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滞在時間は短く?長く?

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娘に「買い物に行くけどついてくる?」と聞くと、必ず「行くー!」という答えが返ってきます。まだ3歳なので、お店がというより外出自体が楽しいのでしょうが、そんな姿を見ると「そういえば休日に両親と買い物に行くのって楽しかったよなぁ」と思い出します。そんなわけで、日曜日(8月12日)の日経新聞でこんな記事を目にしたとき、少し考えこんでしまいました:

短い買い物時間を憂慮 ― ミレニアムリテイリング社長 佐野和義氏

傘下のそごうや西武百貨店の売り場を回り「買い物客が店にいる時間が以前に比べて短くなった」と嘆く。かつては家族そろって休日を過ごす消費者が多くいたが、今では「目的の商品を買ってすぐに帰る人も少なくない」という。

(中略)

「短い時間でも欲しいものをそろえられるような売り場を作らなければならない」と百貨店復権に向けた施策に思いを巡らせていた。

「回転いす」という小コーナーからの一節。確かに子供の頃、休日にデパートに行くのはちょっとしたイベントでした。親の車に乗って、普段は目にすることのない品々が並ぶ夢のパラダイスへと訪問する……と言うと大げさですが、そんなワクワク感があったものです。なので「買い物客が店にいる時間が以前に比べて短くなった」という部分を読んだとき、当然「長く滞在してもらえるよう、再び魅力的な売り場を作る」という結論が出てくるのだと想像したのですが……これではまるっきり逆ですよね。

仮に滞在時間減少の原因が百貨店側にある(品揃えが悪くなった、流行を追っていない etc.)ならば、売り場作りの改善という方法でうまくいくでしょう。しかし様々な娯楽の登場やネット通販の発達により、百貨店という存在(そしてそこで遊ぶという発想)自体が古くなっているのだとすれば、佐野氏のように「短い時間しかいてくれないなら、短い時間で満足してもらうようにしよう」という発想を取らなければなりません。そこまで考えて、さてどちらが正解なんだろうと悩んでしまったのですが、結局数字だけ分からない -- 単に長ければ良い、短ければ良いというのではなく、実際のお客様がどのような行動を望んでいるかを把握しなければ結論は下せないと感じました。佐野氏は現場を見ているからこそ、「逆に短い滞在時間に対応する」という決断を下したのかもしれません。

ところで、ITmedia をご覧の方々はよくご存知だと思いますが、最近米 Nielsen//NetRatings がネット視聴率の測定方法を変更しました。これにより、滞在時間という視点がより重要になったわけですが、一方で滞在時間でもユーザーの動向を正確に把握できるわけではないという批判があるようです。正しいのはページビューか滞在時間か、はたまた全く別の指標かは分かりません。しかし重要なのは、上記の百貨店の事例のように、「実際のお客様がどのような行動を取っているか」を把握することではないでしょうか。それがなければ、結局は数字に躍らされるだけになってしまうのではないか……そんなことを、ふと「滞在時間」という言葉から連想してみた次第です。

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