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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

ネットを席巻する「無料サービス」。合法なもの、違法なものひっくるめて、ネット上でさまざまなものが無料で手に入るようになりました。それでは無料なものが出回ってしまったら、そこからはもうお金を稼ぐことは不可能になってしまうのか――決してそんなことはないという状況が、「無料」に苦しむ代表例ともいえる音楽業界で生まれているそうです:

The Music Streams That Soothe an Industry (New York Times)

冒頭にこんな事例が紹介されています:

LIKE many teenagers, Josh Wilson, the 13-year-old son of the New York venture capitalist Fred Wilson, has on occasion visited the Internet’s peer-to-peer file-sharing services to download music and television shows.

But recently, as Mr. Wilson recounted last week on his popular blog, A VC, Josh has started streaming television shows from Netflix under the family’s $24-a-month subscription plan and listening to licensed, ad-supported music videos from YouTube on his iPhone. Asked by his father why he was not using file-sharing services like BitTorrent to download shows like “Friday Night Lights,” Josh replied, “BitTorrent takes too long.”

多くの10代の若者たちと同じように、13歳の Josh Wilson (ニューヨーク在住のベンチャーキャピタリスト、Fred Wilson の息子)はピアツーピアでファイル共有ができるネットサービスを度々訪れ、音楽やテレビ番組をダウンロードする。

しかし最近、Wilson 氏が彼の人気ブログ"A VC"で先週語ったように、Josh は Netflix が提供するストリーミングのテレビ番組を観るようになった。それは1ヶ月24ドルのプランで、彼の家族が加入しているものである。また Josh は、きちんとライセンスを取得し、広告が挿入された音楽ビデオを iPhone の YouTube 上で観るようにもなった。父親に「なぜ BitTorrent のようなファイル共有サービスを使って、"Friday Night Lights"のような番組をダウンロードしないんだ?」と聞かれた Josh は、こう答えた。「BitTorrent だと時間がかかるんだもの。」

と、A VC の Fred Wilson 氏のご子息であるジョッシュ君が、有料サービス/広告付きサービスを利用するようになったことが述べられています。そしてこの例は、決してジョッシュ君一人の話ではないようです:

Many music industry observers now believe that there is a fundamental shift under way: from illegal downloads to licensed streaming services like MySpace Music, imeem and Spotify, where users can play any song, anytime and — coming soon — on any device. These sites are free, supported by ads, and with an expanding catalog of songs, they are finally ready to overshadow the more cumbersome, unauthorized services that can be hard for newcomers to navigate.

多くの音楽業界ウォッチャーが、いま大きな変化が起きつつあると考えている。「違法ダウンロードから合法ストリーミングサービス(MySpace Music や imeem、Spotify など、ユーザーがいつでも、そして将来的にはどんな端末でも音楽を楽しめるサービス)へ」という変化である。そうしたサービスは無料で広告にサポートされており、また用意されている音楽の量も増えつつあるため、手間がかかる上に非合法で、新しいユーザーには使いづらいサービスに取って代わろうとしている。

とのこと。もちろんあくまでもファイル共有サービスを使い続けるという人々もいるのでしょうが、支払う対価と手にできるもの(使いやすさやセーブできる時間など)を秤にかけて、有料サービス/広告付きサービスに移るという人々も増えてきているようです。

そもそも違法音楽ファイルが氾濫するなかで iTune という有料モデルが成功した理由も、1曲99セントというプライシングに加え、「簡単に」「好きな音楽が」「合法的に」手に入るというメリットがあったことが指摘されています。人はどんな条件下でも無料な方を選択するとは限らない――考えてみれば当然の話ですが、この点をもう一度認識してビジネスを考え直してみる必要があるようです。

最近ご紹介した"FREE"という本の中で、著者のクリス・アンダーソン氏はこんなアドバイスを書いています:

Free makes other things more valuable.

Every abundance creates a new scarcity. A hundred years ago entertainment was scare and time plentiful; now it's the reverse. When one product or service becomes free, value migrates to the next higher layer. Go there.

無料は他のものの価値を上げる

何かが豊富にあると、新たな欠乏状態が生まれる。百年ほど前、エンターテイメントは貴重で時間はたっぷりあったが、現在ではまったく逆になった。あるモノやサービスが無料になると、価値は別のレイヤーへと移動していく。そこを狙え。

例えばジョッシュ君の場合、「聴きたい曲や観たいテレビ番組を手に入れるのにかかる時間がもったいない」と感じ、そこにお金を払う価値を感じたわけですね(当然ながら、お金を払うサービスには「検索が容易」「最新曲/最新番組がリリース直後からラインナップされている」などといった点がきちんと実現されていなければなりませんが)。何かが無料で手に入るようになったことで、逆に価値の上がったものは何か。そこに目を光らせておかなければならないと思います。

【○年前の今日の記事】

なぜガソリンの値段は上がるのか? (2008年8月6日)
オープン・キーワードの効果 (2007年8月6日)

アキヒト

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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