企業ITもクラウド的な世界に向かい始めた今日この頃を徒然に‥

「今日ちょっといい機能増えたね」と言える日常の企業システムへ

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インターネットのWebサイトで、知らないうちに画面のデザインが変わったり、新しい機能が追加されたりするのは、もはや日常になりました。スマートフォンのアプリもバグの修正はもちろん、機能アップも、一般ユーザーがある程度意識してバージョンアップするにせよ、頻繁に行われています。むしろ、デザインの変わらないWebサイト、バージョンアップしないアプリなどは、改善されない、進化しないものとして、敬遠される風潮もあります。そして、例えば一年前のWebサイトやスマートフォンのアプリなどを振り返ってみると、何か古臭く、そんな機能だけで使っていたんだとと思えることさえあります。Webサイト、アプリは日常として変化し、進化し、そして一般のユーザーに受け入れられていきます。

消費者である一般のユーザーは、これらの日常の変化や進化をどう学んでいるでしょう。新しい機能の説明をヘルプで探したり、問い合わせてみる、といった人はほとんど少数派かと思います。変化したこと、追加されたものに出会って、時に不安をもったとしても、どんなものか興味をもって試したり、場合によっては周りの人にでも聞いて、使ってみてそれを学んでいきます。小さな日常的で偶然な学びがその実態ではないでしょうか。

考えてみればユーザーである人間はリアルの世界でも、それぞれ周りの変化に日々対応しています。例えば、いつも必要な買い物をしていた店が閉まったら別の店を近くで探し、通っている道沿いに新しいお店ができれば、ちょっと寄ってみて興味を引けば立ち寄るようになります。一方、まったく新しい街に行った時は、さすがに右も左も分からないので、地図やガイドブックを買って、下調べの勉強をしてから訪れたりします。小さな変化は多少の不便があっても許容して代替策を考え、新しいものには好奇心を示して小さな冒険をします。そして大きな冒険には十分な下調べと計画を立てたりと時間をかけます。小さな日常的な学びと、時間をかけた計画的な学びの二つがあると言えます。

Webサイトやアプリは、まさにこのような人間の特性をうまく生かして、修正や進化を盛り込んでいっているのかもしれません。もう進化があまりないと思えるメールのクラウドサービスでさえ、ちょっとした機能改善が行われ、ときに実験的な機能もクラウドでは試され、中にはベータで終わるものもありますが、支持が得られると新しい正式な機能として取り込まれていきます。クラウドはいつでも更新できるという提供形態のメリットを使って、変化や進化を自然と実現できていると言えるでしょう。そしてそれを差別化要因にしてより多くのユーザーの支持を得て広がっていきます。一方、変化や進化のないクラウドサービスは、ユーザーから飽きられたり、離れられたりしていく傾向にあるのも現実です。

さて企業システムに目を向けましょう。クライアント・サーバー時代、オンプレミスWeb時代の技術的制約、かつウォーターフォールでの開発展開の枠組みから、変化や進化を頻繁に行うようなシステムは作りにくかったことは事実です。一方、世の中の変化のスピードは企業の多くの業務プロセスにも、それに伴う変化とスピードを求めています。そしてそれらの業務プロセスを具現化している業務アプリも、その変化とスピードへの追随を求められています。その変化には、基本的な機能は変わらないものの、ちょっとした業務スピードや質をあげるための改善から、根本的な再構築まであるでしょう。今までは、不具合でもない限り、修正や変更はできるだけまとめて、できれば数年に一回のシステム更改で再構築とともにまとめてやるのがIT部門のとりやすいアプローチでした。ただし、ユーザーの業務アプリの学習という観点では、一どきの大幅な変更の結果として、時間をかけた計画的で大々的な学習となり、学習のためのコストも大きく、ユーザー自身の小さな日常的な学習に頼ることはできなくなります。

ユーザーや業務のニーズに沿った漸進的な改善はクラウドでのSaaSやPaaSでのカストマイゼーション、さらにアジャイル的な開発展開で技術的なハードルは低くなってきました。そうなると、ユーザーの変更や新機能への学習についても、一般むけのクラウドサービスやアプリと同じアプローチで、小さな日常的な学びを積極的に促すことが必要になってくると思います。企業のユーザーと消費者としてのユーザーが同じ人であることから、ユーザーの前向きな姿勢と好奇心を引き出す工夫で、その学習コストはうまく日常に吸収されていくことと思われます。逆に考えれば、企業システムを長いあいだ変化させず塩漬けにすることが、ユーザーの前向きな姿勢と柔軟な能力を封じ込める可能性もあるかもしれません。

あるユーザーがメールシステムを、クライアント・サーバーからクラウドサービスに切り替えたときのことを話してくれました。多少はユーザーに学習の機会を設けたものの、切り替えた当初は、その使い勝手の大きな変化に、毎日、情報システム部門への問い合わせの電話がひっきりなしに絶えなかったとのことです。しかし3カ月もすると、そんな問い合わせはパタリとおさまり、その後は自然と使われているそうです。もちろんクラウドサービスですから時々変更はされています。このユーザー企業にとってメールサービスはクラウドによって小さな日常的な学びの世界で進化しているわけです。

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