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「スタンドプレー」の価値

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今日の午後、とあるセミナーに出席してきたのですが、そこで面白い話を聞きました。国際配送サービスの FedEx が、顧客満足度を高めるためにこんな仕掛けをしたそうです:

調査の結果、顧客の中に"nervous shippers"(不安な出荷人)と言うべきタイプが存在していることを確認。彼らは「本当に着くのだろうか」という不安を常に感じており、梱包や書類記入などすべてを完璧に仕上げるにも関わらず、出荷した後(FedEx の係員が荷物を受け取った後)も不安をぬぐいきれないでいた。

FedEx の窓口ではそれまで、荷物を受け取ったらカウンターの後ろにおいてそのまま(後で担当者が荷物をより分け、しかるべき処理をする)にしていたが、それでは nervous shippers をより不安にさせるだけだと判断。そこで窓口の後ろにパーティションを置き、そこに「北米向け」「アジア向け」と書かれた投函口を用意した。荷物を受け取る際は、係員が宛先を丁寧に確認、「○○向けでございますね」と声に出しつつしかるべき投函口に入れる -- という工夫を行った。

しかしパーティションの裏側はというと、何の仕切りや箱もなし。つまり元のように選別されていない荷物が置かれている状態で、窓口の作業以外には何の変更も行わなかった。それでも nervous shippers は荷物の宛先が窓口で確認されたことに満足し、満足度は大きく向上した・・・

ちょっと長い説明になってしましましたが、要は「集配の流れは何も変えずに、ちゃんとやっているように見えるようにした」ということ(もともと荷物はキチンと届くような仕組みが構築されているわけです)。悪い表現をすれば、スタンドプレーを行ったというところでしょうか。しかしそのスタンドプレーが、重要な価値を生んだわけです。

最近読んだ記事で、ある消費者が「ダイソンの掃除機は、ちゃんとゴミが取れているのが見えて気持ちいい(ゴミがパックに入るタイプは捨てやすいけれど、ゴミが取れているという実感がない)」と語っていました。これもゴミが溜まるところを透明にしておく必要は無いわけで、一種のスタンドプレーと言えるでしょう。しかしここでも、そのプレーによって顧客満足が生まれています。

この2つの例は、「ちゃんと仕事しているように見せること」の重要性を示していると思います。もちろん最終的に、顧客が求める価値が本当に提供されていなければならない(FedEx ならキチンと荷物が届くことで、ダイソンならキチンとゴミが取れていること)わけですが。その前提さえあれば、「スタンドプレー」を積極的に追求することを考えてみても良いのではないでしょうか。

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