創造性は、厳しい環境から
オルタナティブ・ブロガーの鶴田さんが「厳しい競合環境でこそ、ビジネスのブレークスルーは創造される」というエントリを書かれていました。文字通り厳しい競争環境にさらされることで、新しい事業戦略が創造されるという内容でしたが、ちょうど同じようなことを感じさせる文章に出会ったので記しておきたいと思います。
最近"Founders at Work"という本を読んでいます(yomoyomo さんによれば、日本での版権は河出書房新社が取得されているとのこと)。既に取り上げているブログも多いので、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、IT系ベンチャー企業の起業者たちへのインタビューを集めた本です。いわゆる起業ノウハウ本ではありませんが、実体験から生まれた言葉には説得力があり、ヘタなビジネス書よりも学ぶところが多いと感じています。
その中に Flickr の創業者、Caterina Fake さんに対するインタビューがあるのですが、彼女はこんなことを述べています:
The money was scare, but I'm a big believer that constraints inspire creativity. The less money you have, the fewer people and resources you have, the more creative you have to become. I think that had a lot to do with why we were able to iterate and innovate so fast.
お金はなかったけれど、制約が創造性を生むのだと信じていました。お金や人、資産が少なければ少ないほど、創造的になる必要があります。それが、私たちが繰り返して、素早くイノベーションを生み出せた理由でしょうね。
実は Flickr は最初、オンラインゲームの1機能として生まれました(この辺の経緯については、Wikipedia に詳しいです)。しかも写真共有サービスは既に他社によって手がけられており、後発でも参入したのは単に「世間知らずで楽観的」だったからとのこと。そんな中でも Flickr が独立したサービスとして成功した理由として、時流に乗ったこと(ブログやソーシャルネットワークサービスの普及、カメラ付き携帯電話の一般化などにより、写真共有サービスが受け入れられる下地ができていた)の他に挙げられているのが、上記の「制約が創造性を生む」という言葉です。
小さなスタートアップ企業が、巨大な既存企業を出し抜くという事例が多々あります。「既存企業は過去の成功体験に縛られているからだ」「小さな企業の方が小回りが利くからだ」など、様々な説明ができると思いますが、意外とこの「何もないと工夫する」という単純なルールも重要なのではないでしょうか。「○○がないから、あの企業を超えるサービスなんて作れない」という思考回路に陥った時点で、既に自ら成功への路を閉ざしてしまっているのかもしれませんね。