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決して最先端ではない、けれど日常生活で人びとの役に立っているIT技術を探していきます。

「ジャパネットたかたの本当のすごさ」はもうちょっと別のところにあるような気が。

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ブックマークを集めていたので読んでみました。お馴染み「ジャパネットたかた」が(というより高田明社長のトークが)成功している秘密について考察した記事です:

ジャパネットたかたの本当のすごさ (NBonline)

高田社長は、商品の性能を細かく説明するより、その商品を購入することで、一家にどんな幸せが訪れるかをイメージさせることに心を砕くのが常だ。

 「家族だんらんかあ。懐かしいなあ。ばあさん、わしの年金の積み立てで買ってもいいかなあ」

 あのハイトーン、ハイスピード、長崎なまりもすごいけど、高田社長が本当に優れているのは「幸せのイメージを伝える力」なのだ。

確かに「これがあったらどんな良いことが起こるか」をイメージさせるのは大切なことです。よく言われることですが、技術系の人はスペックや機能というものに注意を奪われがち。「このマシンはメモリが~で、CPUは~を搭載してて……」と言われても、一般人にしてみれば「で、それって何が凄いの?」というところですよね。

しかし「機能よりも価値、体験をアピールする」というのは初歩的なルールで、高田社長だけが心がけていることではないでしょう。もちろん「心がける」と「実践できる」は別の話で、それが実現できている高田社長はすごいと思いますが(できればご本人からその秘密について聞いてみたいところ)、トークのすごさにはもう少し奥があるように思います。

例えば NBonline の記事では「幸せのイメージを伝える力」と表現されていますが、その「幸せのイメージ」は視聴者にピンポイントで響くように計算され、カスタマイズされているのではないでしょうか。

「大型液晶テレビ。画面が大きいんです。画面が大きいと、家族みんなで見られるんです。皆さん! これまで小さなテレビを別々の部屋で見ていませんでしたか? この大画面液晶テレビ! 大きいですから居間に置きますね。くっきりはっきり大型、大画面液晶(高田社長はあえて同じ言葉を何度も繰り返すのが特徴)。家族みんなで見たいですね。お父さんも、お母さんも、お子さんたちも、おじいちゃんも、おばあちゃんも。どうです。家族が一つになって、1つの液晶大画面を見る。昔みたいな家族だんらんが戻ってくるんです」

このトーク、明らかに万人向けではありません。ステレオタイプだ!と非難されてしまうかもしれませんが、個人的にはいわゆる団塊世代を念頭に置いての話になっているように感じます。若い人に向かって「家族のすばらしさ」なんて某合衆国大統領のことを言ったら、逆に反発されてしまう可能性もあるでしょう。要は「自分が語りかけているのが誰で、彼らに最も響くポイントは何か」を理解しながら話すこと。しかもテレビを通してなので、目の前には「語るべき相手」が見えないのにそれができてしまうという点が、高田社長のもう1つのすごさのように思います。

たとえ観客が目の前にいても、なかなか相手に合わせて話をするということはできません。もちろんジャパネットたかたはテレビ番組ですから、入念なリサーチに基づいて「幸せのイメージのカスタマイズ」を行っているのでしょうが、見習うべき点は大きいと思います。こんどテレビで高田社長を見たら、プレゼン術に注意しながら見てみよっと……その結果、思わず何か買ってしまうかもしれませんが。

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