Google が Twitter を買収すべきもう1つの理由
Google が Twitter を買収する、というウワサは現時点では噂レベルに留まっているようですが、Twitter が検索エンジンとしても注目されるようになっており、Google としては早めに味方につけておきたい存在でしょう。特に Twitter はブログよりもリアルタイム性が強く、ニュースやトレンドを察知するのに格好の場ですから、Google (検索エンジン)では見つけられないものを手に出来る場所として認知されるようになるかもしれません。そうなれば「まずはググってみよう」が「Twitter 見て、質問を投げてみて、それからググろう」になってしまい、Google にとっては見過ごすことのできない状況になるはずです。
ただ、問題はそれだけではないことが最近指摘されています。ポイントは「短縮URL」。ご存知のように Twitter は140文字しか書き込むことができず、どこかにリンクを貼る場合、TinyURL などのURL短縮サービスを使って文字スペースを省略することになります。Twitter はデフォルトで TinyURL と連携(長いURLは自動的に短縮)していますが、それ以外にも様々な短縮サービスが存在・利用されており、ソーシャルニュースサービスを手がけてきた Digg もこの分野への参入を始めました:
■ DiggBar登場。そのURLを短縮せよ (TechCrunch Japan)
このツールバーは、新Twitter世代向けに作られたもので、メッセージ中に許されるわずかなスペースに収まるための非常に短かいURLが切望されていた。Diggはこの分野で人気を博すことになるだろう。URLを作るのが簡単(何の前にでもdigg.comを付ければよい)なだけでなく、ツールバー・ラッパーでは、ビュー回数、コメント数、関連記事などの統計情報を見ることもできる。
言うなれば、Twitter がURL短縮をメジャーなサービスへと変貌させつつあるわけで、Digg のようにそれに便乗して(名目上は「各種統計情報といった付加価値をつける」ですが)目標のコンテンツをフレームで表示するところも登場しているわけですね。DiggBar は極端な例としても、恐らく短縮URLを通過するトラフィックは、今後ますます増大していくことでしょう。
するとどうなるか。鋭い方はもう感づいているかもしれませんが、DiggBar を例にして、再度 TechCrunch の記事を引用してみましょう:
■ 短縮URLは必要悪か、単なる悪か。 (TechCrunch Japan)
しかも、本来実に単純であるべきメッセージに、余分な手順が一つ増える。Diggの新しいDiggbarのように、リダイレクトする代りにフレーム内にサイトを包み込むことによって、リンクの旨みを吸い取るところもある。これは、ウェブのリンク構造全体を台無しにするものだ。私が、あなたの記事をDiggの短縮URLを使ってリンクすると、手柄はDiggの物で、あなたではない。殆どのURL短縮サービスはこれをやっていないが、Diggがこの新機能で成功すれば、後に続くかもしれない。これがウェブで許されるやり方になれば、リンクの重複や本来のリンクが正しくランクされるかなど、検索エンジンにとってさまざまな面倒が起きる。
Google 等の検索エンジンがリンクをランキングの重要な要素と見なしている以上、最終的に読者が読み、評価しているのがお目当てのコンテンツだったとしても、検索エンジンにはその状況が理解できません。最悪の場合、DiggBar のようにコンテンツへの評価をURL短縮サービスがかっさらう、ということも起きるでしょう。もちろん Google のアルゴリズムが今すぐに総崩れになりそうだという段階ではありませんが、以前よりも少しずつ精度が下がっていくという恐れは存在しています。そうなれば、特に Twitter 上で話題になっているネタに関しては、冒頭のリアルタイム性とはまた違った理由で「Twitter 界のことは Twitter に聞け」という認識が定着していってしまうかもしれません。
それを防ぐもっとも簡単な解決策は、Google が Twitter を買収して、Google にとって都合の良い形にリンク貼付のあり方を変えてしまうことです。TechCrunch が主張するように「メッセージ内の単語にハイパーリンクを付けられるようにする」「メッセージとは別にリンクのための場所を用意する」といった方法が考えられるでしょう(個人的にはモバイル端末からメッセージ投稿することを考えて、操作が複雑になるハイパーリンク形式よりもリンク入力欄設置方式の方が好ましいと思いますが)。しかし短縮URLという意外な伏兵が、マイクロブログという意外な伏兵の力を得て Google の脅威になるのであれば、また思いもよらないところから現在の検索アルゴリズムに挑戦する存在が現れないとも限りません。「コンテンツ流通の強力な中間業者」である Google の力は、見かけよりも脆弱なのかもしれないと感じさせられる問題ではないでしょうか。
【○年前の今日の記事】
■ たこつぼ化は悪なのか (2008年4月14日)
■ 情報中毒の処方箋 (2006年4月14日)