聖地をつくる
ニュースを読んでいると、胸に刺さるキーワードに出会うことがあります。今朝もこんな言葉がありました:
他社の施設との違いを出すには“聖地”にするしかない。
日経流通新聞の記事「着眼着想」から(2007年2月24日、第3面)。ナムコがラゾーナ川崎プラザにオープンしたアミューズメント施設「ワンダーパーク ヒーローズベース」に関する内容なのですが、企画を担当した出店開発グループ企画セクションの海田裕夫さんは、このように考えて構想を練ったそうです。
「聖地」をつくるため、お客自身がヒーローになる仕掛けを用意。例えばガンダムに搭乗したような疑似体験ができるゲーム機を16台(現時点で日本一の台数!)設置し、大勢の対戦者と見物人の前でプレイできるようにしたり、ウルトラマンの遊戯施設ではスポンジ製ボールのバズーカ砲で怪獣と戦えるようにしたとのこと。その結果、広域からの集客に成功し、開業から3ヶ月あまりで来場者が100万人を突破したそうです。
実際に「聖地をつくろう」がナムコ社内でキーワードとして使われていたかどうかは分かりませんが、この言葉、非常に力があるのではないでしょうか。仮に「お客様に喜ばれる施設」「国内最大級の施設」などという言葉を掲げていたとしたら、他社施設と差別化することは難しかったでしょう。聖地であるためには、登場するキャラクターに最大の敬意が払われ、「信者」の人々に敬われるような施設でなければなりません。そのためには単に「規模で競う」「目新しさで競う」、という発想ではなく、「お客様がそこでどんな経験をするか」「テーマとなる存在とより深い交流ができるか」といった点が重視されるようになるでしょう。例えば「たい焼き屋」と「たい焼きの聖地」では、前者は単にたい焼きが買えるだけの店、後者は最高級のたい焼きが味わえて、たい焼きの全てが分かる店というようなイメージになると思います。
自分の手がけているサービスが、来訪者にとって「聖地」と呼べるような存在となっているかどうか。聖地でないならば、何が欠けているのか。ちょっとハードルが高いようにも感じてしまいますが、それを考えてみることによって、新しい発想が生まれてくるのではないでしょうか。