「顧客中心主義」と「近視眼的顧客対応」を分けるポイント
「顧客のことを真剣に考えること」は、必ずしも「顧客の言いなりになること」ではありません。
しかし「お客様は神様」という意識が強い日本では、顧客対応が過剰品質になり、顧客に十分な価値を提供できず、過当競争に陥り、低収益にあえぐケースも見受けられます。
「朝のカフェで鍛える実戦的マーケティング力」では、3-1章で、主人公・宮前久美が勤務するA社が、顧客から値引きや個別要件対応を求められて苦戦する中、顧客のいいなりにならずしかも価格が高いライバルX社に、競合案件で負ける場面を描きました。
ご参考までに、ご興味ある方は本書を買わなくても、抜粋記事をここでご覧になれます。
顧客目線で徹底的に考え抜くX社を「顧客中心主義」、顧客が言ったことにすべて対応しようとするA社を「近視眼的顧客対応」と区別するのは簡単です。
しかし、実際にビジネスの現場にいると、自分が行っている対応はどちらなのか、認識するのがなかなか難しいのが現実なのではないでしょうか?
X社のように高い価値を提供している企業の実例として、2年半前に当ブログの記事『ソリューションのキモは「問題は解決を待っている!!」という視点』で書いた、前川製作所があります。
ある鶏肉加工場で作業員が手作業で鶏のモモ肉の骨をはずしていました。
鶏肉加工業者は、「この業界では昔から手で骨を取り出すことになっている。それ以外の方法があるのではと考えること自体がばかげている」と思っていました。
これを見た前川製作所の社員は、苦労の末、自動脱骨機を開発しました。
鶏肉加工業者に見せたところ、一目でその価値が理解されて、その便利さに飛びつきました。
「自動で脱骨する」というニーズはあったのに、顧客自身は気がついていないということですね。
もちろん、ご自身の課題をしっかり分析し、解決策を正確に把握している顧客もいます。このような場合は、顧客からいただく要望を解決することで、大きな価値を提供することができます。
しかし一方で、顧客が自身の課題を十分に把握していないケースもあります。多くの場合は、自分達が問題を感じていないので、あえてそこまで把握していないことも多いように思います。
このような場合、顧客自身が気がついていない課題を掘り起こせるかどうかが、「顧客中心主義」を実現できるか、「近視眼的顧客対応」に終始するかの分かれ目です。
そのためには、「課題掘り起し力」と「課題解決力」が必要になるのでしょう。
前者は、顧客を理解する力、後者は自分達が持っている製品やサービスに基づいたスキルがベースになると思います。