英語脳と日本語脳だけじゃない、第三の脳
30年前に日本IBMに入社して最初に困ったのは、何をさておいても英語でした。
TOEIC475点だった22歳当時の私の英語力では、米国人が書いて話す英語はまったくチンプンカンプン。
今ふり返ると、英語を話したり書いたりする場合は、
日本語で考える →日本語の文章にする →逐次英語に訳す
としていたのですよね。
つまり「日本語脳」で考えていた訳です。
これは結構大変で、時間がかかりました。しかも日本脳で考えたロジックは、なかなか海外の人に伝わらないのです。
その後、こちらに書きましたように入社後の2年間で猛勉強して、TOEICは795点までアップ、なんとかカタコトの英語を話し、相手が言っていることを理解し、英語による最低限のメールのやり取りはできるようになりました。
この頃、英語でコミュニケーションする際は、
英語で考える →英語の文章にする
となっていたように思います。
それなりに「日本語脳」から「英語脳」に切り替えて考えられるようになり、ある程度の会話が成立するようになったのですね。
それから随分と時間が経ち、最近になって気がついたのは、今は「日本語脳」「英語脳」を意識しなくなっていると言うこと。
私の英語は相変わらず怪しいジャパニーズイングリッシュで、とてもネイティブとは言えません。正しい英語なのかどうかも、正直言って怪しいものです。
しかし、確実に相手に伝わるようになりました。
そして後で会話を思い出す際に、「あれは英語で話したっけ?日本語だったっけ?」と思い出せないこともあります。単に記憶が悪くなったということではなく、恐らく
【日本語の場合】
論理を組み立てて考える →日本語にする【英語の場合】
論理を組み立てて考える →英語にする
という感じに出来るようになったからなのかな、と思います。
「論理を組み立てるのなんて、当たり前じゃん」と思われるかもしれません。でも出来ていないケースがとても多いように思います。
本来ロジカルシンキングでは「事実(データ)、ロジック、主張」の3点が必要です。
しかし、事実もロジックもないのに主張だけをしているケースが多いですよね。
例えば「ダメなものは、何があってもダメなんです」というような主張です。
これは事実もロジックもありません。「感情的に考えている」のであって、「論理を組み立てて考えている」とは言えません。
日本人同士だと暗黙知を共有できているので、「そうだよなぁ」となんとなく納得した気になりますが、暗黙知を共有していない海外の人には通じません。
ロジックと主張だけのケースもあります。例えば「調査結果によると、こんな異常が発見された。大問題だ」というケース。
一見ロジカルです。確かに異常が見つかったのはよくありません。しかしデータと事実で把握する必要があります。
例えば1億件の中で数件の異常は許容範囲かもしれません。100件の中で数件の異常だったら問題かもしれません。でも1億件の中の数件を取りだして問題としているケースも、世の中には結構あります。(さらにそれを意図的にやっているケースもあったりします)
このように、「論理を組み立てて考える」ことって意外とできていません。
「ロジカル脳」が必要なのですね。
これがあれば、少々怪しい英語でも、仕事では通用します。
逆に「ロジカル脳」がなければ、流暢な英語だけではなかなか難しいでしょう。
論理を組み立てて考えられることはグローバルコミュニケーションで必須ですが、考えてみると、これはビジネスでも大切なことです。
普段グローバルコミュニケーションを行わない日本人同士で仕事を進める場合も、この力はとても役立つと思います。