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「Twitter禁止パーティー」が流行る日

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ある日あなたのもとに、業界関係者が集まるイベントへの招待メールが届きました。ところがそこには、参加の条件としてこんな一文が添えられています:

"Just don't blog, post pictures to Facebook, or even think about Twittering."

「ブログに書いたり、写真を Facebook にアップしたりすることのないように。Twitter でつぶやこうなんてこと、考えてもいけませんよ。」

さて、あなたはこのイベントに喜んで出かけていきますか?Twitter に書けないなんてもってのほか、ふざけるな!とメールを削除してしまいますか?

こんな招待メールを出したイベントが、ニューヨークで実際に行われたそうです:

Party On, but No Tweets (New York Times)

イベントの名は"Protocols"というそうなのですが、解説を引用しておきましょう:

Protocols, held every two weeks since September in a small private penthouse in Murray Hill, is hosted by five Manhattan news media types who each invite two guests. The idea, according to a host, Michael Malice, an author and blogger, is to let invitees talk fearlessly in the present.

“We are fighting against this whole idea that everything people do has to be constantly chronicled,” Mr. Malice said. “People think that every thought they have, every experience — if it is not captured it is lost.”

Protocols という集まりが、昨年11月から2週間に1回のペースで開かれている。開催場所は Murray Hill の小さなプライベート・ペントハウス。主催しているのは5人のニュースメディア関係者で、彼らが2名ずつゲストを招待するという形式で行われる。この会のホストであり、作家でブロガーの Michael Malice によると、参加者に何の恐れもなくおしゃべりしてもらうというのが会の趣旨だそうである。

「私たちは『人間の行動は常に記録されなければならない』という思想に対抗している」と Malice は語る。「人々はこんな風に考えている――記録されないと、自分が経験したことや考えたことはどこかに失われてしまう、ってね。」

とのこと。後半の思想云々の部分はさておき、「ゲストに気兼ねなく喋ってもらうため」という理由を掲げているのが興味深いところです。現在でも記録禁止を明示しているイベントはありますが、それは会場に足を運ぶことの価値を高めるため(新聞社/出版社主催のセミナー等)や、他の参加者のプライバシーに配慮するため(ブロガーイベント等)といった理由が主流でしょう。しかし今後は、ちょうど政治家から本音を引き出すためにオフレコの約束をするように、一般人の集まり(上記の Protocols は決して一般人のためのものではありませんが)でもこのようなオフライン・リクエストを行うというケースが増えてくるかもしれません。

実際、こんなナイトクラブも登場しているとのこと:

Bouncers at the nightclub Tenjune forbid guests from taking photos of other groups, said Eugene Remm, an owner of the club in the meatpacking district. The club wants customers to dance and drink without fear. Club managers have contacted people who posted Facebook photos, demanding that they remove the pictures or risk permanent exile.

ニューヨークの Meatpacking District にある Tenjune というナイトクラブのオーナー、Eugene Remm によれば、彼の店ではお客が他のお客を撮影しないよう、用心棒たちが見張っているそうである。お客が安心して踊ったり、酒を飲んだりできるようにするための措置だ。Facebook に写真を掲載しているユーザーを見つけた場合、その写真を削除しないと店から永久追放する、と迫るそうである。

ケータイから Twitter してたら怖いお兄さんに囲まれていた……なんて状況は想像したくありませんが(笑)、何でもオンライン化が進む社会では、オフラインを維持してくれる空間に希少価値が高まっていくのかもしれません。そうなると、オフライン化が1つの有効な戦略として認識されていくようになるのではないでしょうか。

もちろんオンライン化を促進することで高まる価値はありますし、例えば以前書いたように、オンラインになりやすい環境を整えることでイベントの宣伝が進むというケースも考えられると思います。またオフライン化しても中身がスッカラカンでは、再びその場に足を運んでもらうというのは難しいでしょう。どこまでをオンラインにして、どこからオフラインにするか。また次々に現れるサービスの中からどれを許可し(あるいは積極的に活用し)、どれを排除していくのか。その辺のバランスをデザインしていくことが、これからリアルの空間でも活動する企業に対して要求されていくのかなと感じた次第です。

【○年前の今日の記事】

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