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スマートグリッド時代への「架け橋」サービス

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スマートグリッドが本格的に導入されれば、EV(電気自動車)が様々な場所で充電できるようになり、その料金は個人と紐付いて簡単に決済できるようになる――スマートグリッドと共に語られる未来像として、こんなシーンが描かれるのを目にしたことがある方も多いでしょう。確かにそれはゴールであり理想像であるわけですが、いきなりこんな便利な世の中になるわけではありません。様々な機器やサービスが中途半端にしか導入されていない、「移行期」とも呼べる状態を必ず経なければならないでしょう。ということで、そんな移行期の状況に目を付けた、「架け橋」とでも言うべきビジネスが米国で登場しているそうです:

SemaConnect trying to fill a niche in the electric-car era (Washington Post)

米メリーランド州の州都アナポリスに住む、Mahi Reddyさんという方が始めたスタートアップ企業”SemaConnect”について。この会社が何をしているのか、まずは冒頭のクエスチョンからどうぞ(笑):

Sure, homeowners can run a cord from an outlet to the environmentally friendly vehicle, but what if you don't have a garage? What if you live in an apartment and the landlord is not willing to pay larger electricity bills, as residents start clamoring for parking spaces near the power outlet?

確かに自宅のコンセントからコードを引っ張ってきて、環境に優しいクルマを充電することができるだろう。しかし自宅にガレージがなかったら?集合住宅に住んでいて、住民の皆がコンセントの近くの駐車スペースに停めたがり、家主が電気料金の上昇にノーを突きつけるようになったら?

そう、この点はEVの普及を考える上でよく指摘されることですよね。そのため最近は、EVの充電のことを考えて設計されている戸建て住宅や、充電スペースつき駐車場を備えた集合住宅などといったものが登場しつつあるわけですが、当然ながら一朝一夕にそんな住宅ばが普及してくれるわけではありません。では、Reddyさんの考えた答えはというと:

That's where Reddy's new company, SemaConnect, comes in, with a meter designed to measure the amount of juice cars take to power up. Reddy's firm is hoping that landlords and office building owners will turn to the product as electric cars such as the Nissan Leaf or Chevy Volt come on the market and property owners try to figure out how people will pay for the extra power consumption.

そこでReddyが始めた新しい会社、SemaConnectの登場だ。同社のメーターは、クルマに充電した電気の量を計測することができる。日産リーフやシボレー・ボルトが市場に登場すれば、家主やオフィスビルのオーナー達はSemaConnectのメーターを使い、人々がどれだけ自動車用に電力を消費したか計測するようになるだろうと同社は期待している。

というわけで、誤解を恐れずに言えば「たいした話ではない」のですが、確かに言われてみればこのような機器は必要ですよね。個々の充電を計測できるメーターがあれば、例えばコンビニやガソリンスタンドのような場所で、EV用の有料充電サービスなんてものが簡単に始められるようになるはず(※もちろん法律面での問題を考えなければ、の話ですが)。そうすればEVの普及という点でもプラスの話でしょう。

ただしこのメーター、将来的に高性能なスマートメーターが各住宅やビルなどに設置されるようになったり、EV自体が何らかの形で1回ごとの充電量を把握できるようになれば、必要性が極端に低下してしまう存在です。その意味でまさに「つなぎ」や「架け橋」といったビジネスですが、だからといって軽視はできないでしょう。もちろん最終的な理想型を心に描き、そこに向けて機器やサービスを提供していくというのは大切なことです。しかし最終型までのタイムラグに目をつけ、そこでどのようなビジネスを展開するのか考えるというのも、同様に重要なことではないでしょうか。

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