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「セカイユウシャ」を2日間プレイしてみて感じたこと #sekaiyuusya

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モバイルARブラウザ「セカイカメラ」上で動くRPG「セカイユウシャ」がリリースされて2日が経過しました。ITmediaでもこんな記事がアップされていますね:

“拡張現実RPG”を体験――iPhone向け「セカイカメラ v2.4.2」 (ITmedia +D モバイル)

個人的にも非常に興味のある取組みですので、仕事そっちのけで……じゃなくて仕事の合間を縫ってプレイしてみましたので、感じたことなどを少し。

sekaiyuusya

まず、全体的なシステムの不完全さについてはやはり目についてしまいます。操作に対するレスポンスの遅さ、明らかなバグ、そしてバッテリー消費の速さ(プレイ中ずっとカメラが起動したままで、かつモンスターのデータなど様々な通信が発生するため、非常に電力を消耗する)などなど。一般ユーザーに受け入れられるレベルになっているとは言い難いでしょう。ただこの点については、ARブラウザをベースにしたRPGというのが恐らく世界初に近い試みであり、最初からパーフェクトな仕上がりにしろという方が無理な話。個人的には、これから改善してゆけば良いのではないかと感じています。

しかし、ちょっと不満に感じた点が1つあります。それは(少なくとも現時点では)モバイルARブラウザをプラットフォームにしたメリットがあまり感じられないこと。むしろデメリットの方が表に出てしまっているのではないでしょうか。

携帯端末でプレイするゲームの魅力の1つは、「いつでも・どこでも遊べる」という点です。モバゲーやGREEなどのゲームをプレイしたことがある方なら、ちょっとした隙間時間に楽しめることを実感されているはず。残念ながら、それと同じ期待を「セカイユウシャ」に抱くことは難しいと言わざるを得ません。というのも、このゲームでは(他の多くのRPG同様)レベル上げを目的としたモンスターとの戦闘を行う必要があり、モンスターを見つけるためにはiPhoneをかざして周囲をぐるりと見渡す必要があるので、人通りの多いところでのプレイが難しくなってしまっているのです。特にバスや電車の中などはもっての他なのですが、普通の携帯ゲームであれば、そういった場所こそがプレイの場となるはずでしょう。

もちろん「いつでも・どこでも遊べる」という点だけが携帯ゲームの価値というわけではありません。むしろこの点で「セカイユウシャ」が優位に立つことは難しいのですから、むしろ「遊べる場所を限定してしまう」というアプローチがあっても良いのではないでしょうか。例えば「山手線のどこかに隠れている山賊を倒して、宝物を奪い返してくれ!」などといった依頼を受けて、iPhoneを片手にあちこち探し回るようなゲームであれば、ARが持つ「目には見えない別の世界が見える」という特性を活かすことができるでしょう。いっそのこと「レベル上げ」という要素を弱くして、ユーザー間の協力(「山賊みたいなキャラなら新宿駅で見かけたよ!」「君のミッションの協力してあげるから、その情報教えてくれない?」のようなやり取り)で成り立つゲームにしてしまっても良いかもしれません。この程度のアイデアではまだまだ不十分ですが、「ある時間、ある場所にいること」の体験を楽しさに変えるというアプローチであれば、ARブラウザ上でRPGを展開する意味が生まれてくるはずです。

また「カメラをかざす」という行為が違和感なく受け入れられる場所、例えば観光スポットにモンスターがいるという設定ならどうでしょうか。東京タワーを見るとモスラがいる、六本木ヒルズのママン(クモのオブジェ)を見るとクモ男がいるなどという形であれば、カメラをかざすという行為がさほど抵抗なく行えるはずです。ただしこの場合も出現するモンスターの数が極端に少なくなるので、「モンスターとの戦闘」というイベント以外のイベントをどう設計するかという問題を考えなければなりませんが。その意味で、ARを使ってRPGをつくるという試みは、既存の「戦ってレベルを上げるだけのRPG」とは別の価値を生み出してゆくことになるかもしれません。

門外漢がいろいろと口出ししてしまいましたが、そもそもこんな風にあれこれ考えを巡らせることができるのも、「セカイユウシャ」というゲームが第一歩を果敢に踏み出してくれたからこそ。また皮肉ではなく、リリースされてたった2日しか経っていないわけですし、これからセカイカメラならではの企画が登場してくれることでしょう(実際にリリース発表会の場では、今後現実世界に連動した設定やイベントが企画されていることが説明されていました)。まだまだ大変な道のりが待っていると思いますが、歴史に残るようなゲームに成長することを期待しています。

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さーて、レベル上げよっと!(結局遊んでるし……)

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