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ある時はコンピュータの製品企画担当者、またある時は?

POWERの風

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POWER6というプロセッサーを搭載したSystem iの新モデルが25日に発表された。System iって言っても要するにかつてAS/400と呼ばれていたマシンの後継機で、IBMはこのマシンに投資するのはもうやめたでしょ、と思いきや、いや実はしっかりと投資を続けていて、機能もこんなにすごくなりました、というわけだ。

25日の記者向け発表会見の場に、製品企画の担当者として控えとしてちんまりと座っていたのであるが、そこそこの人数の記者に来てもらえたし、業界内ではそこそこ注目はしてもらえているかなと思う。ただ、翌日の業界記事に「オフコン市場の中で孤軍奮闘」(だったかな?)といった見出しを見つけると、「お山の対象」とか「井の中の蛙」と言う言葉を連想してしまい、気分は少々複雑である。「今に見ていろ、世界を変えてやる」などと力んだところで、そうそう簡単には世間は動かないのもまた現実である。記者の質問の中に、System iの最大の課題は認知度向上ないしマーケティングであるという指摘があったのであるが、全くそのとおり。System iが優れた製品であるかどうかはさて置くとしても(製品担当者としてはそう信じて疑っていないのであるが)、一般的に優れた製品と評価の高い製品とは必ずしも同義ではない。

ところでこのPOWER6なのであるが、実はSystem pというマシンに搭載されるということで、先の5月23日に既に発表済みである。この時間差を差し引いてみても、同じテクノロジーを採用しているにも関わらず、5月と7月とでは発表の雰囲気が随分と異なっている。クロック・レートが4GHzを超えたとか、信頼性向上の新しい仕組みが備わったという点はまだしも、System iのコミュニティーに対するメッセージ発信においては浮動十進演算ユニットだとか、Altivecと呼ばれるベクトル演算ユニット搭載といった、個別のテクノロジーには力点を置いていない。一つ一つの技術よりも、要するに全体でどれだけ速くなったのか、どれだけ安定性が高まったのか、そしてそのためのコストがどれだけ下がるかが問題なのである。

確かにコンピュータは速くなってナンボ、安定してナンボのものなので正論ではあるが、これだけではテクノロジーのワクワク感がない。僕個人的にはテクノロジーの話が好きだし、System iに関わっている人の中にも同好の士はいるものだ。となると、そういう方々の知的好奇心を満たさなければならない。言うだけのことは言わなければとばかりに、僕が作った製品発表の説明資料は、アメリカで作られたものに比べれば異様に技術的である。せっかくの発表なんだから、ワクワクさせなきゃね。

発表に関するメディアの反応はまあまあだったかなと思う。あとは世間にトレンドを作り出せれば理想なのだけれども、こればかりはなかなか御しがたい。あちこちで宣伝してまわっていれば、そのうちに風向きが変わるに違いない。

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