ケータイ・フォーマット
今月の『ダ・ヴィンチ』(2007年7月号)に、「若者がケータイ小説にハマる理由」という特集が組まれていました。普通の「小説」というイメージからかけ離れた「ケータイ小説」がなぜ人気なのか、を考察したもの。その中にこんな一節がありました:
―「ケータイ小説」以外の小説、あるいは本を読んでる?
木村:あんま読まないですね。普通の小説ってケータイ小説と違って“縦書き”じゃないですか。あれってすっごくイヤ。読みにくい。
一同:そうそう。わかる~。
(中略)
中島:だってさあ……本、重いでしょ。それにお金がかかるし。
木村:そうそう!本って重いよ。ケータイだといつでも持ち歩いているから気楽だしね。寝ころんで読むのにちょうどいいし。私は小学校4年生のとき、ピッチ(PHS)を買ってもらったのが最初なんだけど、もう9年近く使ってるから、身体の一部みたいになってる。
中島:私も小4だったな。
10代の女の子たちによる座談会の様子。この後、他の参加者からも「小学生~中学生ぐらいからケータイ(もしくはPHS)を使い始めた」というコメントが続くのですが、「自分の身体の一部」から面白いコンテンツが溢れてくれば、そりゃハマるのも当然といった感じです。しかし本ですら「(縦書きなので)読みづらく、重い」存在なのですね。僕は本の方がいつでも取り出せるし、長時間読んでいても目が疲れなくて便利だと思うのですが……社会人1年目にPHSを手に入れたような男は、ケータイを身体の一部にはできないのかもしれません。
『ダ・ヴィンチ』の記事によれば、「ケータイ小説」は携帯電話という端末をベースにしているために、以下のような特徴を持つそうです:
- 横書きで表示される
- 単に横書きなだけでなく、段落の変り目やセリフの前後に余白が取られ、読みやすくなっている
- センテンスが短く、漢字が少ない(書くのも読むのもケータイだから)
「横書きで表示される」というのはシステム上の制約なので当然ですが、女の子たちの言葉によれば「縦書きで書かれていると文字が詰まりすぎてるように見えちゃう」のだそう。従って横書きであるという点が、他の2つの特徴と相乗効果をもたらして、とにかく読みやすいコンテンツになっているわけですね。このいわば「ケータイ・フォーマット」とも呼ぶべき特徴は、ケータイからウェブ上のコンテンツにアクセスする人々が増えている一因にもなっているのではないでしょうか。
もちろん、「そんな文章をはびこらせて良いのか」という議論はあると思います。しかし、子供の頃から「ケータイ・フォーマット」に慣れた人々が増えているのも事実。また新聞だって、あの縦書き+段組みという空間の中にコンテンツを押し込むために、書き方に特殊なルールがあると聞きます。できるだけ若者にもニュースを読んでもらうために、例えばケータイ・フォーマットで記事を加工して配信する、などの取り組みが始まっても良いのでは……と思います。