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「ラーメンなう」はミシュランよりも魅力的?

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リアルタイムウェブ-「なう」の時代 』では、一見すると無意味なものに思える「~なう」という表現が、いかに技術的・社会的に革命的(!)なものなのかを分析してみました。さすがに脳科学の側面からは分析できなかったのですが、実は脳にとっても「なう」は魅力的なコンテンツであるようです:

The Science of Making Decisions (Newsweek)

「情報洪水」の時代、人々はどのような形で情報と接し、そこから決断を下しているのかを論じた記事。長文なのですが、非常に面白い内容ですのでご興味があれば目を通してみて下さい。

で、注目したいのは以下の箇所:

The brain is wired to notice change over stasis. An arriving email that pops to the top of your BlackBerry qualifies as a change; so does a new Facebook post. We are conditioned to give greater weight in our decision-making machinery to what is latest, not what is more important or more interesting. “There is a powerful ‘recency’ effect in decision making,” says behavioral economist George Loewenstein of Carnegie Mellon University. “We pay a lot of attention to the most recent information, discounting what came earlier.” Getting 30 texts per hour up to the moment when you make a decision means that most of them make all the impression of a feather on a brick wall, whereas Nos. 29 and 30 assume outsize importance, regardless of their validity. “We’re fooled by immediacy and quantity and think it’s quality,” says Eric Kessler, a management expert at Pace University’s Lubin School of Business. “What starts driving decisions is the urgent rather than the important.”

脳は「停滞」よりも「変化」の方に注意を向けるようにプログラムされている。ブラックベリーの画面最上部に表示される新着メールは「変化」と見なされる。Facebookの新着メッセージも同様だ。私たちは意志決定を行う際、重要なものや興味深いものよりも、新しいものをより重視するように条件付けられている。カーネギーメロン大学の行動経済学者、George Loewenstein氏は次のように語っている。「『新しさ』は意志決定において強い影響力を有しています。私たちは最新の情報に大きな注意を払い、以前に来た情報は軽視してしまうのです。」何かを決めようとしている時に、それまでに30のメッセージを受け取っていたとすると、その大部分はごく些細なもののように感じられてしまう。ところが29番目や30番目のメッセージは、それが妥当であろうとなかろうと、実態以上に重要なものであるかのように捉えてしまうのだ。Pace UniversityのLubin School of Businessで経営学を研究しているEric Kessler氏は、「私たちは即時性や量に惑わされてしまい、それを品質と勘違いしてしまいます。決断を促すのは、重要性ではなく緊急性なのです」と述べる。

とのこと。どうやら私たちの脳は、新しい情報に目がないようです。Twitterで言えば、「ラーメンなう」と言われると、今夜は和食にしようと思っていたのについつい中華に行ってしまうという感じでしょうか(笑)。報道機関が流す「速報」や「号外」などに飛びつき、それを嬉々として他人に伝えてしまうという行動も、どうやらこの辺に原因がありそうですね(かく言う自分も、「速報!」などと銘打たれているツイートをついボタン1つでリツイートしてしまったりするのですが……)。

よく考えれば、古典と呼ばれるような書物は長い時間をかけた精査をくぐり抜けてきたわけですから、それだけ普遍的な内容、役に立つアドバイスが収められているのだと考えられます。しかし新刊の本の方になぜか惹かれてしまう……というのも、この「新しいもの好き」という脳の性質が関わっていそうです。もちろんITの世界のように、最新情報でないと価値が半減してしまうという分野もありますが、そのような場合を除いて意図的に「古い情報」にも目をやる努力をしなければならないのかもしれません。

などということは『リアルタイムウェブ』を書いた人間が言ってはいけないのかもしれませんが(笑)、ともかく片時もスマートフォンを離さず、プッシュ配信されてくるTwitterやFacebookの新着通知メッセージを確認してしまうという方は、それが本当に大切な情報だから関心が向いているのか、それとも単に「新しさ」の魅力に脳が酔ってしまっているだけなのか、ちょっと冷静に考えてみた方が良いかもしれませんね。もちろん僕も含めて。

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