テレビとウェブの最適融合 ~ Google TVのインパクトと市場予測
Googleとソニーが,ネットTVやタブレットPC,携帯電話など,広範囲なネット端末分野における業務提携を発表した。日経記事による発表の主旨は以下の通りだ。
- インターネット対応の新型テレビを共同開発し,今年秋から米国で販売。日本など他の地域にも順次投入する。CPUにはインテルMPUを搭載する
- 米国アップルの新端末「iPad」に対抗する新製品などの共同開発も検討する
- Googleの技術を活用し,テレビやPC,ゲーム機などをネットワークで結ぶ新サービスを共同開発する
テレビやPC,ゲーム機を結ぶ新サービスの例として,ビデオカメラで撮った映像をGoogleが提供するクラウドサイドに送り,ネットTVで視聴するなど,様々なネット端末を結ぶ大規模なクラウド型サービスを指しているようだ。
さらにGoogleはBlu-rayプレーヤーやセットトップボックスにもGoogle TVを組み込む予定で,米国最大の家電量販店Best Buyなどを通じて,2010年秋から販売を開始するとのことだ。
■ Google I/O 2010で発表されたGoogle TV
この記事の元になっているのは,米国5月20日午前に行われた開発者向けイベント「Google I/O 2010」2日目のキーノート・スピーチ。そこでAndroid2.2とともに目玉として発表されたのがGoogle TVであり,GoogleCEOエリック・シュミット氏やSonyCEOハワード・ストリンガー氏等が登壇し,新しいインターネットTVの時代を熱く語った。
そのポイントは次のような内容だ。(参考記事: GAPSIS.JP 「Google I/O 2010」キーノート速報)
- テレビ市場は極めて大きい。テレビは全世界で40億人が閲覧する最大市場の持つ端末である
- これからのエンターテインメントはウェブからやってくる。ウェブとテレビを最適融合したのがGoogle TVだ
- Google TVはデバイスに最適化されたコントローラによりウェブを閲覧する感覚で利用できる
- Googleの検索機能により,番組表,ウェブ,Androidアプリがすべて検索で,TV,ウェブ,アプリがコンテンツとしてリストアップされる。ウェブ動画もテレビを見るような感覚で視聴できる
- TVとブラウザ画面の同時閲覧やブックマーク機能(番組もマーク可),写真ビューアもある。当然Facebookゲーム,ショッピングなどウェブが普通に使える他,NetFlix(オンラインDVDレンタル)のユーザー別おすすめ動画機能まで装備されている
- Google TVハードウェアの特徴は,インテルMPU,ブロードバンドネットワーク,HDMI。入力方法はキーボード,ポインティングデバイス,音声入力。Wi-Fi接続されたAndroidフォンからのリモコン機能もある
- Google TVのOSはAndroid 2.1(アップデート可能),ブラウザはGoogle Chrome,Flash Player10.1も入っており,Androidアプリも利用,購入とも可能だ
- 発売は2010年秋だが,SDK提供は2011年初頭,オープンソース化は2011年夏の予定
当日のデモで公開された画面をいくつか掲載しておきたい。
【番組,ウェブ,アプリ等を検索できる】
【さまざまなウェブが,テレビ・チャンネルのように閲覧できる】
【カテゴリーなとでコンテンツが分類されている】
またGoogleから発表されたGoogle TV動画もあわせて紹介しておこう。
■ 多様化するインターネット端末におけるGoogle TVの位置づけ
2009年12月に発表されたモルガンスタンレー社「Mobile Internet Report」では,多様化するインターネット端末を,無線ハンディ端末(WPD: Wireless Pocketable Devices),ポータブル端末(PID: Portable Internet Devices),据え置き型機器(SIT: Satationary Internet Terminals)の3通りに分類して,その普及予測などを分析している。
【出所: Morgan Stanley】
- WPD (Wireless Pocketable Devices) - グラフでは青色系
24時間30センチ以内,常にポケットに入れられるサイズの携帯端末。スマートフォン,ポータブルWiFi機(NintendoDSやSonyPSP,iPodTouch等),3G対応多機能携帯電話が含まれる。
- PID (Portable Internet Devcies) - グラフでは緑色系
持ち運び可能だが相応のサイズがあるため常に常備するわけではないデジタル機器。ノートPC,ネットブック,iPadやKindleがリードするタブレットが含まれる。
- SIT (Statinary Internet Terminal) - グラフではピンク色系
据置タイプの機器。専用ゲーム機,インターネットテレビ等の家電機器が含まれる。
そしてこのデバイス群において,IT業界の三大勢力であるMicrosoft,Google,Appleがどのような製品群を投入しているかを図式化したのが下記表だ。
なお,それぞれの端末では,上図のようなシステム構成として図示してある。
この図内で,Net-TVの分野で唯一あらわれたのが今回発表された「Google TV」の位置づけだ。
今まで,新分野へのキラー端末の投入を担っていたのは,iPhone,iPadと成功させたAppleであり,それをGoogleソニー連合軍が先鞭をうった事実は大きいと言えよう。
そしてもう一つ,この図を見てわかるとおり,SIT-PID-WPD とすべての分野に進出したOSはAndroidがはじめてである点だ。今後は個々の機器が,機器間のネットワーク連携をとる方向に進化していくことはまちがいなく,その緊密な結合を実現するという点でAndroidは一歩先んじた存在となった。
なお,これらのインターネット端末の2009年から2013年までのモルガンスタンレーによる出荷予測(単位:百万台)は次の通りだ。
この中では,「Google TV」が分類される「ネットTV等家電」の出荷台数はかなり保守的に見積もられており,2010年で年間900万台,2013年で年間1500万台程度と予測されている。
ただし,全世界のPC普及台数はすでに10億台を超え,テレビにいたっては30億台を超えると言われており,また放送のデジタル化,3D映像の普及などで今後大規模なテレビ買替えが予測される。(参考記事: 世界のテレビ市場展望 2010年は市場拡大のチャンス)
今回の提携が家電業界の刺激になることは確実であり,ネットTVが買い替え需要の波に乗れぱ,モルガンスタンレー予測を大きく超える台数に成長する可能性も否めない。今後も引き続き注目していきたい。
【参考記事】
・ Google,3DデスクトップベンチャーBumpTop買収。モバイルUIでApple対抗か (5/3)
・ 国内外スマートフォンの最新動向を総まとめ - iPhone vs Android の先に見えるもの (4/26)
・ 「印刷はクラウドにおまかせ」,GoogleがCloud Print構想を発表 (4/17)
・ HTML5のインパクト ~ それを巡るAppleとGoogleの呉越同舟 (2/8)
・ Google vs Apple vs Microsoft ~ ひと目でわかるモバイルOS戦争の構図 (1/3)
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