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ブログを活かせるかどうかは、社会全体にかかっている

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日経メディアラボさんが製作された、『進化するブログ――交差するマスメディアとソーシャルメディア』(非売品)をご献本いただきました。タイトルの通り、ブログの歴史から将来までを考える本なのですが、実は僕もインタビューを受けてコメントを載せていただいています。他にもいしたにまさきさん、村山らむねさん、藤代裕之さんに徳力基彦さんなど著名人の方々が登場しており、これを非売品にしてしまうのはちょっともったいないなぁという感じ。ブログ登場から現在までの歴史を扱った部分もよくまとめられていて、改めて「ブログとは何か」について考えさせられました。

同書の中でも触れられていたのが、日本のブログの「日記化」の問題。欧米ではジャーナリズムのツールとしてブログが活用され、政治やITなどの分野で強い影響力を持つブロガーが登場しているのに対し、日本ではまだそういった動きは例外的であることの背景について考察されています。もちろん欧米にだって日記的なブログはありますし、日本にもアルファブロガーと呼ばれるようなブロガーが存在していますが、Huffington Post や TechCrunch に相当する例を日本で見つけるのは難しいでしょう。

この原因として、同書は以下のような理由を紹介しています:

  • 日本にはブログ登場以前に「ウェブ日記」が存在しており、その文化が定着しているため
  • ブログ登場初期に大規模な「炎上」が発生したため、それに巻き込まれたブロガーや目にしたブロガーがマイルドなタッチで書くようになったため
  • モブログ(携帯端末、特に携帯電話を使って書くブログ)の登場が同時期であり、携帯で書くブログは論理構成を考えた長文を展開するのに不向きだったため
  • 日本では自己主張する文化があまり強くないため

どの理由にも「確かにそう言われれば」と頷けるところがあるでしょう。ただ、個人的にはこれといった決定打を感じません。ブログだって最初は日記的なツールだったものが次第に様々な用途に使われていったわけですし、海の向こうでも「炎上」はあったでしょう。携帯電話が長文入力に不向き、というのも最近の若い人々を見ているとクエスチョンマークが付きます。

そんな中で、本書の第4章に掲載されていた、藤代裕之さんのこんな言葉が目に留まりました:

私の場合は進化の形が違った、と捉えています。何らかの分野の専門家が多いアメリカでは情報発信のテクニックがもともとたくさんあって、表現を学ぶ機会も豊富。一方日本では国語的な作文の表現しか学ばない。その違いが影響したのだと思います。

最近『オルタナティブ・メディア―変革のための市民メディア入門』という本を読んだのですが、この中ではブログ(ネット)も含めた様々な「オルタナティブ・メディア」の手法が紹介され、それをどう実践していくかが解説されています。新聞の発行から個人ラジオ局の開設、ドキュメンタリー映画の作成まで、日本に住む一般人なら「そんなこと個人でやろうっていうの?」と感じてしまいそうな手法について、具体的な事例が次々と紹介されていました。もちろん海外だってそれほど積極的な人々は限られているのでしょうが、日本に比べて「情報発信のテクニックがもともとたくさんあって、表現を学ぶ機会も豊富」であることを実感した次第です。

良くも悪くも、ブログはツールであり、またネットはリアルの延長線上にあるものでしかありません。いきなりラジオ局につれてこられてもDJにはなれないように、ブログを渡されてもすぐに Huffington Post を書くことはできないでしょう。社会全体がオルタナティブ・メディアの存在を認め、認識し、サポートしていこうという方向に向かわないと、ブログも含めた情報発信のツールをジャーナリズム的に使っていくのは難しいのではないでしょうか。

その意味では、実は個人的にはブログの将来についてそれほど悲観的ではありません。明日もAMN主催でブロガー勉強会(ITmedia でお馴染みの岡田有花さんも登壇されます!)が開かれるのですが、こういったブロガーをサポートしようという動きが徐々に出て来ているように感じますし、また思いも寄らなかったテーマを扱うブログも出て来ています。今年6月でオルタナティブ・ブログが4周年を迎えたそうですが、このオルタナブログだってまさに「オルタナティブ」なメディアを追求していこうという動きでしょう。『進化するブログ』によれば、日経新聞に初めて「ブログ」という言葉が登場したのは2003年のことだそうです。それからまだたったの6年……日本でブログが、ブロガーが真価を発揮するのはこれからではないでしょうか。

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