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企業ITもクラウド的な世界に向かい始めた今日この頃を徒然に‥

クラウド、すべては変化に対応し進化するため

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パブリック・クラウドの会社に入ってもう2年以上が経ちました。IT屋としてはメインフレームから始めて、クライアント/サーバー、Webの流れに乗って(のまれながら)なんとかここまでたどり着きました。以前には、俗にいうプライベートクラウドなるものも手掛けていました。ただ、その時の気持ちは、「25年前にやった仮想マシンの再来」というといった感覚でした。では現在、パブリック・クラウドを日々、扱う立場になり、以前のプライベート・クラウドからの延長線上で、もう一歩踏み出した感覚かというと実はまったく別な世界に来たように感じています。そしてそこでのキーワードは、「すべては変化に対応し進化するため」という言葉に集約されると思っています。

では、そもそも、変化や進化するシステムが何故、必要なんでしょうか。新しいITで言えば、例えば先月、B2Cで大きな影響が始まったFacebookの日本での月間ログインユーザー数がここ一年で3倍の1000万人になりました。また昨年度、日本の携帯電話の出荷台数のうちスマートフォンが55%を占め前年比2.7倍となりました。ITから影響を受けたビジネスの例として、日本の音楽業界のCD生産金額は、2000年には5000億以上あったものが、2010年には2200億までに減っています。そして経済環境では、為替レートが5年で40%も変化する時代です。一方、技術的リスクの面では毎年新しいセキュリティーの脅威が発見され、マルウェアは2008年からの一年間で2倍に増加したというデータもあります。この手の話はここ10年、枚挙にいとまがなく、インターネットやグローバリゼーションが、殆どの産業で構造的な変化を引き起こし、新しいリスクが生まれ続けていると皆さんも感じているかと思います。ある人はこれを「私たちは今、指数関数的な世界に生きている」と表現しています。

指数関数的に変化する市場に企業が対応するには、その戦略、プロセス、やり方などの多くを変えざるを得ません。そして、企業ITシステム自身はそれに対応する、もしくはそれを先導する。そんな役割を求められているのが今、起きていることだと思います。以前のように、5年そのまま使えるシステムを、新しい機能や変更は2年後のバージョンアップで、新しいプロセスのIT化は来年度に検討をして再来年に、と言える分野がどれくらい残っているでしょうか。パブリック・クラウドの登場と成長は、まさにこれらの背景があるからこそと思っています。

パブリック・クラウドでは、みなさんがGoogleなどで日々経験しているように、どんどん変化し、進化していきます。企業むけのアプリケーション機能もインフラ機能も一年もすると大きく変化、そして進化します。またその上で、多様なアプリケーションを短期間で開発することも求められます。確かに技術もかなりのスピードで進化していて、それを取り込むための変化もあります。ただ、多くの技術が、アプリ開発を早め、新しく急増するデバイスに対応し、インターネットで普及し始めている標準を取り込み、そして新しい脅威に対応するのをみると、やはり全ては指数関数的に変化する市場に対応するためと言えなくありません。

SaaS、PaaS、IaaSといったクラウドの種類によって変化の質の違いはあるでしょう。ビジネスの変化を担うSaaS、開発の迅速化に貢献するPaaS、そして技術、脅威、そしてリソースの変化に対応するIaaS。その担う観点は違うものの、ユーザーから見て透過的に変化し進化するということについては同じと思えてきます。

プライベート・クラウドをやっていたときは、私はこういった感覚は持ちませんでした。プライベート・クラウドでも規模の経済が効く大きなインフラを持って、一流の各分野のエンジニアを雇い、各分野の最先端を随時、取り入れればいいのかもしれません。Amazonでさえ当初はプライベート・クラウドみたいなもので、その後アプリのAPIを開放し、パブリックのSaaS的になり、さらにインフラを開放しパブリックのIaaSとなり、今では新しいインフラサービスを追加することでPaaS的にもなってきています。プライベート・クラウドのアイデアはインフラの全体最適の追求、負荷の変化への対応という視点はありますが、そのインフラを継続的に変化させ進化させるという視点が希薄です。やはり今までのシステムのように、5年は使えるように、2年や3年といったタイミングでの大幅なバージョンアップという考え方になるでしょう。

規模の経済を常に追い、常に変化や進化させるコストを十分吸収でき、それを支える技術者と体制を持ち続ける。やはりそれはパブリック・クラウドのベンダー、ないしはコアビジネスとしてネットワークのサービスを提供しているような企業、または巨大なプライベート・クラウドを持てる巨大企業でしか実現できないもののように思えます。

プライベート・クラウド屋からパブリック・クラウド屋になって2年。今の心境を大変久しぶりにブログにしてみました。ここ2年近くサボっていたブログも、これから定期的につづっていきたいと思います。

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