日立技術研修所にて、「ソフトウェア・アーキテクトへの道」セミナーの講師をしました。
12/15、日立の技術研修所にて、「ソフトウェア・アーキテクトへの道 –アーキテクト自らが語る、今日の自分を形成した学習と経験-」と題した研修の講師をさせていただきました。
今回は、日立情報制御ソリューションズ渡辺滋さんのとってもおもしろい企画です。講師陣は、ビースラッシュの山田大介さん、メタボリックスの山田正樹さん、東海大学の清水尚彦さん、グロースエクスパートナーズの鈴木雄介さん、そして私の5人で、5人が自身の経験とアーキテクトとは何か、を語るという趣向です。
ソフトウェア・アーキテクト、または、ITアーキテクトという職種、称号は、最近、よく話題にのぼります。あるプロジェクトが開発する製品、システムの全体像を把握して、そのソフトウェアの基本設計、方式設計をするプロジェクトの最高技術責任者といった意味で用いられることが多いようです。しかし、実際にアーキテクトの活躍を目の当たりにする機会も少ないこともあり、アーキテクトの実際の仕事の内容や能力について具体的なイメージを持つ技術者は多くないと思われます。 そこで、今回の研修では第一線で活躍されている著名なソフトウェア・アーキテクトの方々を講師にお招きし、
①アーキテクトの仕事の実態
②その仕事を遂行するために大切な能力、スキル、知識、経験
③アーキテクトとなるために重要であった過去の学習、経験
④これからアーキテクトを目指すソフトウェア設計者、プログラマへのアドバイス等について縦横に語って頂くことと致しました。講演を通して、アーキテクトの実像を明らかにし、さらにアーキテクトを目指す意欲ある技術者に、今後どのような学習や努力をすればよいか、というヒントを掴んで頂きたいと思います。
最後には、パネルディスカッションという形で、アーキテクト像を浮き彫りにするという企画でした。(ぼくが司会を務めさせていただきました。)ぼく自身もとてもびっくりしたのは、この5人はまったくといっていいほど、個性がばらばらで、話した内容も5者5様でした。パネルディスカッションの話題も多彩なものになりました。
パネルでは
- アーキテクトはコーディングまでやる?
- 開発に参加するメンバのスキルによってアーキテクチャは変わる?
- アーキテクチャはアーキテクト本人の趣味や価値観がかかわる?
- オフショア開発したら、日本からものづくりの知恵やスキルがなくなる?
などの質問が出て、場が沸きました。
ぼく個人は、アーキテクチャはソースコード、ドキュメント、そして「開発に参加した人の記憶」(Grady Boochの言葉によると部族記憶=tribal memory)にあると考えています。(参考記事:「アーキテクチャとは?Grady Boochによると。。。」)
伊勢神宮の式年遷宮を知っていますか?神社の引越しを20年に一度行うことで、頭の中にある宮大工スキルを世代を超えて伝達するんです。これと同じで、ソフトウェアの資産は、人の頭の中まで含めて考えないといけないと思っています。(参考記事:「ソフトウェアの資産」)
また、その場では話しませんでしたが、ソフトウェアの本質的な複雑さ、およびぼくが考えるアーキテクチャの定義(問題空間から解空間への1対多写像を設計とよび、その解空間に現れる大域構造)については、「VSUGアーキテクトアカデミーで講演しました」も参照してください。
そして、パネルの最後では、各自の「アーキテクトとは」を語ってもらってこの研修をしめました。
- 山田(大)さん 「ワクワクしてできる仕事」
- 清水さん 「自分の生きた価値を残すこと」
- 山田(正)さん 「世界を作ること」
- 鈴木さん 「ものをつくる楽しみを最大限いかせる場」
- 平鍋 「システムは人が人のためにつくるので、人をつなぐ仕事」
以下は、個人的なメモのマインドマップ(クリックで拡大)です。包括的なレポートではありません。でも、ぼくがキャッチした各講師のポイントがわかると思います。(ぼくの部分は、後で描きました)
それから、パネルディスカッションでは、下のマインドマップを描きました。マインドマップをプロジェクタで写しながら、リアルタイムに書き込んで議論を進めました。
この場を作っていただいた、渡辺さん、そして日立技術研修所の佐藤さん、どうもありがとうございました。
※マインドマップはもちろん、astah で描き、astah publish( http://p.astah.net )で公開しています。