日本の携帯電話市場は「異常」なの?
今日は総務省で行われた「モバイルビジネス活性化プラン評価会議」の第3回会合を傍聴してきました。ちなみに ITmedia でも過去の会合がレポートされていますので、ご覧下さい:
■ モバイルビジネス活性化プラン評価会議 第1回:“活性化プラン”でモバイル業界は変わったのか──総務省が評価会議を開催
■ モバイルビジネス活性化プラン評価会議 第2回:その先に業界の明るい未来は待っているのか──総務省の評価会議
恐らく今回もレポート記事が公開されると思いますので、僕はちょっと気になったことを。
海外に出て行く気のない企業(日本の通信キャリア)が端末メーカーを主導する、というのが間違っている。だから国内メーカーは海外で売れる端末が作れず、海外に出る気もないのだ。iPhone はメーカー主導で端末を作ったケースだが、アップルという海外のメーカーだったのは残念だ。
――というような発言を、座長の齊藤忠夫氏がされていました。以前『グーグルvsアップル ケータイ世界大戦 ~AndroidとiPhoneはどこまで常識を破壊するのか 』という本を読んだのですが(書評はこちら)、そちらをお読みになった方には、「座長は『メーカーによる垂直統合モデル』を評価されているようだった」と言えば分かりやすいかもしれません。そして、こんな発言も:
日本の(携帯電話)市場は「異常」だ。
個人的には、この発言に違和感を覚えます。確かに日本の携帯電話市場は「ガラパゴス」と揶揄されるほどユニークなものであり、売れている端末・提供されているサービス等は海外市場とは差があります。しかし「ユニークだから異常」とは言えないでしょう。海外と違うことを「悪い」、もしくは逆に「良い」と評価するには、何らかの視座というものが必要です。
仮に上記のような状況を、「日本の携帯電話メーカーの売上拡大」という視点から見たとしたら、確かに「異常」と言えるかもしれません。日本でも海外でも売れる最大公約数的な端末を作り、薄利多売で稼ぐ。そんなモデルを採用したいのに、キャリアが課した制約のために作りたい端末が作れない――実際にそんな行動を取りたいと考えるメーカーがいるかどうかは別にして、そんなロジックであれば理解できます。しかし「最先端の機能を満載した端末を、消費者が安価で手に入れられるようにする」という視点であったらどうでしょうか。販売奨励金等の仕掛けにより、消費者が端末を1年前後で変更する、というのは望ましい状況と捉えることが可能になるはずです(同じく、それが目指すべきゴールかどうかは別にして)。
会合の最後で、イプシ・マーケティング研究所の野原佐和子氏が
携帯電話は単に通信と端末だけの問題ではない。総務省内の会だから仕方ないが、もっと広い視野からの議論を
というような意見を述べられ、残念ながら一部の出席者から反論されてしまっていました。しかしいま必要なのは、まさしく広い視野・複数の視野から「日本の市場が異常であるなら、何が正常な状態・目指すべき状態なのか」を議論することではないでしょうか。極端な話、「環境問題に配慮し、消費者が10年に1回というサイクルで機種変更を行うようになることが望ましい」という方向性だってあるでしょう。どんな方向性になるにせよ、「現状=異常」というのが議論の出発点になってしまっては、適切な議論は望めないのではないか、と感じた次第です。