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ループスのB2Bフリーミアム・モデル ~ 自社ソーシャルメディア活用とその効果を公開します

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ループスは,ソーシャルメディアのビジネス活用プロフェッショナルを標榜する会社です。

その推進にあたっては,紺屋の白袴にならぬよう,自ら率先してソーシャルメディアをフルに活用し,そこで得た知見やノウハウを広く公開することを心がけています。

ちょうど本日,おかげさまで当ブログ「in the looop」は一周年となりました。今回はノウハウ公開の一貫として,当社のソーシャルメディア活用と,そのビジネス効果について開示させていただきます。特に,当社と同じ,小規模のB2B企業にとっては参考になる点があるかと思います。
 
 
  
■ 2007-2008年 リスティング広告の効果が明らかに落ちてきた

当社は,2005年の創業以来,自社開発のSNSエンジンをコアコンピタンスとして,企業のブランドコミュニティ構築・運用を主業として営んできました。新規顧客開拓はSEO/SEM(Adwords/Overture)によるものがほとんどです。特に2006年はmixi上場にともないSNSがブームとなったため,企業のSNS構築もミニブームとなりました。SEO/SEMに月間100万円ほど広告投下することで,最大時で月80件ほどの問合せをいただく状況となっていました。

2007年に入るとSNSブームは落ち着きはじめ,SEO/SEMの広告効果にもかげりが見え始めてきました。現時点で記録として残っている2007年から2008年末までの広告効果は次の通りです。(主たるキーワードは「SNS」「SNS構築」など数百種類,SEMでは個々に異なる広告文を用意し,決め細かな対応をしていました)

  • 2007年: 
     ・月平均SEO/SEM広告費: 88.7万円
     ・月平均問合せ件数: 29件 
     ・問合せに対する広告単価: 3.1万円
     
  • 2008年
     ・月平均SEO/SEM広告費: 55.4万円
     ・月平均問合せ件数: 14件 
     ・問合せに対する広告単価: 3.9万円

問合せ件数は減少傾向が続き,同時に問合せに対する広告単価も上がってきました。特に問題なのは,量だけではなく,質の問題です。Adwords/Overtureに同一キーワードで掲載する競合他社が増加したため,受注確率が減少するとともに,競争過多で適正な粗利水準を維持できない相見積もり案件が増えてきたのです。

また期を同じくして,金融危機の影響もあり,当社は予定の資金調達を確保できない事態に陥りました。そのため,2008年11月には一部事業(iQube事業)をガイアックス社に売却するとともに,大幅な人員削減を余儀なくされました。

そのような背景もあいまって,我々は新生ループスとして大胆な経営方針の転換を計る必要性に迫られていました。

 

■ 2009年 広告はすべてストップ。ブログとツイッターをはじめる

2009年はビジネスモデルをすべて見直しました。SNSコミュニティ構築運用はコア事業とするものの,企業独自のコミュニティ構築にこだわることをやめ,企業のソーシャルメディア活用全般をご支援すること,そしてその成功確率を高めることを当社のミッションと定義し直しました。

同時に,我々の都合ではなく,あくまで顧客視点に立った提案をすることを社内で徹底しました。自社SNSエンジンのみならず,外部にあるすばらしいソリューションや技術情報に視野を広げ,それらを最適に組み合わせることで,システム構築にかかわるコストと期間を最小限に抑えることを構築方針として打ち出しました。

さらに新規顧客開拓手段としての広告はすべてストップしました。理由は当社が本質的に繋がりを持たせていただきたいと考えている「ソーシャルメディアに関心を持つアーリーアダプター」の方々には,リスティング広告ではリーチできないことに気がついたからです。彼等は有益な情報を自ら探し出す高度な探索能力を持っており,広告をクリックしない人たちなのです。

広告の代替として,私自身が自ら最新ソーシャルメディア情報を発信することにしました。それがこのブログ,in the looopです。アーリーアダプターの方々が,自ら探し出して,足を運んでくれるブログとすることが唯一の目標でした。

ブログをはじめたのはちょうど一年前,2009年4月1日ですが,当初は思い通りにアクセスが伸びずに悩みました。4月から8月までの5ヶ月間は月間ユニーク訪問者で1500人から2000人程度と低迷していましたが,9月以降,共著「Twitterマーケティング」の書籍にあわせる形で集中的にブログに励んだこと,ヒット記事に恵まれたことなどで読者が急速に増えはじめました。そして2009年12月には月間ユニーク訪問者で7万人を超えるまでになりました。

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【当ブログユニーク訪問者数とループスへの問合せ件数の推移】

 

■ ブログ,ツイッターとシンクロして,問合せ件数も急増した

ブログ訪問者急増の背景には,ツイッターの恩恵も大いにあります。私もご多分に漏れずツイッター・アカウントをしばらく放置しており,利用法を見出せないでいました。しかし2009年7月ごろ,ブログとツイッターの組み合わせは実に相性が良いことに気づき,ブログ内で積極的にアカウントを告知するとともに,関連したソーシャルメディア最新情報をツイートすることでフォロワーの方々への貢献を心がけました。

ビジネスパーソンにとって,ブログは専門性を,ツイッターは人間性をアピールする最高のセルフ・ブランティング・ツールであり,人脈開拓ツールだと思います。ブログとツイッターのおかけで,私はソーシャルメディアに興味を持つアーリーアダプターの方々と広く繋がることができました。数字化して大変恐縮ですが,ブログの3月ユニーク訪問者は8万人強,ツイッターのフォロワーも9000人を超えるまでになりました。

参考まで,私のブログ訪問者のアーリーアダプター率がどれほど多いかは,ブラウザ比率を見ていただければご理解いただけると思います。(トップはFirefoxで37%,最大シェアのIEは27%にとどまり,Chromeがなんと17%!です)

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【2010年2月のブラウザ比率】

 
 
結果的に,ブログ訪問者数に比例するようにループスへの問合せ件数が大幅に増加しました。この3月を例にとると,会社への新規お問合せが約20件で,ほぼ100%ブログを見ていただいている方です。また私のツイッターからのDMお問い合わせ(ビジネス関係の新規問い合わせのみをピックアップ)も約20件ほどありました。

これは一種のフリーミアム・モデル(無料サービスと有料プレミアムサービスの組み合わせによる新しいビジネスモデル)と呼べるのではないかと思います。名著「FREE」によると,B2Cフリーミアム・モデルだと有料顧客の適正比率は5-10%としていますが,B2Bフリーミアム・モデルの場合は顧客単価が高いので,遥かに少ない比率でも十分にビジネスとして成立します。

例えば3月は月間40件の問合せ,そのうち案件となる問合せを20件,受注確率を10%と仮定すると,ブログ訪問者からの新規受注件数は20件×10%で月間2件となります。当社の場合は顧客売上単価が平均500-1000万円ほどで,かつリピートでオーダーをいただく率も大変に高いので,この新規獲得件数でも十分にビジネスとして成立するのです。

参考まで,2009年以降,現在もSEO/SEM投資はほぼゼロ(月5000円未満)です。その他の告知手段は,やはりブログやツイッターから副次的に発生しているセミナーや講演,メディア記事のみです。
 
 
■ 他のB2Bビジネスへの応用について

ブログやツイッターのようなソーシャルメディア活用においては,ウッフィーと呼ばれる「貢献を通じて得られる社会からの信頼」が何より重要です。利益追求のみを目的として成功した事例はほとんどないと言っても過言ではありません。

はじめに貢献ありき。短期的貢献だけでなく,長期にわたる対話・貢献で蓄積されていく信頼関係が極めて大切です。トップセールスマンの多くは,商品の話より,まず顧客にプラスとなることを心がけ,信頼関係を構築します。その結果,人間として評価され,何かあれば声を掛けてもらえたり,お客様を紹介してもらえるようになります。

ソーシャルメディアはあくまでツールですが,そのパワフルなクチコミ効果により,集客や伝達にかかるコストがゼロに近づいてきました。結果として,マスメディアにおける影響力の源泉となっていた「お金」から,より人間関係で本質的な「ウッフィー,貢献に基づく信頼」にパワーがシフトしはじめているのだと思います。

そして,このフリーミアム・スタイルは,一般のB2B企業でも活用できるモデルだと思っています。例えば,米国納税申告代理サービスの「H&R Block社」は,ツイッターによる無料税務相談により顧客ベースを増やしています。ローテクなサービスでは,米国オンラインよろず修理屋である「OnlineHandyman」や米国DIYなんでも修理屋DIYAnswerGuy」が,それぞれツイッター無料修繕相談により顧客を着実に増やしています。

彼等は,名刺や多弁な自己紹介,会社パンフレット等よりも,ツイッターで読み取れる実績や利用者とのやり取りこそ,何より自らの仕事ぶりを雄弁に語ってくれることを知っています。そのために,速やかに収益に結びつかない要件でも積極的に関与し,貢献することを心がけているのです。

ポイントは,「自社のお客様はどのようなペルソナで,その方々と繋がるにはどのような貢献をすれば良いかを真剣に考え,それを真摯に実行すること」だと思います。必ずしもハイテクが必要なわけではなく,ツイッターひとつあれば十分なケースも多いように思います。
 
 
■ 今後は全社員のセルフ・ブランディングに広げたい

現在,当社では,全社員が専門分野を自己宣言し,私と同じようなアプローチで情報発信をはじめています。そして彼等は,その蓄積が履歴書や職歴書より遥かに雄弁なセルフ・ブランディングになることを理解しています。

Member

社内で徹底しているのは,安易なソーシャルメディアの活用は逆効果になるということ。自らの身元を明かし,嘘をつかないこと。ソーシャルメディアでのコミュニケーションを拒否せず,常に感謝の気持ちを持ちながら,問題が起きたときは迅速に対応するといった誠実な対話姿勢を社内文化にする事こそ最も肝要な点だと確信しています。

これらの成果として先日発表したのが Looops Trends です。まだアルファ版で実験的な域を出ていませんが,利用者の方々のソーシャルメディア活用に少しでもプラスになれば幸いと願っています。


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最新の筆者著書です。 『Twitterマーケティング 消費者との絆が深まるつぶやきのルール』

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