シロクマ日報:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) シロクマ日報

決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

今からもう6年前になりますが、『ブログ 世界を変える個人メディア』という一冊の本が出版されました。邦訳では「ブログ」と銘打たれていますが、原題は"We the Media: Grassroots Journalism By The People, For the People"(直訳すれば『私たちがメディアだ―人民による、人民のための草の根ジャーナリズム』といったところでしょうか)といって、ブログだけでなく当時萌芽を始めていたニューメディアについて、その可能性を探った本です。この本を読んで、ネットメディアに将来性を感じたという方も少なくないでしょう。

同書の著者はダン・ギルモア。新聞のコラムニストとして活躍した後、ジャーナリストとしてニューメディアに関する取材・研究を続けられています。その彼の最新作が"Mediactive"です。実はネット上で全編無料公開されていますので、すぐに読んでみたいという方は以下のリンクからどうぞ:

Mediactive (※ちなみにPDFファイル版も用意されています)

『メディアクティブ』という不思議なタイトルは、実は「メディア」と「アクティブ」を組み合わせた造語。文字通り「メディアに対してアクティブ」な状態、もしくは人々を指す言葉として使われているのですが、いったい「メディアクティブな人」とはどんな人々なのでしょうか?

メディアクティブの逆の状態、つまりメディアに対して受け身な状態であることの方は想像しやすいでしょう。メディアから流れてくる情報、つまり新聞やテレビのニュースなどを鵜呑みにしてしまい、何の疑いも持たないのがメディア・パッシブな状態であると言えます。この姿勢についてダン・ギルモアは、第2章の冒頭でこんなツイートを引用して批判しています:

What I like about April Fool's Day: one day a year we're asking whether news stories are true. It should be all 365.

エイプリルフールの好きなところ。1年の中で唯一、ニュースが本当かどうかを皆が疑う日であること。365日すべてがそんな日であれば良いのに。

また最近のリアルタイムウェブの流れに対しても、リアルタイムの情報にはノイズが入りやすいものであることを指摘し、スローフードならぬ「スローニュース」のアプローチ――速報を鵜呑みにするのではなく、批判的に検証する時間を持つ姿勢が重要であると訴えます。ある意味でネット時代のメディアリテラシーを考えるのが、本書の始めの部分と言えるでしょう。

それでは単に、メディアに対して批判的な姿勢で臨めば良いのでしょうか?いや、それだけでは不十分であり、自らも積極的にメディアに参加することで初めて「メディア・アクティブな状態」が達成されるのだというのが本書の主張。そしてニューメディアの時代には、誰でも積極的なメディアの参加者となることが可能であると説明し、そのために何をすれば良いのか、付随する問題や社会として取り組むべきテーマは何かを考察することに内容の2/3程度が割かれています。

確かに日本のネット上でも、新聞やテレビが起こした不祥事や偏向報道に対して「またマスゴミかw」と揶揄することが日常のように行われています。そのこと自体は問題ではありませんし、ある意味ではメディア・パッシブな状態を抜け出しているとも言えるでしょう。しかし批判して終わりでは何も残りませんし、逆にマスメディアの情報は疑うのにニューメディアの情報は鵜呑みにするという、本末転倒な姿勢すら見られます。そのような事態を回避し、自らより良いメディアのあり方を考えて実践すること。その格好の手引きをしてくれるのが本書であると思います。

既に自分でもブログやツイッターをフル活用しているという方にとっては、解説不要な内容も若干ありますが、改めて「自らがネット上で情報発信するとはどういうことなのか」を考えさせてくれる良い機会を与えてくれるでしょう。個人的には、一種の教科書的に、できる限り幅広い人々に読まれて欲しい一冊だと感じています。

Mediactive Mediactive
Dan Gillmor

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【○年前の今日の記事】

Twitter に専門家が増えてきている件 (2008年2月2日)

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小林啓倫

小林啓倫

株式会社日立コンサルティングの経営コンサルタント。WEBサービスの企画・運営、新規事業の立案などに携わる。個人でPOLAR BEAR BLOGも執筆中。

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