【書評】『100万人から教わったウェブサービスの極意~「モバツイ」開発1268日の知恵と視点』
モバイル版ツイッタークライアントといえば、「モバツイ」が頭に浮かぶという方も多いのではないでしょうか。公式モバイル版が提供されていない時代からいち早くサービスを開始し、日本におけるツイッターの流行にも大きく貢献したモバツイ。その開発者であるえふしんさんこと藤川真一さんが、『100万人から教わったウェブサービスの極意~「モバツイ」開発1268日の知恵と視点』という本を書かれました。発売前に一冊頂いてしまいましたので、いつものように感想とご紹介を書いてみたいと思います。
タイトルの通り、本書は藤川さんがモバツイの開発と運営から得た知見を綴った本となります。そこで語られる領域は非常に広く、ツイッターというウェブサービスの分析やソーシャルメディアへの思い、モバイルの世界に対する考え方、そしてもちろん起業とサービス運営に関するアドバイスなど様々。「一粒で二度美味しい」ではないですが、読み方によって様々な気づきを得ることができる一冊と言えるでしょう。
考えてみれば(というより本書を読んで気付いた僕の方が少数派かもしれませんが)、モバツイというサービスはソーシャルメディアに関係し、またツイッターというプラットフォームに機能を追加するサードパーティーの存在であり、さらにウェブサービスにモバイルの世界を持ち込むという、二重三重の意味で今の時代を象徴する存在です。その運営を手がけてきた藤川さんの言葉ですから、どの分析も非常に説得力のあるものでした。特にモバイルサービスでありながら、ツイッターというウェブサービスに関係しているという点が、藤川さんの視点をユニークなものにしていると言えるのではないでしょうか。
実際に藤川さんは、こんなことを語られています:
モバツイを作るときに一番意識したのが、PCインターネットとモバイルインターネットの融合です。モバツイをリリースした当時は、PCインターネットで主流だった、はてなブックマークが携帯電話対応していなかったため、モバツイで見かけたURLを、はてなブックマークに登録するなどの機能を実装してきました。まだ日本ではアイフォンが発売されていなかったこともあり、PCインターネットユーザーは、PCサイトとモバイルのいいとこ取りで、もっと便利になってほしいと思っていたからです。
スマートフォンの普及もあり、今後こうした「PCインターネットとモバイルインターネットの分断状況」は急速に変化するのではないか、と藤川さん自身も予測されています。それがどのような状況に向かうにせよ、両方の世界を見据えて行動してきたという経験が、藤川さんの強みの1つになっていることを強く感じました。
ただ逆に内容が盛り込みすぎで、個々のテーマに割かれている紙面が物足りないようにも感じています。外野から見てるだけで何ページも書いてしまうどっかのコンサルタントからすると、本書は3つぐらいに分けて売り出したいところ(笑)。藤川さんはまえがきで「まだ成長途中の自分が本書を手にとっていただいたみなさんに何を提供できるのだろうか。本書を書き終えた今でも、考え続けています」と書かれているのですが、例えば「起業物語という観点から藤川さんの経験・アドバイスをもっと聞きたい!」という方も多いでしょう。もちろんご自身のブログ「F’s Garage」でも様々な情報発信をされていますが、またいつか書籍という形で、藤川さんの書いた記事を読んでみたいと思います。
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