ホワイトカラーはみんなプログラマーになる仮説
月曜日に自分のブログで公開した記事「SIerとパッケージベンダはどちらが高給? IT系上場企業の平均給与を業種別にみてみた」は、スラッシュドットやはてなブックマークなどで取り上げてもらったおかげで、たくさんの人に読まれた記事になりました。現時点で約1万8000ページビューにもなりました。
さて、あの記事を書くに当たっていちばん手間がかかったのは、文章をまとめるところではなくて情報を集めるためにプログラムを書く部分でした。
というのも、記事で対象にした企業は載せなかったものも含めると全部で700社以上ありました。もしも情報収集をプログラムで自動化せず、マウスで1つ1つクリックして集めていたら、その作業だけで丸一日以上かかっていてもおかしくありません。情報収集をプログラムで自動化できなかったら記事を書くことはあきらめていたでしょう。
参考までに書くと、プログラミングとしてはwgetでWebページをまとめてダウンロードするためのバッチファイル1本と、ダウンロードしたHTML文書から情報を抜粋してCSVにするVBScriptのプログラムを1本書きました。プログラミングに費やした時間はデバッグなどを含めてもだいたい3~4時間程度です。
世の中のデータはどんどんデジタル化していますし、ビジネスの分野で見ても、多くのデータがネットに載るようになり、社内のコミュニケーションも顧客とのコミュニケーションもネットで行われていますから、プログラムで操作可能な情報は明らかに広がっているわけです。
これらのデータをなにか新しい付加価値を持った形で抽出、活用するためには、人と同じやり方ではなく、ツールをうまくカスタマイズして使ったり、独自のツールを編み出すことが重要な手段になっていくるかもしれません。
もちろん現在でも、多くの企業では経理の人が自分でExcelのマクロを組んで処理を行っていたり、営業も独自の処理方法を編み出して売上げを集計してたりしていますよね? メールの振り分け機能を使いこなしたり、グループウェアのワークフロー定義を書いたり、アプリケーションの画面をカスタマイズする人たち、すなわち仕事の一部がプログラマー化していたホワイトカラーはこれまでも数多くいたわけです。
これからはその流れがさらに強まるように思います。
例えば以前のエントリ「Google、Twitter、Yahoo Pipes、Netvibesを華麗に使いこなす英国政府」では、英国政府がデータマッシュアップを使って情報提供を行う事例を紹介しましたが、これは広い意味でコミュニケーションを上手にプログラミングした例ではないでしょうか。
企業内で使うビジネス向けのマッシュアップツールも登場しています。IBMはエンドユーザー向けのマッシュアップツール「IBM Mashup Center 」を発表、「Excelより簡単」と説明しています。
先日レビューしたSalesforce CRMでは、営業レポートを利用者自身が柔軟にカスタマイズする機能が搭載されており、利用者自身でさまざまな分析を行うことが可能でした。
いままでデータ統合やレポート作成は、基本的には本職のプログラマーに発注すべき仕事でしたが、それを現場のホワイトカラーが構築するための環境が整ってきているわけです。
こうしてホワイトカラーの仕事の一部は広い意味で「情報を処理するためのプログラムを書くこと(マッシュアップを構築することetc...)」にどんどん置き換わっていっても不思議ではありません。
だとしたら、どれだけ便利にプログラミングやマッシュアップを実現できるかで、情報収集能力や情報分析能力に差が出てくるのではないだろうか、まさにホワイトカラーもプログラミング能力で勝負する時代になろうとしているのではないだろうか。
とまあそんなことを、記事を書くためにプログラムを書く、という作業を通して僕は思ったのでした。
本エントリはBlog on Publickeyからの転載です。