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Groupon CEO,創業から今後の戦略までを語る - インタビュー記事要約

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絶好調のベンチャー,Groupon記事を先日ブログ化したところ,大変な反響をいただいた。

創業2年で売上300億円超,利益40億円超。ソーシャルコマース"Groupon" 成功の秘密 (5/6) 

この記事の翌日,VentrueBeatに,Grouponの共同創業者で,かつ現CEOのAndrew Mason氏のロングインタビューBeing in a band made my business rock ~ バンドにいたことで,私のビジネスがロックした) が掲載された。当記事ではその記事を参考にして,興味深いポイントの要約を試みた。ただしより真意を正確に把握するためには,原記事をぜひ一読いただければと思う。

 
Groupon創業者であるAndrew Mason氏は,典型的なIT系CEOとはだいぶスタイルが異なるようだ。つまりMBAやコンピュータサイエンスとは無関係で,たまたまソフトウェア開発に出会ったミュージシャンなのだ。

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【出所: Venture Beat】

彼が最初に立ち上げたのはThePointと呼ばれる共同アクションサイトだ。名著 “Tipping Point”の影響を受けたとのことで,共通の関心を持つ人々(それにお金や時間をかける人々)に情報共有や共同アクションの場を提供することを目的としたものだ。

ただしThePointの運営はうまくいかず,約一年半の紆余曲折を経てGrouponを開始したところ大成功,先月もDigital Sky Technologies等から1.35億ドルにものぼる資金調達に成功している。

 

■ どのようにしてビジネスモデルをThePointからGrouponへシフトさせたのか?

ThePointの経営はうまくいかなかったが,その過程でThePointに適用可能なアイディアが浮かんだようで,その一つが共同購入とのこと。ただし共同購入サービスはすでに(米国で)いくつかのベンチャーが失敗しており,開始するにあたって過去の失敗要因を分析した。

典型的なのがMercata(CNET: サービス停止記事)だ。第一の問題は価格を下げるための十分な集客に1週間以上かかるという点だ。これでは顧客の衝動的な購買行為をうながすことは困難だろう。

もう1つの問題は,仮に価格を下げるための十分な集客ができたとしても,WalmartやAmazonを上回るディカウント価格をオファーすることは困難だという点だ。これらの会社はバイヤーとして極めて強力なパワーがあるのに対して,Mercataが対象としていた消費財サイトはあまりに小規模で,価格競争力がなかったのだ。

そこでGrouponでは地域密着型サービスに限定した着目した。このようなサービスはこれまで米国になかったこと,そしてこのサービスが地元企業にもたらすメリットはインセンティブとして十分だった。例えばレストランは,顧客が何人くるかに関係なく毎日食材を購入しなければならないからだ。

さらにこのサービスは大特価をオファーするメカニズムを備えつつ,Daily CandyやThrillist(米国のローカルオンライン情報誌)のようなシティー・ガイドとして機能していると気づいた。自分の住む町の何が興味深く,面白いのかということを,住人が意識してもらうヘルプになったのだ。

 

■ ビジネス・スケールをマネージするのに大切にしていることは何か?

彼にとって最も大切なことは,この会社が1年後も今と同じぐらいクールで楽しいことだ。

この「楽しい文化をうむ人々」に適切な権力を与えることにより,楽しい環境を維持するという。例えばGroupon社マネージング・ディレクターは元バンド仲間とのことだが,彼は前職まで数名のマネジメント経験しかなかった。ただし彼が選ばれたのは「私たちのする全ての事が楽しくなければならない」という信念があるからだ。

Mason氏はそのような共通の信念が反映するブランドを築くことを目標としている。彼に言わせると「私たちは風変わり(Weird)になることを恐れてはならない」とのことだ。ただし風変わりが必要条件であるということではなく,自然体が重要ということだ。私たちの大半が風変わりなのは自然なことであり,逆にそうでなくても全く問題ないとのことだ。

相当風変わりなCEOであることは間違いないだろう。

  

■ 10億ドル以上の価値を持つ企業を経営するのに,ミュージシャンであったことが教えてくれたことは何か?

彼は自分自身が経営に長けているかどうかわからないとしながら,バンドマンの経験が不屈の信念を持つことを教えてくれたとしている。「自分が正しいと思うことにこだわりは持つ心」だ。

彼はこれが会社のコア文化であり,社員全員,社会の触媒の働きをする人間だと考えている。共同購入クーポン(Groupon)を購入すると,新しい経験ができる。Grouponではこうした顧客体験をイベント,ツイートや写真を共有することでさらに促進するつもりのようだ。

また彼らは(ローカルサービスの提供元も含む)スモール・ビジネスを利用するエンドユーザにとって最適な情報ソースになりたいという志も持っているようだ。

 

■ Mob.ly買収でやりたいことは何か?

Grouponは2010年5月にモバイルベンチャーMob.lyを買収(TechCrunch: 買収記事)した。Mob.lyはモバイルプラットフォーム分野において多岐にわたる開発経験を持ち,多様なモバイルアプリを手がけてきた会社だ。

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【出所: TechCrunch】

例えばGroupon Wallet(財布)のモバイルアプリがあれば,その場で有効なクーポンだけを自動的に使えるようになる。(ただし位置情報を利用して近所のクーポンディールを知らせるといった昨日については「お知らせできるような内容はない」と返答しなかった)このようなモバイルアプリを今後積極的に開発していくための買収のようだ。

 

■ 十分な資金があり,利益も出ているのに,なぜ最近も大型出資を受けたのか?

Mason氏は素晴らしいプロダクトを作り上げることにのみもっぱらフォーカスしており,これまでの投資ラウンドで初期の創業者による投資引き上げはほとんどないとのこと。
 
興味深いのは,彼がお金を動機ではなく 「バイナリー(オンかオフ)の問題」 として捉えているとの発言だ。つまり十分にあるかないかということだ。

IPO(株式公開)の可能性については明言していないが,現時点で十分に採算がとれており,資金も潤沢だとのこと。ただしグローバルなEコマース企業に成長させる可能性についても触れており,その際の選択肢としてIPOについても柔軟に考えているようだ。

 

以上のインタビュー内容を読む限り,彼は自由や楽しさをかなり重視しており,ザッポスにも通じる経営思想が感じられた。また「商品」よりも「体験」を提供することへのこだわりも同様だ。

モバイルアプリやリワードポイントを導入し,さらになる発展を目指しているとのこと,今後のGrouponの進化に期待したい。
 
 

【翻訳協力】
当記事は,刈谷花子さん(LinkedInプロフィール)に翻訳等でご協力いただいています。
 
 

【参考記事】
創業2年で売上300億円超,利益40億円超。ソーシャルコマース"Groupon" 成功の秘密 (5/6) 
米国ザッポス「顧客にWOW!をお届けする」奇跡の経営,その本質を探る (12/5) 

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