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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

情報中毒の処方箋

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情報・知識共有に関するエントリが続いていますが、今日も同じ内容で少し。

僕も「RSSにフィードを登録し過ぎて困っている」というタイプの一人なのですが、欠かさずチェックしているブログというのがいくつかあります。その1つが、Nicholas Carr氏(『ITにお金を使うのは、もうおやめなさい』の著者)のブログ"Rough Type"なのですが、最近こんなエントリがありました:

* A beautiful mindlessness (Rough Type)

情報洪水についての考察なのですが、面白い指摘をしています:

Like me, you've probably sensed the same thing, in yourself and in others - the way the constant collection of information becomes an easy substitute for trying to achieve any kind of true understanding.
(私と同様、皆さんも自分自身と他人が同じことをしていると感じるのではないだろうか--何か結論を出すことを回避するために、常に情報を集め続けることを安易な逃げ道にしているということを。)

この指摘の前に、Institute of Public Policy ResearchのWill Davies氏が述べた"People are becoming addicted to getting more information all the time.(人々はより多くの情報を常に集めることに執着するようになってきている)"というコメントが紹介されているのですが、まさに「情報中毒による機能不全」という病気が蔓延しつつあるのかもしれません。WEBベースでの情報集約を促進する「Web 2.0」の技術が企業内に入り込めば、情報中毒はより深刻化する恐れがあると言えるでしょう。

情報中毒は恐ろしい病気ですが、幸いなことに良い処方箋があります。それは情報が足りないと感じても「結論を出す」ようにすること。情報中毒が問題なのは、それが「結論」や「行動」といった情報収集の本来の目的が阻害され、収集自体が目的化してしまうことです。であれば、たとえ「これだけの情報では正解を導き出せない」と感じても、その時点でのベストアンサーを考えておけば、「情報を集めているうちに何もしないで終わってしまった」という事態は防ぐことができます。

コンサルタントをしていると、常に仮説を立てることを求められます。最近、ボストンコンサルティンググループの内田和成さんが『仮説思考』というまさに仮説の重要性を解説した本を出版されましたが、その中でも「情報収集の前に、まず結論(=仮説)を出すことから始めよう」と論じられています。「いきなり結論を出すなんて不可能だ」と思われるかもしれません。また「情報を恣意的に集め、解釈することにつながる」という批判もあるでしょう。しかし結論というゴールのイメージ無しに情報を集めるだけでは、非常に非効率であり「情報洪水」を招く危険性も高くなります。また仮説を常に再検討・修正することを心がけていれば、恣意的に情報を使う危険性は回避できるはずです。

自分の仮説・結論を常に考え、心に留めておくこと。それがWeb 2.0という新しい技術・サービスを流行に踊らされて使うのではなく、本当に使いこなすために必要なことではないかと思います。

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