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ある時はコンピュータの製品企画担当者、またある時は?

ケータイするリスク

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通勤電車の7人掛けシートに座っている人全員がケータイを操作している光景も今日では珍しくはないが、皆さん寸暇を惜しんでそれぞれに作業をしている、というのも何だか不思議である。ハンバーガー屋でケータイのクレジット決済機能を利用しよう、なんて広告に見られるように、クレジット・カードとしての機能も備えるケースもあるわけだから、場合によってはケータイは今や「貴重品」の部類に入ってくるのではないだろうか。人ごみの中で財布や貴重品をむき出しにするべきではないと言い聞かされて育ってきた僕としては、盗難のリスクをさらけ出しているようでもあり、何とも心もとなさを感じる。

様々な機能を集中化させれば利便性が向上するというのは、コンピュータの世界においても同じだと思うのだけど、リスクの集中でもあることにも注意を払わなければならないはずだ。だから万一に備えて大抵保険をかける、すなわちサーバーを単体のみで運用するのではなく、クラスター構成にして何かあった際にバックアップできる体制を心がけるよう僕らは訴える。そこまでの投資ができない場合でも、障害対策はシステム構築にあたって必ず考慮しなければならない事項だ。今まで人を轢いたことがないからといって、自動車の保険に入らないなんてありえない。万が一の際に自分が負う事になるかもしれない負債が莫大な大きさになるからこそ、保険に入って安心感を担保する。保険のかけ方は様々でも、同様の発想があってもよいはずだ。リスクを分散させるために、あえて機能を分散させたままでおくことを選択するケースもあるだろう。

ケータイの方はどうだろう。サインもなくリーダーに「かざす」だけで利用できてしまうクレジット・カードだとしたら、衆人環視の中でむき出しにするなんて、いかに日本の治安が優れていると言ったところで、リスクの高い行ないであるはずだ。電話機と、カメラと、インターネット・ブラウザと、メール用端末と、ミュージックプレイヤーと、ゲーム機と、TVと、定期券と、財布と、クレジット・カードの全てが一緒になったとしたら、それはそれは貴重な機器のはずだ。備えている機能についても、失われてしまってもちょっと残念だなと思う程度のものから、大きな経済的損失につながってしまうものまで幅がある。機能の統合化が図られる一方で、こういったリスクの一切をまとめて面倒を見てくれるサービスってまだ存在しないのではないだろうか。

携帯電話という手軽な存在は、利便性の追求も結構なのだが、あまり意識される事無くリスク対策が追いつかないままに、もしかしたら許容レベルを上回るほど多くの重責を背負わされているような気がするのである。だからというわけではないが、我が家のケータイは最新機能には見向きもせずに、電話とメールと、娘の防犯対策としてのGPSのみの機器に留まっている。

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