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ある時はコンピュータの製品企画担当者、またある時は?

初めの言葉

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hello, world

ブログというのはつまるところ平気で恥を世間にさらすことに市民権を与える概念であるに違いない。ここで僕が作文をすると、学校の先生が赤ペンを入れてくれるわけでもないし、誰かが内容の正誤チェックをするわけでもなく、そのままインターネットを通じて毒だか薬だかが巻き散らかされるというわけだ。厚顔無恥でないとできるものではないと思い込んでいたので、まさか自分がその仲間入りをすることになろうとは思いもよらなかった。「いつもあちこちで話していることをそのまま書いてもらえばいいんですよ」とマーケティングのSさんがやさしく言っていたのをのらりくらりとかわしていたが、いつもよりも1オクターブ低い声で「年内には始めるんでしょうね」と迫られたので、つい背筋を伸ばして「すぐやります」と答えてしまった。

さて冒頭の言葉は、プログラミングのC言語とかそこから派生した言語を習得すればまず目に触れる、最初に作るプログラムがこの「hello, world」と出力するものだ。要するに、この世に誕生して第一声をあげるのがこれである。ITの世界の「オギャー」だろう。コンピュータ業界に身を置く僕のブログの冒頭の言葉にこそふさわしい。これの日本語訳として「こんにちは世界」というのがあるらしいが、あまりに直訳調で芸が感じられない。

コンピュータの歴史を紐解けば、C言語とはUnixというOSを開発するために使用されたとされる。従来のOSというと機械語ないしアセンブラ言語で記述されていたために、機種間の互換性がおそろしく悪かった。当時のDECという、後にコンパックに吸収されさらに今はHPに吸収された会社が持っていた、 PDP-11というミニコンピュータ向けにアセンブラで開発されたこのOSは、C言語で記述されることによって他のマシンへの移植性が飛躍的に高まった。すなわち機種をまたいだ互換性を持つことになった。そしてC言語学習のバイブルとでも言うべき言語解説書「The C Programming Language」は、その開発者であるBrian KernighanとDenis Ritchieとによって著された。これは俗に「K&R C」と呼ばれている。その最初のプログラムが「hello, world」というわけだ。その後は種々の言語解説書の中で、「hello, world」プログラムが登場するようになったようだ。

だからC言語はその成り立ちゆえに、ビットやバイト演算や文字列操作のような木目細かなAPIが豊富なのだと思う。逆にこのような言語で会社の業務アプリケーション、例えば会計とか販売管理だとかのプログラムを作るというのは、趣味で取り組むか、よほどの覚悟の元に取り組むか、何かの勘違いかのどれかだろう。かつては流行だからといって新人教育の必須科目であったが、結局はC言語を元に全く違った形で派生してきたJAVAやPHPなど別の言語習得において役立っている、というのが関の山ではないか。ただ趣味として取り組むのにはなかなか面白い。他人が10行で書いているプログラムを、たったの1行で済ませてしまう、などというトリックまがいのことも可能であるし、そういったノウハウを身に付けることもプログラミングの楽しみでもあった。極端な例かもしれないけれど、IOCCC(詳細は→http://ja.wikipedia.org/wiki/IOCCC)にその様子を垣間見ることができるかもしれない。

だがトリックや面白さの追求はビジネスの世界には無用のものだ。ITといえどもビジネスにおいては、これらとは別の追求するべき価値がある。このあたりの認識のずれを、たまに営業現場では経験することがあるようだ。

というわけで、このブログではコンピュータと社会との関わりを中心に、思いつくままに書き連ねてゆくつもりである。勘違いや脱線もあろうかと思うが、そのあたりはまあ長い目で見てやって欲しい。続きはまたいずれ。それまで皆様ご機嫌よう。

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