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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

現在も中東・北アフリカにおける動乱が続いていますが、エジプトではソーシャルメディアを通じて様々な情報発信が行われたことが記憶に新しいところです。その副産物とでも言うべきか、興味深い本が出版される予定とのこと:

‘Tweets From Tahrir’ Collects Egypt Posts in a Book (New York Times)

OR Book Going Rouge

OR Booksという出版社が発行する"Tweets From Tahrir"(タハリール広場からのツイート)というのがその本なのですが、タハリール広場というのは、エジプトの政変において抗議活動の拠点となった場所。そこから発せられたツイートということで、文字通り一連の出来事を語ったツイートを集めて本にしたもの。「著者」はNadia IdleとAlex Nunnsという2人の活動家で、彼らは今年1月から関連ツイートを集めており、その中から重要なものを選んで編纂。各章のはじめには、彼らが書いた概要が掲載されるという形式でまとめられているそうです。

言うなれば、最近ネットで注目を集めている「キュレーション」の手法を、書籍に応用したものと言えるでしょう。既にウェブ上では似たような試みが(特に今回のエジプト関連において)数多く行われていることを、このブログでも紹介してきました。その意味では革新的な試みというわけではないのですが、1つの問題点が指摘されています:

The announcement of the book, believed to be the first of its kind, raised at least one question in the digital publishing world: who owned the rights to publish the Twitter messages sent by others?

OR Books is in the process of contacting the dozens of people whose words appear in the book to ask their permission. Mr. Robinson said that OR Books did not contact Twitter, and did not believe that it was necessary to obtain the company’s permission. A spokesman for Twitter said that if all of the people quoted gave permission, the book would not violate Twitter’s terms of service.

この種の本は前例がないとされているが、本書の出版はデジタル出版界に1つの問題を提起した。「他人が投稿したツイートを出版する権利を、誰が有しているのか?」という点だ。

OR Booksは本書に収められている数多くのツイートの投稿者にコンタクトを取り、掲載の許可を求めている最中だ。Robinson氏(※Colin Robinson、OR Booksの関係者)によれば、彼らはTwitter社にはコンタクトを取っておらず、また同社の許可を取る必要は無いと考えているとのことである。Twitter社の広報担当者は、引用されたツイートの投稿者全員が許可を与えているならば、本書はTwitterの利用条項には反しないと述べている。

逆に言えば「全員から許可が取れない限り」、利用条項には反することになると。実は本書の出版は今年4月21日に予定されているのですが、ムバラク政権崩壊から2ヶ月以上経って出版されるというタイムラグの原因は、この確認作業にあるようです。

ということで"Tweets From Tahrir"についてはツイート投稿者に許可を求めて行くというスタンスのようですが、あえて議論を提起するとすれば、確認が取れない場合には出版を延期しなければならないのでしょうか?あるいはそもそも、投稿者に許可を求める必要があるのでしょうか?特に"Tweets From Tahrir"のように歴史的事件を記録に残すという意味では、例えばベルリンの壁の落書きが残されたように、ツイートを公共財として扱うというアプローチも考えられるのではないでしょうか?

例えば「ツイートをまとめる」というと、日本ではTogetterが思い出されます。これもツイートを編纂し、1つのコンテンツとして仕上げるものですが、まとめられるツイートの投稿者から許可を取る必要はありません。また掲載されている広告の売上がツイート投稿者に配分される、ということもありません。だからTogetterはダメと言いたいのではなく、このモデルが許されるとすれば、それを「出版」という形で行うことについても許可され得るのだという結論も考えられるはずです。

とはいえ、問題はそれほど簡単ではないでしょう。Togetterの場合には、ツイート投稿者からの訴えにより「まとめ」から当該ツイートを削除するという道が残されていますし、デジタル媒体であれば後から自由に内容を変更することができます。しかし当然ながら、出版物は一度世に出てしまえば変更はききません(デジタル媒体でもコピーを取られてしまえば同じことではあるのですが)。またいくらツイート全体が引用されたとしても、編集者の意図によっていくらでもコンテクスト(文脈)を変えてしまうことが可能であることは、これまたTogetterの例が証明しています。やはりある程度の制限が「キュレーションの出版」には課せられるべきだと思います。

しかしキュレーションがネット上で一般化すればするほど、"Tweets From Tahrir"のような出版物は増えてくるのではないでしょうか。日本でも近いうちに、このアプローチに対する議論が巻き起こるかもしれません。

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小林 啓倫

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小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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