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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

いまやウェブサービスには欠かせない存在となった、協調フィルタリングとそれに基づくリコメンデーション/パーソナライゼーション。その功罪(どちらかと言うと罪の方)を考察した"The Filter Bubble: What the Internet Is Hiding from You"という本を読んでいるのですが、単に選択的に情報を消費するようになることの危険性だけでなく、より良い思考をするためにはどうすれば良いかといった点にまで踏み込んでおり、なかなか面白いです。

で、ちょうど読んでいる箇所にこんな興味深い心理実験の解説が。カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者らが行った実験なのですが、まず被験者にカフカの『田舎医者』を読んでもらいます(ストーリーが気になるという方はウィキペディアの解説をどうぞ)。その後で被験者にいくつかの数字を与え、その間にある規則性を見出すテストを行ってもらう、という流れ。ただし『田舎医者』には手が加えられていて、1つは原作の展開を守った上で「脅威」が強調されたもの、もう1つはハッピーエンドに改編したもの。被験者にはどちらか一方が与えられており、事前に読んだ物語の内容で「規則性を見出す」という能力に差が出るのか――という実験なわけですね。

その結果がこちら:

The group read the version adopted from Kafka did nearly twice as well – a dramatic increase in the ability to identify and acquire new patterns. "The key to our study is that our participants were surprised by the series of unexpected events, and they had no way to make sense of them," Proulx wrote. "Hence, they strived to make sense of something else."

カフカの原作に近いバージョンを読んだグループは、もう一方のグループよりも2倍の成績を残した。ハッピーエンドを読んだ場合よりも、関連性を見出す力が劇的に上昇したのである。研究者の Travis Proulx は次のように述べている。「私たちの研究で重要なのは、被験者は思いがけない出来事に驚かされ、状況を理解することができない状態に置かれているという点だ。従って彼らは、何か別のものを理解しようとするのである。」

何か予想もしなかったことが起きた。理解しがたい。どうにかしてこの不安な心境を解消したい――そうした心理状態が、何かに関連性を見出す感覚を敏感にさせるわけですね。

問題はその関連性が誤っていた場合。帰ってきたらふすまがボロボロになっていた、その横で猫が寝ている、という状態を見れば「猫がやったに違いない」と考えてしまうかもしれません。しかし実は留守中に甥っ子が遊びに来ていて、彼がやったまま帰ってしまったという場合もあるでしょう。あまりに関連性を見出すようになってしまうと、思わぬ濡れ衣を誰か(この場合はニャンコですが)に着せてしまうリスクが高くなってしまいます。

東日本大震災という、究極の「予想もしなかった出来事」が起きた後、様々な陰謀論が日本社会に蔓延しています。その背景には、上記のような心理状態も潜んでいるのではないでしょうか。もちろん神経を集中させ、普段なら見逃してしまうような情報をキャッチすることは、悪いことばかりとは限りません。しかし「とにかく何でも良いから関連性を見出して、心を落ち着かせたい」という心理状況になっていることを意識しておかないと、普通なら「まさか~!」で一蹴するような陰謀論に引っかかってしまう危険性があるのではないでしょうか。

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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