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メンドクサイー保存の法則

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毎日のように便利な道具が発明されているのに、私たちの暮らしがちっとも楽にならないのは、新しい道具が別の不便を生み出されているから――よく指摘される話ですが、それを実証するような記事が朝日新聞の土曜版に掲載されていました。幸いネットでも公開されていますので、以下にリンクを貼っておきましょう:

せっかく買ったのに使わない家電 (asahi.com)

アスパラクラブ(朝日新聞の無料会員サービス)のサイトを通じて行われた、「せっかく買ったのに、ほとんど使わずに眠っている家電」というアンケート結果について。調査対象が限定されており、また答えは自由回答ではなく選択式で行われたそうですから、必ずしも世間一般の考え方を反映しているとは言えませんが、「便利なはずのモノがなぜ使われなくなるのか?」という理由についていくつかヒントを与えてくれます。例えば、

【1位】ジューサー・ミキサー・フードプロセッサー(560票)
いずれもモーターや刃を回転させ、果物や野菜などを細かくする。自家製のジュース作りなどに活躍するが、「後片付けが面倒」という声が目立った

【2位】布団乾燥機(204票)
梅雨時期には重宝しそうだが、干すのが面倒な人はこの機械を使うのも面倒だったりするようだ

(中略)

【4位】電動歯ブラシ(155票)
さほど高価ではないが、「手入れが面倒」「手で磨くほうが手っ取り早い」と後悔する声が目立った

「簡単にジュースが作れると思って買ったけど、片付けが面倒になった」「簡単に布団が乾燥できると思って買ったけど、使うのが面倒になった」「簡単に歯が磨けると思って買ったけど、手入れが面倒になった」――どうも「メンドクサイ」という気持ちは、道具ややり方を変えても姿を変えて残ってしまうようです。これをエネルギー保存の法則にならって、メンドクサイー保存の法則と呼んでみましょう。

もちろん、面倒くさがりな人は何を使っても面倒に感じる(だからそんな人を気にしても仕方ない!)と言うこともできると思います。しかし便利な道具を作る人は、そもそも自分が相手にしようとしているのは「便利な道具を求めている人=面倒くさがりな人」なのだと認識してしかるべきでしょう。従ってメンドクサイー保存の法則が発生しやすく、十分に注意してデザインしなければ、新たなメンドクサイーが生まれて新製品/サービスの寿命を縮めかねません――ミキサーや布団乾燥機、電動歯ブラシのように。

「いやぁ、『便利になるかも!』と思わせれば勝ちなのさ」「新しく生まれた『不便』で別のビジネスができるじゃない(交換部品販売や修理サービス等)」と言うこともできるかもしれません。しかしそれでは市場を広げたり、買い替え需要を狙うことはできなくなってしまうはずです。何より「これで不便は解消される」と信じたユーザーを裏切る行為ではないでしょうか。ちょっと大げさですが。

僕自身、このメンドクサイーの法則によって使わなくなってしまったものを数多く抱えています。もう少し使い方が簡単だったら。もう少し片付けが簡単だったら。もう少しメンテナンスが簡単だったら。きっとアレやコレを使い続けることができたはず――いや、決して僕が面倒くさがり屋だということはないですよ。

【○年前の今日の記事】

Borders が Amazon とは別方向に進化している件 (2008年6月17日)
ケータイ・フォーマット (2007年6月17日)

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