「参加型開発」の副作用
今月初めのニュースなのですが、ミニストップでユニークな商品開発が行われたという記事がありました。流行の言い方を使えば、「おにぎり2.0」といったところでしょうか:
■ ミニストップ、店員教育を兼ねて新おにぎり開発 (日経ビジネス オンライン)
11月14日といえば今日ですが、ミニストップが新しいおにぎりを発売するとのこと。その開発方法というのがユニークで、全国の加盟店からアイデアを募集し、その中から3品を選んで商品化したそうです。加盟店のアイデアは「具材の選択はもちろんのこと、価格設定に至るまで最大限に尊重することにこだわった」そうで、加盟店が「プロの値付けに劣らない感覚を持っていることがよく分かった」のだとか。
商品開発に専門の担当者だけでなく、社内外の様々な人々を巻き込むという手法は、最近いろいろな分野で試されていますよね。記憶に新しいところでは、ヤフーがユーザーの投票をもとにラーメンを開発をした、という例もありました。商品開発に必要な知識は一部の人々に限られているのではなく、様々なところに散らばっている人々の知識を上手に集約する(それこそ Web 2.0 的な仕組みを通じて)ことができれば、十分に魅力的な商品を開発できることが証明されつつあるのでしょう。
さらにこの「加盟店参加型開発」では、意外な効果が生まれたのだとか:
興味深いのは、7月25日からのアイデア募集をきっかけに、ミニストップ全店のおにぎりの売り上げが上向いたことだ。7月末以降、おにぎりの販売は前年比で10%上昇している。
少なくとも、全店の約20%に相当する208店が新しいおにぎりのアイデアを検討するためにおにぎりへの関心をいつも以上に高めてくれた。その結果、「既存のおにぎりの発注精度が確実に上がった。加盟店がおにぎりへの関心を高めてくれた証拠と考えている」
つまり「自分たちも開発に参加できる」という意識が呼び水となり、自分たちの扱う商品により強い関心が向いたということですね。さらに記事でも指摘されていますが、発売後には「これは加盟店の力で完成したおにぎりだ」という意識から、販売に力が入るという効果も予想されます。単純に本部の人間が集まって開発、でも新商品は完成したはずですが、それでは得られなかった副作用を生むことができたわけです。
一方、ヤフーのラーメン開発はそれ自身が1つの巨大な広告のようなものでした。開発中は「開発活動」(専用サイトでの解説・投票受付)自体が消費者を惹きつけ、開発後は新聞・テレビで盛んに取り上げられています。「参加型開発」には、当事者意識の醸成だけでなく、PR効果という副作用もあると言えるでしょう。
今までにない商品を誕生させることができる上に、売上げアップにつながる様々な副作用も考えられる「参加型開発」。実際はそれほど簡単にはいかないと思いますが、Web 2.0 系技術やコミュニティ・マーケティング技術の発展など、多くの人々を巻き込みながら1つの目標に向かうことは以前より容易になりました。今後は第2・第3の「おにぎり 2.0」が生まれてくるのではないでしょうか。