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ある時はコンピュータの製品企画担当者、またある時は?

製品説明の風景

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製品企画の担当者としては新しい製品を発表するとそれで一段落ではあるが、その後は各種イベントやセミナーで講師の役を務めるのも僕の役割である。さらには個別に要望があれば、ビジネスパートナーやお客様にも出かけて行く。だから新製品を世の中に浸透させるための活動は、発表日以降が本番である。ただ、こんな状況は二度と御免だと思う説明会もかつてあった。

通常と違っていたのは、マシンの売り込みにおいて、我々が競い勝ったはずの相手の会社も製品説明の場に同席していたことである。お客様では大掛かりなSIプロジェクトを起こそうとしており、アプリケーション構築はその他社に負けたのであるが、マシンの選定においては我々が提案していたSystem iが勝ったのである。その他社はSystem iを知らないので、求めに応じてお客様のところで製品説明会が催されたというわけだ。

表向きはともかくその会社にとっては、System iではSIの要件には技術的に耐えられないことをお客様の面前で暴露する千載一遇の好機である。数人並んでいた相手技術者からも、逆転狙いの意識はひしひしと感じられた。System iというマシンの設計思想は非常に独特であり、通常のマシンならば人手を要して当たり前の作業すらも、自動運用が可能になっている。技術者にとっては、自動化されているということは、機能が欠落していることのように映るのであろう。XXXXすることはできないのか、そんなことでシステムの運用はできるのか、というタイプの質問が最も多かった。

XXXXは不要である、すべてシステムが内部で自動的に行なっている」

「どうしてそんなことを自動的に行なうのか、確実に人手で行なうのに比べて効果的に劣るのではないか。」

「仮に人手の方が効果が高かったとしても、現実的には自動運用でも十分実用に耐えられる。」

「でもそんなことをやっているコンピュータは一つしかないではないか。世間の大多数が採用していない方式なので、どこかに問題があるはずだ。」

75万台の実績がシステムの効果を証明している。そしてコンピュータを維持運用することを考えると、最もコストがかかるのは人手であることは、種々の調査会社の結果を見ても明らかである。システム任せで満足のいく効果を追求する方が、結果的にはお客様にメリットがある。」

とまあ、こんな具合のやりとりが続いた。我々としても決定しているはずの案件なのに、逆転されるわけにはいかないのである。最後には先方から「そういう仕組みなら受け入れてもよいかもしれない。」という言葉が出るまでは、気を抜くことができなかった。先方にとっては失うものが何もないが、我々にとっては冷や汗ものであった。

先方にはトップクラスだったかもしれないが、技術者しか同席していなかった。こちらには、市場の動向やコンピュータのコスト分析について語れる人間がいたが、先方はそうではなかった。この違いが結果につながったのだろう。それにしても闘鶏のシャモになったような気分だった。

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