人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

セミナーあるある④ 質問のフリをした大演説。

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もう15年くらい前の出来事なのだが、あるイベントに招かれ、パネルディスカッションのパネラーとして檀上にいた時のことだ。

対人コミュニケーションとか子育て、人育てのようなテーマで、パネラーがそれぞれの職種や経験に基づいてお話しし、モデレータが全体をまとめ、最後の最後に「会場からも質問を受けてみましょう。どなたかご質問はありますか?」と会場に問いかけた。

客席が階段状になっている大きなセミナー会場で、聴き手は優に300人はいたように記憶している。

その客席のど真ん中あたりで一人の女性が手を挙げた。

スタッフが小走りに近づき、マイクを渡す。

どのパネラーに向けられた質問かもわからないので、私もペンを手にする。メモをとろうと思ったからだ。

彼女は、こんな風に切り出した。

「本日は大変役立つお話をありがとうございました。

私、大学生の娘がおりまして、子育てでは娘が中学生の頃は、大変でした。

また、義母と一緒に暮らしていて、慣れない同居生活、生活習慣も異なりますし、私、結婚当時は仕事はしておりませんでしたが、その姑との生活も苦労いたしました。
・・・略・・・
そんな中で、●●先生(段上の一人)のご本に出会い、その本を読んだことで、目の前がぱーっと広がるような気がいたしまして、姑を見送り、娘も高校生になった頃からだんだんと私にも時間の余裕が生まれるようになりました。

思い切って仕事をしようと思い、勉強し、●●の仕事に就くことが出来て、・・・」


このあたりで既に4-5分は経過していて、『いつになったら質問が出てくるのかな。ここまでの話に関係あるんだろうな』とイラチな私は、多少イライラしてきたのだが、他のパネラーは、ふんふんと笑顔で頷いて聴いているではないか。

『そうか、ここは大人になって、ちゃんと聴かねば』と再びペンを持って、彼女の話のキーワードと思えることだけメモをしつづけた。

・・そこから、家族のこと、仕事のことをさらに5分ほど話して、

『もうそろそろ質問が出てくるだろうな』

と期待しながら顔を上げると、彼女は、

「ということで、本日は、私の人生を変えてくれた本をお書きになった先生を始めとして、沢山の先生方から大変素晴らしいお話をお聞かせいただき、本当に来てよかったと思いました。心よりお礼を申し上げます。ありがとうございました。」

そういって着席したのだった。

『えーーーーーーーーーーーーーーーっ!?質問じゃないの?質問はないの?』

私は、心底驚き、隣に並ぶ他のパネラーの反応を横目でちらちらと確認したのだが、なんと、他のパネラーはイライラした風も見せず、司会者も「素敵なコメントありがとうございます」と言い、困った顔もしていない。

結局、これで時間が来てしまい、他の質問を受けることもなく、このパネルの時間は終了した。

彼女は、300人を前に自分の人生の歴史を開陳し、謝辞を述べた。それでいったい何がしたかったのだろう?と不思議で仕方ない。

しかし、こういう例、よくあるのではないだろうか?

「質問は?」といって手を挙げ、マイクを握った人が語る内容は、ここまで大演説でなくても、「質問のカタチを借りた自説開陳」とか「質問のふりして大演説」とか。時に「自慢」とか。「自社の宣伝」とか。

いやはや100人以上が集まるセミナーで質疑応答というのは難しい。

うまくいくのは、たいていの場合、「紙に書いてもらって、代表的な質問に答える」形式だ。(最近では、スマホなどから投稿してもらった内容を司会者などが選択した上で画面に投影し、回答するというスタイルもたまに見かけるようになった)


とにかく、一旦質問を集約した上で回答したほうが、多くの人にとって役立つ情報共有ができることだろう。

自説開陳タイプ。恐るべし、と今でも思い出深い出来事である。

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検索したら、こんな本が出てきた・・・。

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