まれ、それらは新たなアイデアにもつながると思います。
また過去のグループウェアと決定的に違うと言われるのが、非対称のコミニティーがあげられています。グループウェアでは、事前に管理者などが決めたクローズのグループでの対話が前提でした。さもなくば全く区切らないオープンなものでした。呟きはタイムラインで、個人別の世界をつくり、しかも相手は重なりながらも自分と異なるタイムラインの世界をつくる。3つ目として、この非対称性により、対話がある人のタイムラインから次の人のタイムラインを介して伝わっていくことで、コミニティーをまたがったコミニケーションが発生していきます。
これら三つの特性から、企業の中で何か起こるか、自分の社内経験からも考えてみました。昔のアナロジーを使うとすれば、企業の中で、大部屋文化が復活する、そして同期の桜や同じ事業所出身といった、何かを共有するコミニティーがより盛んに多様になる、と言えるのではないかと思っています。
グループウェアでは小規模ないしは完全にオープンな会議室のような仕組みになりがちでした。呟きツールは、これを今一度、大部屋文化にしてくれることでしょう。気になる会話には近寄っていって聞いたり割り込んだりする。自分に関係ないと思えばその輪には入らないが、だれかが呼んでくれたりすれば、その輪の中に自主的に入っていける。タイムラインによって、そんなゆるやか関係がネット上で生まれると思います。その中では、マネージメントの呟きも、一社員の呟きも対等に、かつスピードをもって伝えられるでしょう。
またグループウェアでは、コミニティーの形成を、会議室の管理者などにゆだね、誰を入れるか入れないかは、なかなか個人が決定権をもてませんでした。これに対して自分で入っていくイメージでコミニティーに参加し、さらに非対称の性質から、知らない間に知っている人を介して、自分が属していない違うコミニティーの話が入ってくることが起きるでしょう。当然コミニティーは、広がりを見せたり、違うつながりで新しいコミニティーの発生も起こりえるでしょう。
大部屋文化の復活、コミニティーの多様化は、呟きツールによって、会社のコミニケーションとコラボレーションに関して、その規模、スピード、そしてそれらの変化に影響を与えると思います。これらは、イノベーションの源泉といわれている、偶然から新たなアイデアの創造をうながすセレンディピティを強化する場になりえると考えてもいいかもしれません。
ところで社外のTwitterのような呟きツールと違った、社内におけるユニークな新しい呟きツールの特性はどこにあるでしょう。これはたまたま私の使っているツール(Salesforce.comのChatter)の特性だからかもしれませんが、アプリケーションやデータが呟く機能を持っていることによって、いろいろな発展があり得るのではと思っています。
今まで企業内の報告、レポートなどは、あくまで情報の発信側にゆだねられていました。これを報告せよ、こういう条件の情報をレポートせよ。これらは今まで、情報発信する社員の振る舞いを要求するもので、場合によってはアプリケーションの一部としてレポートを定期的に生成するような開発になったりもしていました。
しかし呟きツールで、受け取り手が、能動的に知りたいデータに対して呟き設定をしておくと、その情報が変化したときにツールが受け取り手に自動的に呟く。こんな仕掛けができ始めました。営業部長であれば、自分の部下の営業案件の中で、成約の一歩手前に入った商談を部下に報告するように指示していたり、一覧のレポートを求めたりしていました。これがSalesforceのChatterでは、CRMの特定のデータなどに呟き設定を受け手がすることで、自動的かつリアルタイムにその変化を知ることができます。
やや大袈裟かもしれませんが、アプリケーションの、どちらかというと細かな報告などの機能開発を少なくしていく、さらにもっと自由に知りたいものをアプリケーションの追加機能開発なしに通知をうけることができる、という展開を見せるのでは思っています。
この分野はまさに今、試行しながらいろいろなものが周辺ツールとして開発され、新たな社内呟きツールの成長が始まろうとしています。データが呟くことで、アプリケーションの機能の在り方を変えていく。そんな進化がクラウドの漸進的進化の一部としてみられそうな気配です。
前回、クラウドがナレッジマネージメントを進化させる道具立てになるのでは、と書きました。一か月もたってしまいましたが、あいかわらずTwitterや社内での新しいコラボレーションツールを使うと新しい感覚が生まれてきます。
そもそも、広く情報共有を含むコラボレーションのITは、グループウェアというソフトウェアが90年代に広く企業で使われるようになり一般的になりました。電子メール、文書DB、掲示板などがその基本的要素だと思います。
それから20年近くたった今でも、部門や全社でのコラボレーションは、Web化したこと以外は、あまり大きな変化は見せていないのが正直なところでしょう。グループウェアという言葉はマーケットではかなり影をひそめて、Googleで引いても一番にひっかかるのがWikipediaだったりします。
かといってコラボレーションの新しいニーズがないかと言えばそうでもなく、企業の内外問わずコラボレーションの機会はどんどん増え、その仕方を模索する動きが多くの会社にあるように思えます。いったいどんなコラボレーションの観点が今後変化していくのか、3つくらいの視点で考えてみました。
まず一番目としては、コラボレーションの情報源はどのように変わりつつあるでしょう。基本、人と人ではありますが、多くのお客さまとの対話、社内でも部門を超えたり、権限を持たなくともユニークで価値ある声を出すようなボトムアップの声など、変革の方針の下で革新的なアイデアを求めたりすることが増えているでしょう。
また、たくさんのアプリケーションがあっても、そのデータなどが生かせない状況も増えているようです。お客様の苦情が別部門に入ったり、Twitterで呟かれていたり、契約更新の時期が近くなってきたり。様々な情報源に対してすべて人がフォローするのはかなり限界があるように思えます。あらゆる情報源に対してつながり、かつエージェントなどで自動的に、ニーズに対していちいち開発などしないでも安いコストでコラボレーションの情報が入ることがより望まれているように思えます。
二番目にあげたいのが、コラボレーションの流れです。仕事をすすめるうえでコラボレーションは仕事そのものと言ってもいいものだと思います。ところが独立したグループウェアのようなソフトウェアでは、誰かと対話したりするためにわざわざ今まで使っていたアプリケーションを切り替えて、その情報自身も手で添付、コピー、リンクなどと手間をかけて、仕事の流れを変えてコラボレーションという仕事をしているような感があります。
BlogとTwitterの関係のように、コラボレーションを促進し、流れを保つためのいろいろ有機的に連携できるような仕掛けがあるのはそんな試みだと思います。本来、たとえばCRMなどの業務ではお客様への提案書をその文書DBでなく業務アプリの流れの中で見れて、さらに関係者とそこで対話できたりするのが生産性などの観点でも有効に違いありません。
三番目にあげたいのが、コラボレーションの範囲です。20年近く前にくらべて、あきらかに企業内のコラボレーションも広くなり、またパートナーやお客様とも直接ITでやりとりなり、コラボレーションをとっていく機会が増えているように思えます。アウトソース、商品を軸にした共同の取り組みなど経済活動のあり方がその背景にあるでしょう。その場合、大きな会社内、市場との対話となると、事前に決まった、よく知った同志の対話から、見知らぬ人のTwitterのコメントのような自分は知らないが、相手が知っているような対話、さらに広く見知らぬ人同志での対話と拡大しているようです。
多様な情報源、仕事の流れの維持、広く非対称な関係。こういったもののコラボレーションの模索が今、まさに取り組まれているように思えます。これらはグループウェアという企業内範囲を考えていたため積極的に取り組みにくかった、またクライアント/サーバーという特性からの、試行錯誤での改善、機能アップができない制約であったかと思います。
人のコラボレーションはやはり複雑で一定ではありません。電子メールだけで済むような世界ではないことが、皆さんの日常での感覚でしょうし、また良い道具立てがないことで電子メールがあふれてしまっているようにも思えます。業務とうまく連携し、少しずつ進化し続ける、またニーズによってそのやり方を変えられるような柔軟なコラボレーションの基盤。まさにクラウドでのコラボレーションによって、これらが試行錯誤の中で、よりよい環境を作っていくように思えます。
ナレッジマネジメントと言えば、グループウェアといったソフトウェアの出現とともに、90年代に大ブームとなった、一種の経営手法であることは多くの方がご記憶かと思います。企業の競争力を高めるための、知識の発見、共有、創造、活用を、より日々の企業活動の中に埋め込んでいこうとするものでした。電子メール、掲示板に始まり、情報共有データベース、企業内ポータル、そして各種アプリケーションの一部としての情報共有の仕組みが、このテーマの下で様々に開発されました。
形式知と呼ばれる、形式化され体系化された知識については、グループウェアや一般のアプリケーションの一部として蓄積、共有、活用しようという試みが随分なされました。が、そこまでの形式化は困難で、またはそれを活用するためには、暗黙の背景や、ちょっとした感覚や経験の断片などの、暗黙知と呼ばれるものの重要性が次第に叫ばれ、暗黙知は人しかもっていない、ということでノウフー(Know-who)という知識を持っている人が重要と、専門家データベースや、コミニティーを支援するITという流れになっていきました。
ただノウフーはある意味、ITではできないから人に聞いてみよう、というものです。人を見つけるにもその人のデータベース化という形式化が必要になります。それが原因かはわかりませんが、それから10年以上、企業のナレッジマネジメントは表舞台からは次第に影が薄くなっていきました。
一方で、皆さんの馴染みの情報共有やコラボーレションのITは、検索エンジン、Wiki、チャット、ブックマーク共有、SNS、ブログ、マイクロブログなどと、企業内とは少し距離のあるインターネット、コンシューマITの世界で、ここ10年成長を遂げてきたわけです。そしてここにきて、これらの技術が企業内にも入りつつあります。チャットで問い合わせをボットのアプリケーションにする、Wikiでプロジェクトをまわす、社内コラボレーションにブログを使う。そしてここにきてTwitterを代表とするマイクロブログ的なものを企業内アプリケーションと絡めて使うところまできました。
SalesforceのChatter、SAPの12sprints、IBMのProject Vulcanと、続けざまに、Twitter的なタイムラインを持ち、さらに業務アプリケーションと連携して使うといったものが発表されてきました。さらにそこにGoogle Waveが絡んで使われようとしています。
わたしもTwitterにはまって早くも半年。ブログのように意見をきっちりまとめなくても書けるし、知識の断片でもいいし、背景がわからなければ聞き返せるし、さらに書いているうちにアイデアが膨らむし、と何か90年代のナレッジマネジメントで言われていた暗黙知的なものを交換できるツールではないかと思うようになりました。
ただ、上にあげた3つの新しい企業むけのツールは、ベータから始まり、すこしずつ使ってもらい成長させていくようにも思えます。裏を返せばこんな風につくれば正解というのがないからかもしれません。人間の思考プロセスを助けるツールはなかなか定型化は難しいでしょう。Web 2.0的に永遠のベータとして、いろんな使い方をされて、いろんなフィードバックをもらっていくうちに、暗黙知を如何に企業内で流通させるかという課題の本質に近づいていけるのではとも思います。
永遠のベータ、頻繁なフィードバックと改善。まさにクラウド上で作らなければうまくいかない世界です。Twitterのユーザーになり、また社内でマイクロブログを使い、暗黙知という言葉を思い出しつつ、「クラウドがナレッジマネジメントをもう一度進化させるのでは」、という感覚を持つようになった次第です。
「ネットワークの遅延があるから地球の裏側とかのデータセンターは使いにくい」。こんな話をよく聞きます。確かにネットワークを伝わる信号は光の速さを超えられないので、米国のデータセンターなどを使えば、軽く100ミリ秒以上の損をします。でも100ミリ秒ちがったとして、本当にアプリケーションが使いづらいのか、ほかに高速化の手立てはないのか、ちょっと調べてみました。
アプリケーションによっては確かに数ミリ秒でも命取りになるものがあるのも事実です。最近話題の証券取引所などでは、プログラムで取引をして、より有利な売買をするために、取引所のデータセンターに投資家がサーバーを置けるようにする、コロケーションサービスが出始めました。まさに光の速度との戦いです。
一方では旧来のオンライン端末と呼ばれるものの応答時間の目標は3秒というのが昔よく聞かれた数字です。さすがに3秒は、銀行ATMの出始めとは違い、今の時代、ユーザーがかなり忍耐を強いられそうな数字です。実際、あのインターネットのキャッシングをしているアカマイの調査では、応答時間が3秒を超えるeコマースのサイトは相手にされなくなり、今は2秒がひとつの目安であるという調査結果が出ています。
こう見てくると、アプリケーションによってかなり幅はあるものの、広く使われるアプリケーションの多くは、皆さんの体感からも1秒や2秒程度がひとつの応答時間の目安ではないかと思われます。そこで実際に応答時間は何の総和で決まるかといえば、大雑把には、ネットワークの往復での遅延、サーバーでの処理の遅延、そしてクライアントの処理の遅延との和であることは容易に理解できます。
では実際、国際ネットワークの遅延はどのくらいでしょう。平均的な往復での遅延の目安について、キャリアの公表データからの現時点でのまとめがありました。国内とソウルや台北までならば50ミリ秒以内。シンガポールや北京といったところだと100ミリ秒以内。さらにバンコクや米国西海岸のサンホゼあたりでは100ミリ秒を超えるくらい。そしてニューヨークやシドニー、インドのムンバイだと200ミリ秒以内とのことです。もちろんこれを改善すべく努力もされているようです。
さてサーバーの処理時間と言えば、これもアプリケーションによって違いますし、測り方もいろいろありそうですが、平均処理時間が公表されているものがあります。PaaSで有名なSalesforceではトランザクションが一日1億に達しても平均253ミリ秒が実現できたとあります。またSaaSではオービックの勘定奉行 for J-SaaSでは、目標は3秒以内ですが、実績は平均32ミリ秒と、かなり軽くつくってあるようです。
そしてクライアント処理時間ですが、これはほとんどブラウザーのスピードになるわけです。Google Chromeが高速化にこだわって開発されていることは有名です。設計ポイントの一つが、DNS解決のプリフェッチによる高速化があり、それだけで軽く100ミリ秒がかせげるという記事がありました。彼らは過去、検索結果の行数を増やして500ミリ秒遅くしたことで収益を減らした経験があるそうです。
このように見てくると、速いブラウザーを使う、近くのセンターを使う、高速なサーバーを使うという応答時間に関する3つのポイントがあることが整理でき、それぞれの改善努力がされていることが分かります。もちろん速いにこしたことはありませんが、データセンターまでの距離で左右されるのがせいぜい200ミリ秒とすれば、国際ネットワークが遅いから地球の裏側のデータセンターは使えないはず、というのは特別なアプリケーションのみではないかなと思えてきました。
いよいよ2010年ですね。クラウドブームが始まった2009年をうけて2010年には何が起きそうか。クラウドのサービス・ベンチャーAppiroの2010年の予測を、2009年の予測(レビューは前回)と同様にサマリーしてみましょう。
①オープンソースよりクラウド開発者コミニティーが早く成長する
特定ベンダーの開発コミニティーと補完しあうながらも成長するという予測です。これがPaaSにとってのまさに鍵ですよね。
②クラウドの標準化は起きないし進めるべきでない
イノベーションのスピードが速くクラウドの標準化はインフラの低いレベル以外は起きないという予測です。一見、非難を浴びそうな予測ですが、確かにイノベーションが猛烈に速い分野では標準化は過去もあまり起きなかったような気がします。
③クラウド・プロバイダーはロックインに対応する
CIOの重要な懸案はPaaSのロックインであり続けるが、プロバイダーは他の言語のサポートや、移行のフレームワークやツールキットで対応しようとするという予測です。Google AppsやAzureは確かに言語ではそう見えますね。
④クラウドのインテグレーションが企業の代表例として現れる
オンプレミスのインテグレーションからクラウドのインテグレーションへと移っていき代表的な企業の例がでるとの予測です。イメージが沸くような沸かないような。
⑤企業アプリケーションがGoogle化していく
ExchageやSharepointだけでなく、よりきっちりした企業アプリケーションのフロントエンドをGoogleが担っていくという予測です。全部Googleにのるとはさすがに言わないですね。
⑥企業コラボレーションは一つの特徴でありビジネスではない
Salesforce ChatterやGoogle Waveが企業アプリケーションをリアルタイムのコラボレーションに統合していることから、単体の企業コラボレーションのビジネスは競争としてきびしくなるという予測です。古いですがグループウェアという単体ビジネスがきびしくなった現実が一つの現象かもしれません。
⑦MicrosoftはAzureでグローバル顧客を共食いする
オンプレミスの彼らのグローバルな顧客がAzureに食われていくという予測です。Software+Serviceの戦略がどれだけこれを緩和できるかでしょうか。
⑧クラウドの統合がおきる
GoogleとSalesforceを中心に買収などでクラウド・プロバイダーの統合がおこり、 OracleはNetSuiteを買収するのではという予測です。クラウドの業界再編ですね。
⑨グローバルのSI業者はクラウドマーケティング以上のことはしない
文字通りの予測です。かなり挑発的ですね。
⑩真のイノベーションはクラウドの技術ではなく、クラウドのビジネスの中でおきる
クラウドの保険の提供業者やセキュリティーの監査人など新しいクラウドのビジネスがおき、よりクラウドが使いやすくなるという予測です。これがまさにクラウドが企業IT市場で盛り上るかの鍵なのかもしれません。
2009年の予測に比べ、旧来のITビジネススキームにかなり挑発的なメッセージもありますが、ビジネスモデル、マーケットの視点が入っていて興味ぶかいです。2010年に起こるかは分かりませんが、こういうことが起きると企業むけのパブリック・クラウドのマーケットが本格化するという前提と言えたりするかもしれません。ともあれ2010年の変化は楽しみですね。良いお年をお迎えください。
年初に、「2009年クラウドでの10の予測」というクラウドのサービス会社Apprioの記事を紹介しました。1年での予測の当否が自己評価されていましたので、ご紹介したいと思います。
①クラウドの集まりのクラウドが広がる。但し、オープンプラットフォームを中心として。
「当たり」。SalesforceとTwitter、SalesforceとGoogleとの連携をあげています。Salesforceに偏っていますが、まあ広がったことは事実でしょうかね。
②Microsoft Azureは、せいぜいExchangeのよりよいプラットフォームになる程度だろう。
「当たり」。これは評価がややむずかしいですね。11月までサービス開始が遅れたことなどを指摘しています。ただAzureへの期待は高まっているようにも思え、やや甘い当たりでしょうか。
③Google Appsが見直され企業への採用が倍加する
「当たり」。200万を超える企業が有料のGoogle Appsを使っているそうです。1万ユーザーを超える採用も、Valeo、Motorola、Johnson Diverseyをあげています。倍加かはわかりませんが、まずは当たりでしょうか。
④主要なSaaS1.0企業が行き詰る
「当たり」。QuickarrowとOpenAirがNetSuiteに買収されたことをあげてマルチテナントでないSaaSは厳しいという評価です。ただ一方でこれをSaaS統合で勢いがでるという記事もあり、評価は分かれるところです。
⑤サーバーを保持しない1000人以上の企業が現れる
「外れ」。正直にまだ知る限りではないそうです。ただ時間の問題とも。Google Appsの例から、このくらいの人数のスタートアップならこれからありえるかもと思いますが。
⑥プライベートクラウドの増加と減少
「外れ」。今のところと断って、増加というか期待が高まっていると認めています。Gartnerなんかもその役割を認める意見が多いようです。幻滅期か衰退化となるのかはこれからの評価でしょうか。
⑦Business Intelligenceが次なるSaaS化が進む分野となる
「外れ」。BIクラウドのスタートアップだったLucidEraが破綻したこともあり、まだ時期尚早とのことです。LucidEraの発表では、カストマーは単純なBIは求めていなかったとのコメントが見あたります。大量データと複雑なニーズがクラウドにとって壁でしょうか。
⑧SAPまたはOracleがPaaS競争に入ってくる
「当たり」。11月にSAPが発表したBusiness ByDesignはマルチテナントで、レベルをあげたPaaSとして評価しているようです。たしかに来年1万社新規顧客獲得と、その本気度がうかがえます。
⑨企業がソーシャルネットワークの効果的な使い方を理解する
「当たり」。Avon、Starbucks、ComcastでのFacebookやほかのソーシャルネットワークの活用を指摘しています。日本ではまだこのあたりは本格化していませんね。
⑩Force.com上で少なくとも1億ドルを稼ぐソフトウェアが現れる
「当たり」。以前からForce.com上でERPサービスをのせていたCodaがSalesforceに一部支援を得て作ったFinancialForceの例やApprio自身のサービスをあげています。ただ1億ドルの可能性の予測となっていて、ほんとうに稼いだのかどうか。BMCやCAもForce.com上での開発を発表したりしていて勢いは確かに感じますが。
7つ当りで70点でしょうが、ややあまいところがあるので差し引いて50点っていうところじゃないでしょうか。
SaaS/PaaS/IaaSを筆頭に、さまざまなクラウドが飛び交った一年だったように思えます。みなさんの1年前の頭の中のクラウドは明らかに変質して、かつ混乱してきた人も多いように思えます。かくいう私も正直、"クラウド"という一言では、とても百花繚乱のクラウドの世界を語れないことの限界を感じています。
それでもあえて、整理の前の想像を広げる段階として、今一度、"クラウドで何が変わるか"を、パブリッククラウド中心に、人の立場ごとに乱文覚悟で書いてみたいと思います。ご容赦のほど。
ユーザーにとって
ユーザーにとっては、まずはSaaSは変化が大きいですよね。やりたいことに合うSaaSがあれば、IT部門に干渉されず少額ですぐにはじめられる。ただ多少のカストマイズはできてもそれ以上はなかなかむずかしい。既存のシステムとの連携は、IT部門が最初嫌がりそう。PaaSとかIaaSだといろいろ作れるかもしれないけど、やはりハードルは高くなりそう。システムが落ちても、停電と一緒で今までのようにIT部門に八つ当たりするすることは大抵エネルギーの無駄。でも簡単に始められることから、今までのようにユーザーで予算つけて、買ったり、作ったりするという意欲は相対的に減るかも。
開発者にとって
SaaSはさておき、何か作る場合には、DBモデルも違うのがあったり、手元にマシンは置けなくなるし、なんとなく新しい世界の不安。でも、まあ開発環境そろえてほしいといえば、今日でも使えるところは魅力。作り始めると他のクラウドのサービスとマッシュアップとかどんどんして、サービスの組み合わせってところが新しい感覚かも。でも何かエラーおきてもインフラは責任とってくれないので、自分でケアしなければならないのはなんか気持ちわるい。あと、がんがん作りこんだら、PaaSの制限に引っかかったなんてこともあり、いろんなことを考えなきゃいけない。可能性も制約も広がるかな。
IT部門にとって
全体を仕切って入れれば、運用は楽だし、固定資産は減るし魅力的。ただユーザーから細かい要求とかクレームがきても、クラウドベンダーが、そう言うことは聞いてくれないから、なんか板ばさみ。とはいえ放っておけば、ユーザーが勝手に契約したりするし。それに今までのように原因追及と上から細かく迫られても、クラウドベンダーのせいにするしかない。まあ大した努力せず、まずまずのサービスレベルはえらそうだけど。それで浮いた時間で、まじめにビジネスプロセス勉強するか。
ベンダーにとって
今までハードやソフトを売っていたところは、それらが売れなくなるのではという漠然とした不安。というか明らかに一部では、顧客がクラウドベンダーに変わるということはおきる。既存のベンダーはクラウド自身に手を出すと、少額の従量制で、ユーザー数を圧倒的に増やしてスケールメリットを得るとか、売り方はもちろん、社内のプロセスやコスト構造を随分変えていかないときついかも。クラウドベンダーになれたとしても、将来の顧客にインフラ投資しないといけないリスクをマネージしなきゃいけないし、さらに海外ベンダーと直接戦う、まさに太平洋の空中戦。
業界にとって
クラウドの盛り上がりが激しくなると、ハード、ソフトなどもクラウドベンダーが中心になって業界の構図が変わりそう。とくにPaaSは、どのプラットフォームに乗るべきか、かなり迷う。IaaSも単にハードからクラウドの仮想ハードというだけではどれだけ伸びるか不安。アプリのベンダーは、世界的なプラットフォームに乗ることで、もしかしてグローバル企業になるかもという夢をみられるかも。誰と組もうか悩む。いずれにしてもピンチはチャンスか。
まだまだ書ききれないことが山積で、かつバランスもまだまだ悪そうですが、更なる議論のヒントが出てくればと思います。乱文ご容赦を。
クラウドでコスト削減は、まさにマーケのお決まりメッセージですが、もうすこし具体的に考えられないかなと思い、TCO評価でお試し思考をしてみました。
ITコスト全体の代表指標が、総所有コストのTCO(Total Cost of Ownership)ですが、もともとはガートナーが90年代に言い出したもののようです。要は見えないコストなども含めてコストを時間軸も捕らえて把握しようという訳です。で、その具体的な内訳というとシンプルに定まったものがみつからないので、ガートナーのレポートなどから引っ張ってきました。
① ハードウェア/ソフトウェアの購入と保守
② システム運用・管理
③ ユーザーサポート
④ 開発
⑤ ネットワークなど共通インフラ
⑥ ユーザーのピア/セルフサポートと開発
⑦ ダウンタイム
①から⑤までが直接的な費用で、⑥と⑦は間接的な費用といえます。で、これをベースに今までのシステムが、どのくらいそれぞれの項目がかかっているかの、データの例を探してみました。アプリケーションによっても違うし、なかなか定まったものはないですが、企業全体では、とても大雑把にですが、⑥が3割前後、①が2割前後、②と③が1割前後、その他は1割以下というのが、業界などで多少の違いはあるものの、ひとつの傾向のようです。
クラウドでどうこれを減らせるか。例えばSaaSでは、①も②も④もすべてユーザー数かなにかのサブスクリプションになるわけで、少なくなりそうです。あとはアプリの使い勝手がよければ、③と⑥でしょうか。いずれにしてもSaaSは、TCOの多くの項目に影響を与えそうで、効果の検討のしがいがあるでしょう。
パブリックのPaaSやIaaSはでうでしょう。①と②が同様にサブスクリプションになって、計3割を超えるところだけに、効果を期待したいところです。あとはPaaSでは④がどう変わるのかと、開発の変化に検討が必要でしょう。
そしてプライベート・クラウドのPaaSやIaaSですが、①は自前ですから、標準化や自動化で②がどのように効果がでるかがやはり中心になりそうです。上のデータからすると1割前後ですので、きっちり標準化、自動化の効果を出さないといけなそうです。もちろんその標準化と自動化が広く他の項目にどの程度影響を与えるか、例えば標準化によりハードウェアとソフトウェアの調達にもメリットがでるとか、などの評価も必要でしょう。
実際TCO評価をするには、クラウド化を検討しているアプリケーションでのTCOのモデルをまずは作ってみて、利用するクラウドの形態でそれぞれの項目を評価していくのが正攻法でしょうか。一つすぐ気がつくのは、今までTCO評価で集めなければならなかったコストが、パブリックのクラウドでは一気にサブスクリプションという明確な数字になりTCO評価が少し楽になるところはクラウドらしさでしょうか。
あとはコスト、コストと考えると、忘れがちになるのが効果のほうでしょう。同じコストでもどれだけクラウドでメリットが出てくるのか、スピードや品質の変化の評価、そして究極的にはそのアプリでのROI(Return of Investment)など付加価値がどう出てくるかの視点も忘れてはならないポイントでしょう。

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