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Twitter のリスト機能――プラスかマイナスか?

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Twitter がベータ公開中の新機能「リスト」。簡単に言ってしまえばユーザーのグルーピングができるという機能なのですが、昨日紹介記事を書いたところ、思いがけず大きな反響がありました。そこで改めて、この機能のプラス面とマイナス面を考えてみたいと思います。

まず最初に、昨日の記事については「影響力のあるユーザーになることだけが Twitter の目的ではない」というご批判をいただきました。これは正直言って、その通りだと思います。個人的にも Twitter の楽しみ方は人それぞれだと思いますし、何が何でもフォロワーを増やせ!と言うつもりはありません。そういった価値判断抜きで、自分の発言が伝わる経路が変わりつつあるという話だとご理解いただければと思います。

さて、改めてこの「リスト機能」のポイントをまとめておきましょう(※あくまでもベータテスト中の仕様ですので、正式公開時には変更される可能性もあります):

  • リスト(グループ)を作って、そこにユーザーをまとめることができる。
  • リストに入れるユーザーをフォローしている必要はない(フォローされている必要もない)。また自分を含めることも可能。
  • 他人のリストを閲覧したり、「フォロー」することも可能(非公開リストを除く。またリストのフォロワー数も確認できる)。フォローしたリストは、右サイドバーに表示される。
  • 自分が所属しているリストの数はステータス上に表示され、どんなリストに加えられているのかを確認することも可能。
  • また他人がどんなリストに加えられているのかを確認することも可能。

ざっとこんな感じ。細かい点はまだいろいろありますが、とりあえずこの仕様で正式公開されると想定して話を進めます。

さて、この機能のポイントは何といっても

他人とリストを共有できる

という点と、

自分を含む各ユーザーが所属しているリストが確認できる

という点でしょう。単なるユーザーのグルーピングだけであれば、既に実現している Twitter クライアントが存在していました。しかしそのグルーピングが他人と共有できる、しかも Twitter の公式機能として、という点が、リスト機能をユニークなものにしています。

例えば僕が、三鷹-吉祥寺エリアについて有益な情報を提供してくれるアカウントをまとめたリストを作成したとしましょう。そのリストが素晴らしい出来で、多くの人々にフォローされれば、後からやってくるユーザーは「ああ、三鷹-吉祥寺に興味があればこのリストをフォローすれば良いのだな」「僕は常にこの地域の情報をチェックしたいから、リストのフォローではなくリストに含まれているユーザーをフォローするようにしよう」などといった判断が可能になります(現状ではフォロワー数の多いリストを簡単に探す仕組みは提供されていないのですが、APIが公開されればそんなサービスはすぐに登場するでしょう)。このように特定のテーマのアカウントを探しやすくなりますし、またタイムライン上に流れるアカウントの数を増やさずに誰かをフォローするということも可能になるわけですね。

これは大きなプラス面であると同時に、ある意味で Twitter の世界を一変させてしまうものになるでしょう。何しろタイムラインとは別に、並列するタイムラインがいくつも作れるようなものです。しかもそのタイムラインは他人と共有できて、支持率までもが明らかになる――それは「自分のタイムラインを自分でつくる」という、従来の Twitter のイメージとは全く異なります。

そして「誰がどんなリストに含まれているのかが分かる」という点ですが、これは「タグ機能としての Twitter リスト機能」でも書いた通り、まさしく個々のユーザーに対するタグのような存在として機能する可能性があります。僕が「~社員リスト」「~住民リスト」「娘を持つ親リスト」などのようなリストに属していれば、最近の発言を見なくても、小林という男がだいたいどんな人間か分かってしまいますよね。

僕の場合、こうした情報は別に隠していませんから、リストに載せられても構いません。しかし何らかの理由で所属企業を公開していなかったり、住んでいる場所を隠しているユーザーがリストに加えられていたらどうでしょうか。あるいはもっと悪いパターンとして、「バカなことしか言わない奴リスト」のようなものが作成され、そこに自分の名前が載っていたら。個人的にはこうしたケースを想定して、「望まないリストから自分を削除する」的な機能を Twitter が実装してくる可能性が高いと思いますが、だとしてもおかしなリストに加えられていないかどうかを常にチェックしているわけにはいきません。この「タグ問題」、けっこう根が深いと思います。

ということで、新しいユーザーと知り合ったり、発言のチェックがしやすくなったりというプラス面がある一方で、実質的なタグ機能というマイナス(になりうる)面があるリスト機能。個人的にはプラス面が上回ることを信じて正式公開に踏み切って欲しいと思いますが、公開されれば様々な意味で「古き良き Twitter」が過去のものになるのではないかという懸念もあります。ただ、そういった感情はノスタルジーだと言われてしまえばそれまででしょう。公開されたらされたで、ますます増えてきている新しいユーザーたちを中心に、また別の最適解が見いだされていくような予感もしています。

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小林 啓倫

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