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恐怖の7分間作戦

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NASAの火星探査機「キュリオシティ」が無事に火星着陸を果たしたということで、おめでとうございます!総額25億ドルで重量900キロ、10種類の実験設備を搭載し、65センチまでの障害物を乗り越えられるとのことで、火星の生命(の痕跡)発見に期待がかかります。

で、このキュリオシティ着陸に際して、NASAがその難しさを「恐怖の7分間(7 minutes of terror)」と表現していたことをご存じの方も多いでしょう。キュリオシティは前述の通り非常に重いので、これまでのようなエアバッグを使って力技で着陸させる手段が使えなかったために、「スカイクレーン着陸システム」という特殊な方法を使っています(ナショナルジオグラフィックのサイトで詳しく解説されていますので、ご興味のある方はこちらをどうぞ)。その着陸プロセスの困難さを称して「恐怖の7分間」という言葉が使われていて、さらにはこんな動画まで

もちろん今回のミッションは独特のむずかしさがあり、本気で「恐怖」と呼びたかったという側面もあるのでしょう。しかしどんなミッションにも問題点はあったはずであり、わざわざ映画的なタイトルをつけるというのも大げさに感じます。しかし結果的には「キュリオシティ着陸イベント」の盛り上がりに一役買ったらしく、こんなツイートをされている方もいました:

確かに。これに加えるとすれば、UstreamによるNASA管制室のライブ中継も挙げられるでしょうか。ドラマ感の演出と、ライブ感の共有――いま行われている「史上初のソーシャルオリンピック」、ロンドン五輪に勝るとも劣らない演出の勝利といったところでしょうか。ご存知の通り、米国の宇宙開発関係者は予算削減という悩みに直面しており、世間の注目を集めるという意味でもこうした演出に知恵が絞られたのかもしれません。

ちょうど昨日の夜、フジテレビ系列でオリンピックの女子マラソンが中継されていました。しかし「メダルが期待できる!」と盛んに煽られたものの、ふたを開けてみれば木崎選手の16位が最高という結果に終わり、中継も頻繁にCMが入るなど「ライブ感」あるいは「一体感」を損なうような内容でした(当然ながらネット上でも非難が巻き起こる結果に)。ある意味でキュリオシティの反面教師とも言えるフジテレビの対応と、その真逆でネット上で巧みに盛り上げを演出したNASAの対応を見て、「恐怖の7分間」作戦に学ぶところは多いなぁと感じた次第です。

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ところで、個人的には最近NASAが、探査機に個別のTwitterアカウントを開設して一人称で更新するという対応を行っているのも好きだったりします。こちらはキュリオシティ君(ちゃん?)の火星からの第一声:

「火星からの写真第1弾いくよ!(これからもっとお送りするからね!)」的なツイート、非常に萌え属性が高いです(笑)

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