はてなぐらい有名にならないとオンラインサービスで食べていけないのか
「“株式会社はてな”は、どうやって儲けているのだろう?」ということを、1年以上前に自分で簡単に調べてみたことがあります。いくつかの手元の情報と、知人の話などを総合し、少し仮説を立ててちゃちゃっと計算してみただけだし、1年以上前のことなのでそれほど正確性が高いものではない、というお断りのうえで結論を書くと、はてなは収入の大部分を「はてなポイント」よりも「AdSense」から得ているようだ、と当時個人的に想像するに至りました。
さて、そのはてなの近藤社長は、社員を残してシリコンバレーへ行き、そこで人脈を作り、技術を学び、新サービスを開発する、ということを実現しようとしています。
近藤社長はアメリカに行くに当たり、「東京に来て社員が増え、いい会社と言ってもらえて、収益が出るようになって……。」とインタビューに答えています。約20人ほどの社員は、僕のおおまかな推測によれば、多くのAdSenseとやAmazonアフィリエイトと、はてなポイントの売り上げで十分にまかなえている、ということなのでしょう。
日本のソフトウェア企業で、自社ブランドのオンラインサービスを提供して食べていける会社は多くありません(はてなも、初期の苦しい頃は受託をしていたということをどこかで読みました)。
しかし、はてなのようにWeb 2.0の波に乗って「技術とアイデア」にフォーカスし、オンラインサービスの提供を本業にして食べていきたい、と考える会社、組織はたくさんあります。みんな、はてなぐらい有名にならないと食べていけないのでしょうか?
いまのところ、そうしたオンラインサービス企業が主に収入源として期待しているのがオンライン広告です。で、そうすると「技術とアイデアにフォーカス」した会社、つまり広告営業部隊を自社で持つことに積極的でないことを選択する会社は、広告収入の選択肢としてAdSenseかAmazonなどのアフィリエイトに依存するしかないのが現実です。
しかし収入の大部分をAdSenseとAmazonに依存する、というのはスタートアップとしてはよくても、成長戦略としては弱すぎるため、結局、自前で広告営業チームを持つことが、オンラインサービス企業が一定以上の規模に成長する必要条件となっています。少なくとも現在のところは(これは弊社のようなオンラインメディア企業も同じです)。
先日のエントリ「日本のオンラインメディアではまだ破壊的イノベーションが始まる条件は揃ってないかも」で、日本でも広告エージェントが登場することで、新たなオンラインメディアが登場してくる環境が揃ってくるはずだ、ということを書きました。しかし、それによって利益を得るのはメディアだけではないんですね。
もし、AdSense以外の選択肢としてオンラインサービスが気軽に利用できる広告エージェントが登場すれば、広告モデルで運用しようとしているオンラインサービスにとっても、成功のハードルを低くしてくれることでしょう。はてなほど有名にならなくても、オンラインサービスで食べていける可能性が高まるのではないでしょうか。
こうした広告エージェントとしてまず最初に僕が期待しているのはオーバーチュアやマイクロソフトなのです。が、彼らはいまのところ限られたパートナーとしか取引をしていないようで、AdSenseのように気軽にスタートアップしたばかりのオンラインサービスで利用することはかなわないようです。
ページビューで考えれば、オンラインサービスはオンラインメディア以上に今後急激に成長する分野です。なのにこの市場にチャレンジしようという広告代理店機能を持つ企業はでてこないのか、全部Google AdSenseに取られるのを、広告業界の人はみんなぼーっと見ているだけなのでしょうか。
ま、しかし栗原さんのブログによると、GoogleもAdSenseまわりは特許でがっちり固めて簡単には似た仕組みを作らせないようなので、それが気になります。