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YouTubeがターゲットをお茶の間にシフト - 超高解像度対応やコンテンツ開発支援を矢継ぎ早に発表

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PC動画で圧倒的なシェアを持つYouTubeが,そのターゲットをお茶の間や携帯にシフトしはじめた。

この2日ほどの間に,YouTubeが多くの新しい取り組みを矢継ぎ早にスタートした。Google TVを核とするテレビへの展開を睨んだものが3件,スマートフォンへの展開が1件,そのいずれも大いなる野望を秘めたものだ。順にレポートしたい。

Googletv


 
■ テレビ用インターフェース 「Leanback」


Leanbackとはソファーなどにゆったり座るという意味。つまりお茶の間でリモコンだけで操作できるYouTubeインターフェースだ。Leanbackの発表は5月20日だったが,そのβ版が実際に画面で閲覧できるようになったのだ。

・ YouTube Leanback  http://www.youtube.com/leanback

実際に画面を操作してみてほしい。上下左右の矢印キーとエンターだけで,テレビのような感覚で動画コンテンツを楽しむことができる。上下キーを操作すると,上から,(1)ビデオ検索窓,(2)ビデオ操作パネル,(3)ビデオ選択ゾーン,(4)ビデオ・チャンネル と機能がシフトしていく。

リモコンだけで操作できること,ビデオ・チャンネルとしてコメディ,ニュース,エンターテインメント,音楽などが用意されていること,ひとつのビデオが終わると切れ目なく次のビデオ再生に移るため流し見ができることなど,明らかにテレビ型視聴を前提とした設計になっている点が注目される。

 

■ 超高解像度,4K Resolution (4096×3072)に対応

従来の1080p(1920×1080)を大きく上回る4K Resolutionへの対応が発表され,すでにいくつかサンプル・ビデオも公開されている。


画面右下の解像度を「original」と設定すると4K Resolutionになり,ここを切り替えることで解像度の違いを体感できる。(組み込み動画では4K Resolutionは選択できず,YouTubeサイトに移動してから4Kに設定する必要があるようだ)。ただし十分なマシンパワーや通信速度が必要な他,ディスプレイの解像度も4Kに対応していないと違いがわかりにくい。

これも次世代ハイビジョンを睨んだ動きであり,早期に対応した目的は,高品質なビデオを制作できるパートナー企業と関係を深めたい狙いがありそうだ。

 
 
■ 高品質ビデオ制作パートナー向け補助金制度を発表


超高解像度対応とともに発表されたのが,高品質なビデオ制作パートナーを対象として,補助金(といってもレベニューシェアの条項があるようだ)を提供する制度で,投資総額は5百万ドル(4.5億円)としている。

・ YouTube Partner Grant Program  YouTube Announces Partner Grant Program

一定の基準をクリアしたことをYouTubeに認定されると,この補助金が提供される。使い道として期待しているのは,先の高解像度ビデオを制作するための4Kビデオカメラ,RED(記事,従来1000万円程度かかっていた撮影機器コストを200万円以下にできるとして注目を集めているビデオカメラ)や制作コストだ。Googleの狙いは高解像度コンテンツを作成できる優秀な人材を専属パートナー化することで,ライバルであるAppleへの差別化手段とすることだろう。
 
 
■ HTML5を駆使した高機能モバイルサイトに刷新

そしてもうひとつ,インパクトの大きいニュースが,HTML5による新モバイルサイト m.youtube.com (iPhoneないしAndroidで見てほしい)を発表したことだ。Googleの狙いはiPhoneネイティブ・アプリを上回るサイトを登場させ,悪名高いAppleのアプリ束縛から解放されることだ。

Newyoutube

ウェブアプリにもかかわらずHTML5で開発されているため使い勝手はネイティブアプリと同等で,しかもビデオ・クオリティはアプリ版を遥かに凌ぐというもの。これによってGoogleは,Appleの許可を得ることなく,iPhone上で自由に機能拡張できるようになった。しかも課金やコマースに対してもフリーハンドを手にしたことになり,戦略的意義は極めても大きい。

【参考記事】
HTML5のインパクト ~ それを巡るAppleとGoogleの呉越同舟 (2/8) 

 

これらはすべてAppleとのスマートフォン戦争,続くお茶の間戦争に備えたものだ。

全世界のPC普及台数は10億台だが,テレビは30億台,携帯電話にいたっては50億台だ。またテレビは放送デジタル化や3D対応などで大規模な買い替え需要が予想されているし,携帯電話もスマートフォンへのリプレースがすすむことは間違いない。この点は次の記事に詳しく書いたので参考にしてほしい。

【参考記事】
テレビとウェブの最適融合 ~ Google TVのインパクトと市場予測 (5/21) 
 
 
 

【Google関連】
2010年11月,Google MusicがAndroid3.0と同時に登場か? (7/3) 
Facebookキラー「Google Me」がまもなくローンチ? (6/28) 
テレビとウェブの最適融合 ~ Google TVのインパクトと市場予測 (5/21) 
Google,3DデスクトップベンチャーBumpTop買収。モバイルUIでApple対抗か (5/3) 
「印刷はクラウドにおまかせ」,GoogleがCloud Print構想を発表 (4/17) 
Google1650円,Facebook280円,GREE1985円 ~ メガサイトは訪問者あたりいくら稼ぐ? (3/19) 
Googleは20%ルールによってイノベーションのジレンマを回避している (12/21) 
 


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